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なないろめがね

カテゴリ:ミッシェル ブラス 洞爺( 1 )

う・・・、ダラダラしてたら出発時間、30分遅れてしまった・・・。
急いでチェックアウトを済まし、レンタカー屋さんへ急ぐ。
この日は北海道最終日。
夕方5時くらいに札幌に帰って来ないと大阪には帰れなくなってしまう。
本当に乗り遅れてしまった昨年の沖縄が早くも頭をよぎる。
夕方5時「くらいに」というのが、そもそも怪しい・・・・。

さ、レンタカーも無事借りて目的地へ急ぎます。
北海道経験者からは「下道で行っても信号ないから早いよ」と聞いてたが、
下道は、在らぬところからパトカーが現れるので怖すぎます。
登別辺りで霧に覆われ、シトシト雨も降ってきました。
「今日もか・・・・」と思ってたところ、道を進んでいると晴れ間が見えてきました。
馬鹿ナビが急に案内を終了したおかげで道に迷い、目と鼻の先で30分くらい浪費。
ま、そのおかげで素晴らしい景色に出会いました。
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海じゃないですよ。湖です。洞爺湖です。
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ちなみにこの時は道が間違ってることには気づいていません。
「やっと着いた~」的な安堵の中、カメラを向けてました。
でも後から考えると、真っ直ぐ目的地に向かっていたら、
湖の畔に寄ることなんてなかったんです。
怪我の功名とはこういうことですね。だって目的地は山の上ですから・・・。
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サミットの開催で一躍有名になりましたね。
「ザ・ウィンザーホテル・洞爺」
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ここは、多いときには10名くらい知り合いが働いてた、何とも感慨深い場所なんです。
パリで働いてるときに、ここの元ブーランジュリとパティスリーのシェフと出会い、
日本に帰ってきたときに声をかけてくれたのも、ここのホテルでした。
料理顧問も大阪まで出てきて話してくださり、
パリで仲良かったフランス人も、僕の帰国を追うようにここのブーランジュリに派遣され、
初の大阪での北海道展に紛れての催事を手伝い知り合いが一気に増え、
当時のシェフを頼みに現モンテベロの橋本と中村を放り込んだと思ったら、
フランスから帰国する米田さん(現レストラン ハジメ)が、
「ミッシェル・ブラスで働くことになった」と。
こんなに入り乱れてるのに、全部と繋がってる僕は結局働いてません。
らしいでしょ?(笑)
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「ここの土地の空気を吸い、景色を眺め、米田さんや橋本、中村らは暮らしてたんやなぁ」
現在の戦友たちの当時を思うと、熱く込み上げてくるものがあります。
やっと来れましたね。当時のみんなに・・・やっと会いに来れました。
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ロビーから切り取られる空の青と雲の白。
時間も景色も移ろう、お金で買えない贅沢な絵画。

さ、では向かいましょうか。
今回の洞爺訪問の目的は、ここ。
「ミッシェル ブラス トーヤ ジャポン」
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流暢な日本語で迎えてくれるフランス人のマックス。
彼は本店からの赴任。気持ちよく席まで案内してもらいます。
「どうぞ。こちらです。」
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絶句・・・。しばらく立ち尽くす景色。
正確には座ってから落ち着かず、もう一度立って撮ってます(笑)
晴れたのは洞爺も久しぶりだそうです。
昨日、一昨日の曇天が帳消しになるような素晴らしいプレゼント。
テーブルから望む景色はこんな感じ。
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「うわ~・・・すっごいなぁ・・・・」
「きれいやね~・・・・」
これらの感嘆の言葉を、一人やと全部心の中で言わなきゃいけない物悲しさ(笑)
口に出して分かち合う人がいないのが寂しい限り・・・・。

薄っぺらいのはライ麦のパン。パンというか薄い板ですけど、クミンの香りがします。
右奥に寝そべってるのが料理用のそば粉のパンです。
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「水を撮ろうと思っただけやのに、背景キレイ過ぎやし!」
って、あ、もちろん心の中で言いました(笑)
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ナイフの横にはメッセージが折りたたまれてるんですが、
これ、後でちゃんと説明してくれますから、先に開けて読んじゃ駄目ですよ。
「気になって、座ってすぐ開けちゃった大人」の図。
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ミッシェル・ブラス本店のあるフランス南西部オーブラックの町、ライヨール。
そこは古くから刃物でも有名な町なんですが、
「生涯一本のナイフを大事に使う」というライヨール独特の慣わしがあって、
それをお客さんにも感じて欲しいということで、食事中はなるべくナイフは替えないで、
一本のナイフで通します。汚れたナイフはパンで拭き取ります。
こういうプレゼンって、「世界」に引き込むためには凄く大事ですよね。
「何の意味があるの?ナイフは料理ごとに変えてよ」っていう感性をお持ちの方、
対応はしてくれるでしょうが、最初から来店しないことをお勧めします。
ここは細かい日常の物差しはポケットにしまい、
おおらかな景色やミッシェル氏のおもてなしに身を委ねてみるのが良いかと。

