2008年 07月 10日
産声
もう既にいろんな方に紹介されてる「レストラン ガストロノミック ハジメ」。
今月からいよいよ各メディアにも登場。
業界的に下火になるこの季節に、
徐々にではありますが本格的に動き出します。
今日はそのオープン前のお話。
初めて一部の方にお披露目となったレセプションのお話。
一人の男の強い想いが、世に「形」として産み落とされた日のお話。
先日、ルールブルーさんで打ち合わせもせず食べまくったせいで、
ろくに煮詰められず解散となった数日前。
「とりあえず時間もないことですし、G.Wも重なって食材調達もままならないんで、
割り切って軽いフィンガーフードとかで行きましょうよ」と僕。
・・・・・「そうですね」って、言いましたよね?
だからこっちもプティパンとかでお茶を濁そうと思ってたのに~!
「あ、食材決まりました。えっと、フォアグラ、オマール、アニョー・・・」
「え?・・ちょ、ちょっと待ってください!・・・え~!?」
「で、調理法と添えるソースは・・・」
「え?ですから・・・マジっすか!?それならこっちも考えな駄目じゃないですか!?」
あれはレセプションの何日前でしたっけ、米田さん?(笑)
ま、そんなシチュエーション、嫌いじゃないですけどね。
・・・・しかもレセプション、木曜やん・・・。
ってことは水曜に仕込まなあかんのがシュクレの製法。
そっから12時間ほど、ゆっくりじっくり育てます。
あ・・・水曜・・・休日出勤や。一人で。
はい!!焼き上げましたよ!!
とりあえずかじりついてもらえるように、バゲットのプティサイズ。
フォアグラ用に「パン ヴィエノワ ア ラ キャトルエピス」
今は昔みたいにフォアグラとブリオッシュを合わせることはフランスでも少なくなりました。
もう少し軽いパン ド ミーを合わせるのがポピュラーです。
うちのパン ド ミーは、もちもちしちゃうので却下。
ヴィエノワにオールスパイス、シナモン、黒胡椒、ナツメグを練りこみ焼き上げました。
これを6ミリの厚さにスライスして、ほぼフレッシュに近いフォアグラの下に敷きます。
オマール用には「プティ パン オランジュ」
オマールの上質な甘みをアーモンドになぞらえ、アーモンドプードルを練りこみました。
香りは、きつくならない程度のオレンジ、少量のオリーブオイルでまとめてます。
アニョーには「カレ カカオ」
四角く成形した黒いパンには、カカオの粉末、
ローズマリー、ラヴェンダー、少量のハチミツを加えてます。
さ、遅刻、遅刻~!!(笑)
静かにそのときを待つレストランは、
不安や期待、そのほか数々の感情を飲み込む静寂に包まれています。
この地に決めるまで、数々の問題を乗り越え、
周りから聞こえるのは「大阪では難しい」という右へ倣えのアドバイス。
百も承知ですよ、そんなこと。
でもね、「どこで」じゃなくて「誰が」やと思うんです。
誰がやってるのかが一番の付加価値やと思うんです。
立地、資金、人材、客層・・・
いったい全て揃ってるところはどこですか?
そこなら皆さんは、やりたいことをやり、必ず成功しはるんですか?
いろんな言い訳をしながら中途半端にやってはる人らは、
結局どこでやろうが言い訳を探し、コンプレックスすらお世辞に変えて生きていくんです。
僕は、よっぽど潔いと思います。
ま、比較するレベルの人じゃないですけどね、米田さんは。
ってか・・・全然間に合ってないんですけど・・・・(笑)
ゲストは既にアペ飲みまくり。
料理が出ないので、とりあえずプティ バゲットに出てもらいました。
準備も揃ったところで、シェフのご挨拶。
あんなに緊張した米田さん、初めてみました。
いろんな想いがこみ上げてきたんでしょう。
いろんな景色が駆け巡ったんでしょう。
でも・・・・ちょっとウケました(笑)
ま、料理はササッと紹介するにとどめます。
レセにしては在り得ない上質な素材、品数。
全部は撮れなかったのもありますが、やはりレセ。
ベストな状態ではないですので。
これ、フォアグラですね。
これはオマール。
なんだったっけな・・・。
ホタテの火通しはサスガ。
アニョーです。
やっとお披露目できましたね。
僕は独立の話を聞いた後の
「目を瞑ってもガストロノミーしか作れない」との一言に鳥肌が立ちました。
以降、いろんな障害にぶち当たり、
その都度「レストランとは・・・」という己の信念を貫き、
もちろん今全て叶えたわけではないですが、
言い訳につながる妥協は一切せず、
逐一報告をうけていた僕は、
「テーブルクロスが来たんですけど、スゴイですよ!良いレストランです!」
との嬉しそうな声を聞いて、電話越しに涙が出ました。
肩にかかる重圧は相当なもののはず。
それでもそれを背負うことすら責務だと捉えて前に進む。
今はまだ産まれたて。産声を上げた瞬間です。
スタッフ、お客さんを絡めて、
これからどう成長していくのか。
一ファンとして楽しみであり、
10年後、20年後も、この料理人と旨い酒を呑める様な自分でありたいと強く思うと共に、
出会えたことに心から感謝します。
ま、負けませんけど。
・・・って、この人に限っては自信ないですわ(笑)
by monsieur-enfant
| 2008-07-10 11:53
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