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なないろめがね

緊迫感

ソウル滞在時、一件のオファーがありました。
「あぁ、もうそんな時期かぁ・・・」
実は昨年も同じ時期にオファーを受けたイベントでした。
惜しまれながら閉店した「季節料理 津むら」。
その津村氏の料理を、「ブレ ド ブレ」大垣シェフ、
「アバッキオ」古田シェフ、「ルール ブルー」南條シェフ、
4名のシェフのコラボイベントとして、年一回だけ開催されるわけです。
で・・・・、そこに混ぜられる・・・、いや、混ぜていただく僕の心中、
皆さんに察していただけるでしょうか・・・?
僕ら世代からすると、
一緒に仕事できるだけでも有り難いことこの上ないわけですが、
プレッシャーが尋常じゃないわけです(笑)
ま、いつも、どのイベントでもそうなんですが、
文章で料理の説明は受けるのですが、もちろん実物は見れず食せず。
そこにパンを当てるわけですが、相手が相手なわけですよ・・・。
素材+シェフのキャラクターやスタイルから大体のお皿を予測するわけですが、
如何せん、そんな気楽にお話できる方々ではありません。
なので予測がつきません。
更に、いつも卸してる店ならまだしも、
4名のシェフのお店にシュクレのパン、普段は使われておりません。
「な~んや、一緒に仕事してみたら、こんなもんか」
そう思われるのも悔しいわけです。
昨年は、と言いますと、
ラ シームさんと僕のコラボイベントと被ってしまい、
結構・・・と言うか、めちゃくちゃ大変だったうえに、
結局、お皿も見れず仕舞いだったので、参考にならないんです。
それもあってか、今年は席を空けといて下さったわけですが、
後に、これが「罠だったのか・・・」と思うくらい、
尋常じゃないくらい嫌な汗をかきながらの食事となるわけです(笑)
今年は・・・と言いますと、ソウルに行ってたのもありますが、
昨年の二の舞にならぬよう、帰国後はイレギュラーな予定は入れず、
いただいたオファー1本に絞ってたので、
多少の余裕を持って挑める・・・そう信じて疑わなかったんです、
ボージョレを思い出すまでは(笑)
そうです、だだ被りでした、毎年恒例となったボージョレのイベントと・・・。

会場は新町「ブレ ド ブレ」
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本当はパンの配達と一緒に向かうはずだったんですが、
ボージョレのイベントで2日徹夜だった僕は、
パンを焼き上げるだけで力尽き、間に合いませんでした・・・。
パンの到着は5時、僕の食事開始時刻は7時、
2時間の猶予があるので、無理せず7時に合わせて向かうことに。
が、これが逆に凶と出てしまったわけです。
なかなか動かない身体は、準備にいたずらに時間を浪費し、
結局ギッリギリで電車に飛び乗ることになり、
一刻のロスも許されない状況下でICOCAのチャージ切れで改札で挟まれ、
急いでチャージしようと思って覗いた財布のなかには、
一枚のW5000札のみという間の悪さ。
ソウルから帰国してまだ一度もお金を下ろしてなかった僕は、
駅員さんに説明してコンビニに行かせてもらい、ようやく改札地獄を突破。
絶対遅れられない状況にテンパった僕は、
心斎橋から一目散に適当に駆けあがった出口から、
取りあえず目についたタクシーに飛び乗り、
「新町までお願いします!」

まぁね、
バタバタしたけどさ、
タクシー乗ってしまえばこっちのもんですわ。
運転手さんには近距離で申し訳ないですが、方向音痴の僕にとって、
間違いなく着く保証を勝ち得た安堵感ったらないわけですよ。
そんな時、大きく肩で息をしながら呼吸を整えてる僕に、
おもむろに運転手さんが声をかけてきました。
「新町やったら反対方向やで」
「・・・え?」
タクシーに乗り込んだ場所は、だだっ広い御堂筋の更に左折専用の側道。
「いや、行ったってもええけど、めちゃくちゃ回り道やで」
いやいやいや!一刻の猶予もないのに回り道なんてしてる暇ありません!
そうこうしてる間に信号が変わってしまったので、
5mくらい走って邪魔にならない場所にタクシーを停め、
「右斜め後方」というアバウトな説明に従い、
ただひたすら右斜め後方の闇夜のラビリンスへと走り去っていったのであった。

