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なないろめがね

「躊躇い」の向こう側。(後編)

匂いがしてたのか喧しかったからか、
ちょっと前からもう並んで下さってたんです。
そんな楽しみにしてくださってた方々を前に、
いよいよ青空レストラン開店です!!
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「大体、150食くらいだと思うよ」とスタート前に聞いてたんですが、
あっという間に200食に迫る勢い。
前衛でスープを注いでる米田シェフは超大変そうでしたが、
ひたすらポテト揚げてる生江シェフと、基本パン詰めるだけの僕は結構余裕。
時折吹く突風からお弁当箱を守ったり、
目につくところのサポートをしながらも、
揚げたてのポテトをパクリ!旨過ぎです!中、トロトロですよ。
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そうなってくるとあれですよね、あれ欲しくなりますよね。
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いや、そういう意図じゃなくてですね、あくまで防寒としてですね・・・。
それに藤巻さんに勧められたら飲まないわけいかないでしょ?
実際、この勧めに乗って、
何杯SALONEでワイン飲まされたかわかんないっすよ(笑)

僕がいただいたのは右端の「なまら」。北海道のお酒。
これが旨かった〜!食事前に勧められるがまま4〜5杯飲んでます。
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そんなこんなで、列もお弁当も大体無くなり、
「じゃあ、あと5分くらい待って終わりにしましょうか」と一段落着いた頃、
食べ終わった方々が通りすがりに「美味しかったです」とか、
「寒い中ありがとう」と声をかけて下さる中、
一人のおばあちゃんが、わざわざお礼を言いに戻って来てくれました。
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マスク越しだったうえに、
僕も少し離れてたので最初よく聞き取れなかったんですが、
繰り返し聞こえるフレーズの中に、
「こんなハイカラなパンを・・・」という言葉がありました。
「それ作ったの、あそこのメガネかけてる・・・」と紹介してもらったので、
「はい!僕です!」と手を挙げて近くにいくと、

「こんなハイカラなパンをいただけて・・・。
 生きてると・・・こんな良いこともあるんだ、って・・・。」

と涙を流しながら伝えてくれました。
・・・完全に不意打ちでした。
僕らなんてキュイジニエあってのブーランジェ。料理あってのパンです。
まさかパンのこと言っていただけるなんて思ってもみなかったですし、
まさかまさか、涙を流して有り難がってもらえるなんて、
夢にも思ってませんでした。
情けないかな、気の効いた言葉一つ返せず、
ただただ溢れ出るものを堪えるので精一杯でした・・・。

たった一度来ただけです。
周りには何度も来てる方たちもいるわけです。
おばあちゃんの言葉に、素直に涙を流せなかったのは、
初めて来た人間が、しかも誘っていただいてやっと来たような人間が、
そんな想いをいただいて、軽々しく感動して良いものか・・・との、
葛藤というか戸惑いがありました。
今まで足を運べなかった言い訳の中には、
「自分みたいな誰も知らない人が行って、誰が喜んでくれるのか」
「大した人数をフォローする力もない店に、一体何が出来るのか」
世の中、芸能人や有名スポーツ選手が被災地を訪れニュースになり、
訪れるだけで元気や勇気を与えれる影響力のある人たちがいる中、
僕なんて「誰?」やし、「何が出来るの?」ですし・・・。
でも、こうして目の前のおばあちゃん一人涙を流してもらえて、
「それで十分じゃないの?」って思わせてもらえました。
僕が誰だって構わないし、知られてなくたって問題じゃない。
たくさんの人数をフォロー出来なかったとして、
じゃあ何人フォロー出来れば足を運ぶの?ってことでしょ?
・・・そんな小さなこと、どうでもいいんです。
目の前の人一人涙を流してくれた、その事実、それが全て。
その為に全ての時間と労力があったとしても、僕は全く惜しくない。
喜んで協力してくれたうちのスタッフたちだって、
きっと、それで納得してくれるはず。きっと、同じように喜んでくれるはず。
食べに来て下さった方々の「ありがとう」は、
それだけ透明で、どこまでも広がる温かさを伴った言葉でした。


