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なないろめがね

「肉声」   ~前編~

ま、嘆いてばかりでも仕方ないわけですし、
わざわざこんなところで自分の部下育成能力の低さを露呈することもないので、
この手の話はそろそろ終わりにしたいのですが・・・。

おそらくこの業界自体、と言うか、ものづくりの仕事自体、
中途半端な連中の現実逃れの行きつく先みたいになってきてるんかなぁ・・・、
そう危惧するくらい、どこもかしこも馬鹿ばっかりですわ。
「人を喜ばせるのが好き」「自分で何かを作り出す仕事がしたい」
簡単に言ってきますけど、本気で言ってる子なんて一握り。
そういうもっともらしいセリフを言えるくらいの教養はあるわけですが、
如何せん胸に響かない。
一般社会不適合者(ある意味、僕もそうですが・・・)に、
「じゃ、飲食でも行ってみるか」って思われるような業界なんかなぁ・・・って思うくらい、
普通の子がいません。普通の子すら、いません。
何も望んでないんですよ。望めないのはわかってますから。
でもその低く設定してあるハードルすら、もたもた引っかかってるわけでして・・・。
そのくせ一般社会を引き合いにして要求だけはしてくる。
その要求に応えたいと思わせる人材じゃないことも棚に上げて、要求だけは一ちょ前。
要求が飲まれなければ辞めていくのがオチですが、
将来勝負しなきゃいけなくなったときに張り合わなきゃいけない相手は、
そこを頑張りぬき力をつけた職人だということがわかってるんですかね?
その時に後悔したって遅いんです。取り返しがつきません。
前にも書きましたが、笑いたい時があるなら泣かなきゃいけない時があるんです。
泣かなきゃいけない時に笑ってるやつは、笑いたい時に泣く羽目になるんです。
独立して笑いたければ泣ける時に泣いておかないと、
独立した時に泣いてては家族もろとも路頭に迷ってしまいます。
お金を稼ぎ出すのは、自分自身。
もらえる会社を探すよりも稼げる自分を作ることが先決です。
じゃなきゃ、初めから職人なんて志さないことです。
必死にやってる子らの迷惑になりますから。

そういう子らが抜けて、新しい出会いが生まれ、より良い強い店になっていく。
振り返るともちろんそうなんですが、そこに至るまでに僕らが捧げる時間や労力、
精神的肉体的疲労の代償は、あまりにも大きいものなんです。
さらにその代償が、報われることより裏切られることのほうが圧倒的に多い事実。
心身共に削り取られながら、人間不信に陥りながら、
お店は今日も開けなくてはいけません。
出来たての店や個人店を簡単に批判する方もおられますが、
お金がなくては、わかっていてもやれないことばかり。
雇いたくても「人材」のいない現実。
寝る間もなければ考える暇もない毎日。
明日がどうなるのか、はたして収益が出てるのかさえ、しばらくはわからないもの。
本当に店を思って言ってくれる方は、直接言って下さりますけどね。
叱咤激励もあれば労いや勿体無い感謝の言葉をいただいたり。
でもね、一億総評論家かなんだか知りませんが、
面と向かってよう喋らんくせに匿名で能書き垂れおる輩が多すぎるんですよ。
浅い知識とチープな物差し、無責任な憶測で、堂々と書き殴る度胸の良さ。
他人の領域にはズカズカ入り込むくせに、
自分の守るべきところは決して露出しない強かさ。
自ら意見を述べることは出来ないが、述べられた意見に対する批評ならお任せあれ。
日本人の民族性と片付けてしまうには、あまりに暴力的かつ身勝手な自己満足。
店を作っていく作業とは、何から手をつけていいのかもわからないところから始まる、
やったものにしかわからない途方もなく長い道程なんです。
いざお店を持つことなっても、
給料も良くない、ボーナスなんてもってのほかの業界で、
少しずつ少しずつ貯めてきたお金と、這いずり回って集めた借金を、
最低限の設備からしか掛けれないのが、ほとんどの個人店の実状じゃないでしょうか。
やれる範囲内から始めて、やれる範囲内で精一杯喜んでもらおうと頑張る毎日を、
こうした内外の心無い「人」によって潰されていく様を見るのは、
今の世の中、そんなに珍しいことじゃないんですよね・・・・。
ま、そういう人たちにとっては、そんなこと知ったこっちゃないんでしょうけど。