ヒュー、ヒュー、ヒュー・・・
「なんだ?この乾いた哀しげな音は?」
そう、それは迷いながらも7時ジャストに奇跡的に到着した僕の肺が限界を超え、
必死に酸素を求めて泣いている音でした(笑)

用意してもらってた席に着くと、今日のメニューが。
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ちょっと、うちのとこだけザックリし過ぎてませんか?(笑)

そんなとき、ふと我に帰る・・・。
この日、初めて料理とパンを合わせて食べるわけですが、
よく考えてみると、一皿一皿、答え合わせのような時間が続くわけです。
いつもは大歓迎の、案内されたカウンターの席、
そこは今日に限っては、まさに教室の一番前、
先生に一番近い席に席替えで当たった時と同じような悲劇。
4人の先生(シェフ)を目の前にしながら、
課せられた宿題の答え合わせをしなければいけないわけです。
「まさか間違ったりしてへんやろなぁ!?」
と、運ばれてくる正解のお皿に対して、
「はい、あなたが提出した回答は、これね」
と、パンが運ばれてくるわけです・・・・、帰っていいですか?(笑)

そんな時、始業のベルが如く、シャンパンが運ばれてきました。
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「さぁ、岩永くん、答え合わせの時間だよ」的な時間の幕開けです。

アミューズ(ブレ ド ブレ 大垣シェフ)
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のっけから「こう来たか!!」と、血の気が引く(笑)
アミューズ3種と言われた時から、
「あの・・・パン無しじゃダメですか・・・?」と弱気になってましたから。
だって、最初から1種類ずつパン当てられないでしょ?
一皿でお腹いっぱいになっちゃいますからね。
で、僕の中から魚が消えました。
コンソメとフォアグラには1種で当てれても、
魚までカバーするのは無理だと判断。
そこで当てたのは、赤ワインで仕込んだセーグルの生地に、
カカオと、粉末にした乾燥ポルチーニを練り込んだパン。
それをケーク型で焼いて、薄くスライスして提供してもらおうと・・・、
あれ?パンが運ばれてきません。
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あった!!(笑)
既にアミューズの中に組み込んでいただいてました!
大垣シェフがパンを食べて、こういうアレンジにしてくださったのでしょうか?
正直、助かりました(笑)
そして、これメチャクチャ合いました。
とろけるようなフォアグラのコンフィに、
生のイチヂクの瑞々しさと独特の甘味、
カカオの苦みがキレを与え、
その後に、ポルチーニの旨味がドンっと押し寄せます。
ただ・・・、何人のお客さんに、
この部分の仕事がシュクレだと気付いてもらえたんでしょうね・・・。

あ、最初のパンが大丈夫だった安堵からか、
ちょっと説明が冗舌になってしまいましたね(笑)
イノシシのコンソメも素晴らしく、唯一の温かい一皿はホッとさせてくれました。
魚も他の2種に対して良いアクセントになる爽やかなマリネでした。

さ、次は一先ずパンは忘れ、料理を楽しむことに集中しましょう。
八寸 (津村氏)
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「あぁ、旨いなぁ・・。」
しみじみ感じる丁寧で的確なお仕事に、散りばめられた日本の「季節」。
ただただ、またこうして「津むら」の料理に、
再会できる場を設けてくださったことに感謝。

あ・・・、現実に引き戻される目線を、
チョイチョイ投げかけてくるイヂワルなお方が・・・。
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さて、答え合わせの再開です。

オードブル(アバッキオ 古田シェフ)
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うずらのソテー 前田農園産白葱
ウンブリア産 黒トリュフ風味

うずらは極めてジューシーで、
そのジュを吸ったトロトロの下仁田葱も絶品。
ラビオリの中には、ちょっとした板チョコくらいの厚みの黒トリュフが。
静かな中に、じわりじわりと強さが滲み出てくるような印象の一皿。

そこに当てたのは、こちら。
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イタリアンの古田シェフということもあり、ベースはシャバタ。
そこにジャガイモと、トリュフオイルを練り込みました。
料理に対して「違う角度から当てる」というより、
あえて重ねて「膨らませる」という意図のパン。
これはお客さんにも分かりやすかったのか(トリュフ臭プンプンでしたから)、
一番リアクションが良かったと思います。

