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なないろめがね

6年目の、見えないアクション。

この日、駆けつけた朝8時。
「もう始めていいですか?」の声に、
「お願いします」と答える。

バリバリバリ!!と、新しいスタートを告げる音が小さな店の壁に響く。
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今回の厨房移設や拡張には、シュクレ、モンテベロ共に店舗の拡張は行いません。
つまり、売り上げに直結する投資では全く無いわけです。
それでも何故踏み切ったかというと、
前にも書きましたが昨年と環境を変えた上で、スタッフの新たな成長を促したかったのと、
「パン屋だから仕方が無い」「菓子屋だからこんなもん」
そんな世間一般の風潮に自ら甘んじまくってるパンを始めとする飲食業界、
それらの「ま、いいか」的な潜在意識を、
何とか自分らの世代から変えていかなきゃいけないという意味合いも含まれています。
と言っても大袈裟に何が出来るとか言うわけではないですよ。
単純に、作り手が高いモチベーションを保て、心身共にコンディションを維持し、
より高いクオリティへと挑みやすい環境を整備しているだけなんです。
「そんなの当たり前やん」って思うでしょ?
それがね、資金も人材も乏しい個人店でやるのは、
なかなか難しいわけなんですよ。
今回も、モンテベロはやり切りましたが、シュクレは「次」に向けての1ステップ程度。
6年やってて、この程度までしか改善できません。
ホント、難しいわけなんです・・・。

高いクオリティを表現するには。高い技術、高い意識、そして豊富な経験が必要です。
でも、それらを手にするには、それはそれは厳しい時間を過ごさなきゃいけないわけです。
「今」を抱えたままでは何も得ることはできないわけで。
今も守りたい、手離したり失うリスクは背負いたくない、
それでいて成長や変化は欲するなんてのは虫の良い話。
得ようとするものを抱えれる分だけのスペースを、
こじ開けるか捨て去るかして作る痛みや苦しみを伴わなければ、
何かを本気で手にすることなんて出来っこないんですよ。
そしてその見返りとして上記のことを僕らは手にしてきたわけなんですが、
今はそれだけではダメなんです。
パンでも料理でもお菓子でも、それだけで良かった時代は当の昔に過ぎ去ってるんです。
結局のところ美味しいものが溢れてる時代の中、美味しいだけじゃ届かないんですよ。
心の奥の方を、ちょっとでもくすぐらないと、それは単なる「もの」でしかないんです。
心に触れるには「もの」では触れれません。
心に触れれるもの、それは「心」しかないんです。
ものに宿った心が受け取った人の心に触れた時、初めて通じあえる気がするんです。
ただ、それは「想って」作るだけでは届きません。
チープで自己満足な「想い」なんてものは、
窯の中で水分と一緒に蒸発してしまうでしょう。
込めなきゃダメです。
想いは、込めなきゃ届きません。
込めるのに技術より必要なもの、それは単純に「溢れんばかりの想い」です。
その「想い」を「心」と転換して考えた場合、
そこが本当の意味で豊かな作り手は、そうはいないと感じます。

あ、話が飛びまくりましたが、
結局今回の移設増設で生み出したかったもの、それは「時間」です。
前々から言い続けてきてますが、
心を動かしてない人が、他人の心なんて動かせれるわけないんです。
じゃあ自分の心を動かそうと思った時に何がいるのかとなった時、
やはり最低限の時間は必要なんです。
日々の仕事に追われ、朝から晩まで働き、家には寝る為だけに帰り、
クタクタで迎えた休みの日は、起きたらもう夕方で・・・。
僕らが繰り返してきた日常で得た技術や経験とは、
それで「もの作り」が出来ると勘違いしてるバカも少なくありませんが、
所詮それらは「手段」を会得し「表現」する権利を得たまでの話。
今までの多くの作り手がその「手段」に走り、
単なる「もの」を生みだし続けてることに気がつかなかったのは、
先に述べたような労働環境によるところが大きいと思います。
僕らに大切なのは表現手段よりも表現の根源。
何を想い、何を訴え、何を届けたいのか。
手段を得るために身も心も削り取られ、
根っこが枯れ果ててしまうなんてことは本末転倒なわけです。

ただね、本気で自分の職業に振り向いてもらおうと思ったら、
2、3年は全てを投げ打ってでも捧げる時間も必要なんじゃないかな・・・とも思います。
良い物を作ろうと思えば、やはり時間も労力もかかるわけで、
そのクオリティや生産性を維持したまま、時間を短縮しようと試みてるわけで。
矛盾する二つの線を、どこでどうやって帳尻合わせるのか・・・、
理想とする厨房や組織を作るのに、あと何年かかるのやら・・・。

あ、これは新しい機材の搬入の画像ですね。
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ミキサーをクレーンで吊り上げてます。
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上から見てるのは、チーム・モンテベロ。

ま、こうして面積を増やしたり設備を整えたりしたって、
それらを有効に使える人材がいない限りは、
所詮全く無意味な投資になってしまうんですけどね。
実際、新しい厨房が出来て数日経つんですが、
シュクレも大概ですが、モンテベロなんてまだほとんど機能してません。
ん千万の厨房、ほぼ放置状態です(笑)
でもね、そういう人材がいないから何もしないでは、
人材不足を嘆いてる間、自分の成長も止まってしまうことになります。
ある程度、周りと連動する部分はあれど、
スタッフはスタッフ、僕は僕です。
自分が描いた未来に、自分が追いつかないなんて、
笑い話にもなりません。

10年の歳月を見据えてスタートして、まだ6年目、もう6年目。
過ぎた時間より残された時間のほうが短くなってしまった今、
もう既に「次」を見据えた準備は、始まっているのですから。
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by monsieur-enfant | 2010-11-30 04:34 | シュクレクール