皆さん、ありますよ。
まだまだやれること、ありますよ。
関東、関西、関係なく、飲食に限らず有名無名関係なく、
やれること、たくさんあります。喜んでもらえること、たくさんあります。
今回集まってくださった被災地の皆さん、
どこのレストランかなんておそらく知りません。
ブーランジュリなんて言っても何語かもわからないでしょう。
でも喜んでくださいました。労ってくださいました。
復興してるところ、あると思います。
じゃあ終わったのかというと、まだ何も終わってません。
始まってないとは言いません。でも、始められない人たちがいるのも事実です。
行くことが偉いわけでも、何かしたからスゴイわけでもありませんし、
人それぞれ支援の仕方は違うと思いますし、それで良いと思います。
でも、もし僕のように躊躇ってる方がいるのなら、
思いきって足を運んでみて下さい。
一年経った今、決して早くはないかも知れませんが、
決して遅いわけでもありません。
3ヶ月頃にはその時の、半年頃にはその時の、そして今は今の、
必要なものや求められてるものは変わってるはずです。
誰かと同じようにとか、あの時と同じようにとか、必要ないと思います。
今出来ること、自分にやれること、それだけでいいんじゃないでしょうか。
人一人、「ありがとう」、そう言ってもらえただけで、
十分意義は生まれるのではないでしょうか。


お弁当もほぼ無くなり、なんとか喜んでいただけたような感もあり、
さてさて、続いては密かに楽しみにしていたお昼御飯。

今回の指揮を取ってくれたレフェルベソンスの生江シェフの話あり、
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「美味しい食べもの届け隊」代表の藤巻さんの話あり、
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お弁当あり!
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パンにガトーにボンボンに、
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虎やさんのお汁粉もありです!!贅沢!!
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さっそくハンバーガー作りに勤しみます。
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このハンバーグ、パンに野菜のビーツを持ってきたので、
野菜繋がりで蓮根を食感のアクセントに使っています。
そしてソースは予想外のレモンソース!
もちろん酸はとれてますが、爽やかでコクのあるソースを纏ったハンバーグ、
その着地点は「ボルシチ」だったそうです。楽しんでますね!

結構「肝」だったのが、このピクルスのアッシェ。
良い酸味が全体を引き締めてました。
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トマト乗っけて、
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レタス乗っけて・・・・、あ、レタス一番下の方が良かったかな?
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ま、いっか!と、問答無用で赤いパンで蓋をする。
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そのパンに齧り付きながらいただくのは、
下にとろけるチーズを忍ばせた、Hajimeさんのオニオングラタンスープ。
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更に仕掛けがあり、別添えの「後乗せサクサク」付き。
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うちのバゲットをムースリーヌ型で焼いたのを届け、
それを薄くスライスした後、抜き型で丸く抜き、
そこに予めチーズを乗せて揚げてます。
それを飲む直前に上に乗せて、浸していただきます。
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みんな、ひたすら食べてます(笑)
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ハンバーガー、自分で組み立てていく過程は楽しかったなぁ・・・。
女川町の皆さんも、そう思って楽しんでくれてたら嬉しいなぁ・・・。
そんなことを思いながらいただいたお弁当、最高でした。
更に、虎やさんのお汁粉、これまた美味しかったです!!