ワインも料理に合わせてグラスで合わせていただいてたんですが、
次は以外にも「赤」。飲み比べれるように2種類持ってきてくれました。
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いや・・・、僕が思ったお皿だと完全に「白」。
ちょっと嫌な予感の中、運ばれてきた料理は、こちら。

ブルターニュ産 オマール海老のプチマルミット仕立て
(ルール ブルー 南條シェフ)
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オマール半身を使った、豪快で豪華な盛り付け。
その下には、たっぷりお野菜も敷き詰められ、
ビスクの濃厚さと野菜のブイヨンの優しい甘味を合わせたスープも言わずもがな。

パンは、こちら。
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淡白でいながらネットリしたオマールの身をイメージして、
生地の中に摩り下ろしたエメンタールチーズを練り込んでいます。
そこにオレンジの皮を散りばめ、明るさと香りを加えました。

コース終了後、
「オマールって伝えた時に、柑橘で来るかなぁとは思ったんです。
でも、エメンタール合わせてくるとは思わへんかったわ」と、南條シェフ。
それは、一応「オッケーだった」と捉えて宜しいのでしょうか・・・?
それから、自分のお皿が終わったと思ったら、
「どう?今まで完璧?」と、急にプレッシャーをかけてくるのは止めて下さい(笑)

最後は、ブレ ド ブレ、大垣シェフです。
北海道 旭川 蝦夷鹿ロース肉のロースト 赤ワインソース もも肉のシヴェ
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ビジュアルで、やられますね。
しっかりローストされた外側と対照的に、
びっくりするほど柔らかに仕上げられた肉質。
ホントね、とろけました。もちろん、ソースも秀逸。
「フランス料理、食った~!!」って、一皿。

濃厚なソースに胸を撫で下ろしたのは、このパンのせい。
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週末限定のベルエポックというパンに、栗粉とアニスを練り込みました。
多分、強いお皿だろうとは思ってましたが、
仮に少しでも方向が違ってたら、全く合わなかったと思います。
それくらい、ま、ちょっと気持ちアニス多かったですね(笑)
ただ、今回救われたのは、パンが温められずそのまま提供されてたんです。
もし温めなおされてたら、アニスの香りが立ち過ぎてしまい、
ちょっとキツかったと思います。
ソースを拭った際の相性は抜群でした(自分評)。

一番万人受けしないパンでしたので心配でしたが、
あまりパンを食べてらっしゃらないと思われる隣の席のマダムが、
「パン、美味しい!」って言ってくださってたので嬉しかったです。

さ、デザートは、再びアバッキオの古田シェフです。
山口県産 岩根栗のミルフィーユ仕立て カスタニャッチョ風
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アバッキオさんと言えば、ドルチェでは「ミルフィーユ」は有名です。
それを日本三大栗と言われる岩根栗(がんねぐり)を贅沢に使った、
スペシャルバージョンにしての提供です。

ハラハラドキドキの締めくくりは、ゆるりとハーブティーで・・・。
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いやぁ、疲れました(笑)
何か、不思議な感覚でしたね。
もちろん、料理を先に食べさせてもらえるパターンは少ないので、
毎度コラボの際は、その場で初めてパンと合わせるんですが、
こんな風にカウンターで、シェフを前にして食べるというのは無かったですね。
しかも・・・な、メンツです。そりゃ、食事どころじゃないですよ。
でも、楽しかったです。
こうしたコラボイベントに客側として参加させてもらったのは初めてでしたので、
すごい良い経験をさせていただきました。
パン好きさんのイベントなら、皆さん信じられないくらいパン食べられますが、
今回のイベントは、レストラン主導での開催。
ちょっとパンのサイズが大きかったですね。
これも預けっぱなしでは、わからなかったことです。
一皿いただいて、パンも一個ずつ完食して気付くことは多かったです。
お客さんにもパンは好評だったと聞きました。
何より、津村さんの年一回のイベントの足を引っ張らなかったこと、
仏・伊、合わせて3名のシェフの料理の邪魔をしなかったこと、
それだけで最低限の仕事は出来たかなぁ・・・と思います。

各シェフのパンの感想?
そんなの恐れ多くて聞けるわけないじゃすか!
ということで、二年連続感想は聞いてません。
怒られなかったということは、大丈夫だったとポジティブに解釈しています(笑)
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by monsieur-enfant | 2011-12-14 22:59 | シュクレクール