さ、話は変わって、
御存知の通り、この業界に学歴なんてほとんど関係ありません。大手さんは別としてね。
高学歴の子がいると「なんでこんなことしてんの?」って言われる業界です。
ま、仕方ないですけどね。
基本、そんなに勉強の出来る人はいないでしょうし、
なによりそこに価値観を抱いてない人ばかりの集まりです。僕もそうですね。
でもね、学歴がないから入る・・・ではないと思うんです。
学歴がないから、選択肢が狭いから、じゃあ手に職でも付けようか、
ってことではないと思うんですよね。
学歴だって、頑張った証しです。何もしなくて賢い子なんて数パーセント。
つまり、頭の良し悪しのものさし以外にも、
一つちゃんと頑張ったものがある証しでもあると思うんです。
もちろんそれが全てではないと思うので、
一時の「学歴社会」的な空気には同調し兼ねます。
知識に依存した屁理屈しか言えない「優等生」も沢山見てきましたし、
「高学歴」と「高学力」とは一致しないことも目の当たりにしてきました。
だから、採用に学歴は一切関係ありません。
学歴が必要ないとは言いませんが、この仕事、他に必要なものがあるんでね。
でもね、あれもないわ、これもないわって子が多すぎるんですよ。
しかも「人として」的なこととかね。
常識とか思いやり、優しさ、気づかい。礼儀作法なんて高望みですわ。
親や先生方は、何しとるんや! そう思う子らの、なんと多いことか・・・。
仕事できなくても一緒に働けますが、
「人として」欠落してる(ある部分、僕もそうですが)子らと働くのは、
本当に心が壊れそうになります。
あとは逆に「頑張ってきた」って勘違いしてる子らとかね。
「え・・・・?それしきで?」って。一瞬で粉々にしますけどね(笑)
そんな空虚な自信、何にもならないですから。
何もならないうえに、今後の成長の妨げにもなってしまいます。
小手先の知識や技術、自分を守るための薄っぺらい自信より、
生きていくための強さのほうが、先に身につけなきゃいけないんじゃないでしょうか。
ね、親御さんや学校、及び専門学校の先生方。違いますか?

学歴ってね、そもそも僕は社会への「挑戦権」を得ることやと思うんです。
その挑戦権を使う使わないは個人の自由ですが、
より広く挑戦権を得よう、選択肢を増やそう、
そう思うなら、やはり高学歴は必須なわけです。
実際、僕みたいな大学を途中で辞めた高卒扱いの人間には、
挑戦することすら許されない世界があります。
もちろんそれらはスタートラインの話で、以後、覆す可能性がないとは言えません。
そこが人生の面白いとこですけどね。
僕らの業界ですが、なんやったら誰でも入れます。
僕もそうでしたし。続くかどうかは別としてね。
大きく何が違うかってね、
いわゆる「一流」と呼ばれる企業や、「一流」の意識を携えた方々は、
大きくて広い「社会」の中で、仕事を通じてその一流に触れ、
揉まれ、学び、身につけていくわけです。
もちろん僕らだって、自分たちの信じた店に入り、修行を重ねるわけですが、
如何せん学ぶや触れることの範囲が狭い。だから視野も狭い。
そして圧倒的に違うのが、その間に出会う人の数です。
人は人と出会うことで他人の人生で得たものを学ばせていただき、
一人の人間が一度の人生で得る経験を補って成長すると、僕は考えてます。
中には一人で「自分探し」みたいな戯言ぬかしてるヤツもいますが(僕もそうでした)、
もちろん一人で自分自身と対峙しなきゃいけない時はあります。
でも自分で知る自分には限界があります。
他人からの指摘によって、自分の意外な一面を知ったり、欠点を学んだり。
人との出会いによって新たな自分の可能性を引き出してもらったり。
やはり「出会い」は人生においてとても重要な要素やと思うんです。
そう考えると僕らは、同じ敷地の中で、同じメンツと共に毎日を過ごしてます。
あ、お客さんの数は別としてね。
おまけに、教わるのは大体目先の技術的なこと。
今、店にとって必要なことばかり。その人物の人間形成なんて二の次です。
相当、外に向かって意識的にアンテナ張ってないと、
ホントに外部から遮断された世界になってしまいます。
だから小国の王様みたいなヤツばっかり生まれるんですよ。
技術を得て、そこそこ名が知れただけで勘違いし始め、
口のきき方も忘れて、偉そうな態度で下のもん使って、
その程度の人間にしか纏わりつけない取り巻きに煽てられ、
どんどん増長していくわけです。
業界の垣根を越えれば圧倒的に上には上がいるのに、
よく恥ずかしげもなく増長出来るなぁと思いますよね。
見てるこっちが恥ずかしくなります。