先に、「今は今で求められてるものがある」と書きましたが、
この「美味しい食べもの届け隊」の活動は、「炊き出し」じゃないんです。
あくまで「青空レストラン」。
もちろん、「何でも良いから温かくて食べれる物」、
そんな時期もあったと思います。
でも今は、生きるための「食糧」なら何とか手に入るようになっています。
今求められてるのは、単なる炊き出しではなく、
会話や笑顔がこぼれる食事なんだそう。
現地では、現地でしかわからない様々な問題があります。
その問題の間の小さな隙間、
それらが目に見えない隔たりを生んでることもあるようです。
今回参加してくださった猟師の小野寺さんが仰ってましたが、
「東北の人は本当に我慢強い。だから何とか耐え凌ぐことができてる。
だけど、その我慢強さが次の段階へ向かう時の弊害にもなっている。」
つまり、抱え込んだまま、人と人の繋がりが生まれにくい状態で、
地域ごとでも、特に地の人ではない方も多い仮設住宅では、
コミュニティが生まれにくいのが現状だそう。
それを、こういう活動で少しでも解消できたなら、
食べることが食欲や空腹を満たすだけでなく、
そんな役割も担うことも期待してもらえてるのなら、
やはり飲食に関わる人間が率先してやるべきことなんだと思います。
「あの赤いパン、気持ち悪かったねぇ」
「最初にハンバーグ乗せた?レタス乗せた?」
「スープの中のチーズ、とろとろで美味しかったね」
「ピンクのケーキ、あれ何味なの?」
「お汁粉、お餅も入ってたねぇ」
この日の活動が皆さんの心の中に「話の種」をバラまけて、
ちょっと思い出した時にでも、会話の花を咲かせてもらえれば、
こんなに嬉しいことはないんですけどね・・・。

「岩永さん、サインしてください!」
と声をかけられ振り返ると、「青空レストラン」の看板の、
店名とメニューの後ろにシェフのサインを書くのだと。
「サインですか?そんなのあるわけ・・・・え!?マジで!?」
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既に生江シェフは書き終わり、米田シェフも慣れた手つきでサラサラッと。
なんか、やっぱフレンチのシェフは、やることスマートですよね〜。
「えっと・・・・えっと・・・・・」
岸部の田舎者はもちろんサインなど作る必要性もないので在る訳もなく、
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思いっきり平仮名で「ただ名前を書く」という行為をさせていただきました。

さて、片付けも終わり、最後にお別れの全員写真。
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なんか充実感とかより、寂しさが勝ってました。
声をかけてくれたおばあちゃんや、
元気な子供たちへの名残惜しさもありましたが、
それくらい、この面々でやれたことは僕には感慨深いものでした。
メニューを決めるやり取りがあり、
各店、途中経過の画像を送りあったり、
それに対していちいちリアクションがあったり、
なんかね、純粋に楽しかったです。
「仲間」扱いしてもらえたこと、本当に嬉しかったです。
だから、それが終わっちゃう寂しさのほうが強かったんです。
相変わらず圧倒的リーダーシップを発揮されてた「届け隊」代表の藤巻さん、
人見知りの激しい僕にも積極的に話しかけてくださった事務局長の青田さん、
率先して引っ張ってくれた「レフェルベソンス」生江シェフ、
声をかけてくれ、こんな素敵な機会を与えてくれた「Hajime」米田シェフ、
お手伝いに参加してくださった軽井沢「ブレストンコート」の菊池さん、
不慣れな現場作業を教えてくれた仙台「アル・フィオーレ」の目黒シェフ、
現地の話をいろいろ聞かせてくれた石巻の猟師の小野寺さん、
ドライバーもされて写真も沢山撮ってくださった谷中さん、
空港までの送迎でもお世話になった伊東さん、
笑顔で現場を明るくしてくれた「レフェルベソンス」レセプションの衛藤さん、
某ショコラトリーの鈴木さん、帰りにいただいた焼き菓子美味しかったです!
虎やの社会貢献室の皆さん、何も言わずバッグに入れてくださってたお汁粉、
この日を思い出しながら大事にいただきますね!
生江シェフのご友人の方々も、全員全員ありがとうございました!!
社交辞令無しで、また必ずお会いしましょう!!
by monsieur-enfant | 2012-04-03 17:46 | 美味しい食べもの届け隊