世の中には世界を相手にしてビジネスされてる方もたくさんいるわけです。
何百くらいの社員を抱える経営者さんでしたら、珍しくもないでしょう。
僕らの業界では極めて珍しいことになりますけどね。
もちろん、これらを例に挙げて、
地元のお客様に対して一生懸命従就することを否定するわけでも、
家族経営の個人店がどうのと言うわけでは一切ありません。
うちだってそこの部類に入るわけですし、喜びも感じてます。
僕が言いたいのは、そういう人らが世の中にはざらにいるんだってこと。
ようするに、まだまだ「たかがパン屋」だということを自覚すべきだってことです。
ま、パン屋に限らずですけどね。
そこを自覚しなければ、おそらく次はないと思います。
もちろん「されど・・・」ですよ。そりゃ、もちろんです。
基本的には、職種は社会の役割分担やと思ってます。
そこに優劣は存在しません。
存在する優劣があるならば、自分の仕事を誇りを持ってやれてるのか否か。
異業種に塗れても、胸を張って自分の仕事を誇れるのか否か。それだけだと思います。
そうなるとやはり個人の心の問題。職種自体には優劣は関係ないと思っています。
ただ、この業界、「されど」ばかりをひけらかす方々のおかげで、
一向に社会的地位も上がってないのは周知の事実。
いつまでたっても「我が、我が」です。反吐が出ますわ。
そんなんじゃ、スタッフに夢を見させてあげることも出来ないでしょう。
僕らオーナーの可能性が、イコール店の可能性に繋がっていくわけです。
すなわち、スタッフの可能性にも繋がっていくわけです。
僕らの見てる世界が、そのままスタッフの見てる世界へと繋がっていくんです。
責任重大です。止まってるわけにはいきません。
僕は、もちろん本当にまだまだひよっ子ですし、至らないとこだらけです。
でも、ひよっ子だからこそ、こんなんじゃ駄目だって思うんです。
世の大海に投げ出されたとき、初めて人として評価されるんだと思うんです。
勘違いしてふんぞり返ってる王様が、
世の大海に放り出されたとき、泳ぎ切れると思いますか?
それどころか、助け船を出してくれる人もいなくなるでしょう。
そんな人に付く取り巻きは、溺れかけのシェフを捨てて、
新しい生きのいいシェフに付くでしょうしね。
そんなときにやっと、どれほど自分が人として恥ずかしい振る舞いをしていたのか、
身をもって思い知ることでしょう。
狭い業界故の、狭い人付き合いの中だけで黙認されてたことだったってことも。
本物は「本物」なんですよ。どこを切っても「本物」なんですよ。
現状に満足してふんぞり返ってる「本物」はいませんよ。
確かに「すごい」方はおられます。でも「すごい」のと「えらい」のとは訳が違うんです。
凄くたって、別に偉いわけじゃないんです。
そこんとこ履き違えた方の、なんと多い業界なことか・・・・。
そんな人らとつるんでても意味がないんです。
何度も言いますが、馴れ合いなんてまっぴらです。
媚び諂う様相すら、「人間関係」だと開き直りますか?
同業、異業種、関係なく、
これから何人、自分の視界の遥か上のレベルで生きている方々を、
自分の目の前に引き摺り下ろしてこれるのか・・・。
そこにしか自分を高める手段はないですし、
そこに自分を高めてくれる可能性があると思うんです。
もっともっともっと頑張らなくてはいけませんね。

            ~後編~へ続く・・・。
by monsieur-enfant | 2009-07-09 16:54 | とりとめなく・・