ランチのコースは2つ。あと、カルトもあります。
金額に一瞬躊躇はするものの、遠路遥々洞爺に来てまで、
逆にスペシャリテの入ってないコースを頼む度胸は僕にはありません。
「こ・・・これならハジメさんで夜食べれるやん・・・・」との一抹の動揺はあれど、
ノンアルコールのフルーツカクテルをいただきながら、コースは緩やかに進み始めます。

コース「出会いと風味」

コック ムイエット
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ミッシェル氏の幼少の頃の思い出を綴った台紙の上に乗せられての登場。
ノンフィクション好きとしては楽しい限り。似たような形状の料理は数あれど、
料理に背景と、氏の温度が加わり、唯一無二の料理に。

アミューズ
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素晴らしく綺麗ですが、特に味の印象はナシ。

現在では“クラシック”
若野菜で仕上げたガルグイユー 発芽豆&ハーブ、トマトの雫
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言わずもがなのミッシェル・ブラスのスペシャリテ。
お昼のコースなのでこの量ですが、よくわからない男性がカルトで頼んでるお皿を見ると、
推定この3倍くらい盛られてました(笑)
食べてみると、一つ一つが明確な、しっかりした味付け。
口の中に入れた時のバラバラ感に、僕はフランスを想っていただきました。
良し悪しではなく、日本人はどこかに「調和」を求めてしまう。それが全然感じない(笑)
口の中にほうばると、適切な火入れで仕立てられたお野菜の合間から、
アクセントの強いハーブや花びらといった食材が、
打ち上げ花火のように、あっちから、こっちから、と、楽しませてくれます。

淡水より;
パプリカ風味のバターで火を入れたニジマスの身、
ハクサイのコンフィ、レモンバームの葉
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氏の料理に通ずることですが、極めてシンプル。
それでいて、決して食べていて物足りない感はないんですよね。
ニジマスはしっとり優しく火を入れてもらい、とても美味しくいただきましたが、
それよりガルニのハクサイのコンフィの美しいこと!

この大地から;
ローストした北海道産の牛肉、
ほど良い食べ頃のトマトのコンフィ、
コリアンダーの芳香を漂わせて
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パクチー、そのまんま(笑)これ、ダメな人はダメでしょ。
でも周りにそのまま置かれてるのだけなんで、食べなきゃいいんですけどね。
お皿がシンプルなだけに、もうちょっと素材であるお肉に頑張っていただきたかったです。
トマトのコンフィの酸味もジューシーさも、つるむらさきの青臭さも、
良いバランスだっただけに残念。

私どもで厳選した、
食べ頃に熟成されたフランス産チーズと北海道産のチーズ
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あら、フロマージュが付いてるんですね。全然メニュー見ないもんで。
久し振りにこれだけのフロマージュを見るので、全部少量ずついただきます。
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北海道産が2種。見た目はよろしかったんですが口にすると比較にならない。
生ハムもそうですが、そもそも素材自体が違い、質も味も追い付いて無いのに、
なぜか本場を凌ぐ値段。納得しかねます。

81年オリジナルクーランの解釈をもとに、
イチゴの流れる温かいビスキュイ“クーラン”
バジリコのシャーベット
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これもスペシャリテ。
モワルーショコラのように、中心に火を通さないでドロけさせるのとは全くの別物。
ビスキュイの中に液体を閉じ込めます。ですから「トロ~リ」なんて品良く出てきません。
こっちが若干焦るくらい「ジャバッ!」って出てきます。
そもそも「クーラン」とは「流れる」っていう意味ですからね。名に偽りなし、です。
ただ、制作中に染み出てしまうことも多く、
1つ出すのに3つくらい仕込まないといけない成功率だそう。

「え?ここで出す?」
そう、クーランとほぼ同時に出てきた中には赤と黄のソルべも・・・。
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「お早めにお召し上がりください」って、それはわかるけど、
そりゃ、普通クーラン先に割りたいでしょ。
「わ!流れてきた~!ってか、流れすぎやろ!」みたいに独りでキャッキャしてると、
あっという間にソルべは溶け溶け。う・・・・、綺麗に食べてあげれんでゴメン。
僕が大阪に帰るから急いで出してくれたんかなぁ・・・。

カフェは別料金。この金額ですから込みでもいいのでは・・・との動揺は、
表情には出てなかったはず(笑)
せっかくですからサロンに移っていただきます。
もちろん外には同じ景色が広がります。
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楽しい時間も終わりに近づきいてきましたね。
ハジメの米田シェフが連絡してくれてたんで、入れ替わり話に来てくれました。

帰りに1階のブティックの合間を縫って外に出る。
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この小さな丘を登って、洞爺にお別れをしよう。
そして眼に鼻に耳に胸に、この景色を様々な想いとともに刻みつけよう。
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どれだけ雄大な建造物を建てようとも、
やはり自然はそれ以上に雄大で。
僕ら人間如きでは、到底敵いっこないほど雄大で。
まざまざと、その中で生かされてることを痛感させられる景色には、
どこか「神」という存在を感じるほど神々しく、
生命力というエネルギーに満ちあふれた自然には、
逆に容易く僕らを死に追いやる狂気も併せ持っている。
やはり僕らは生かされている。
命をいただき、命を繋がせてもらっている。
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都会には海に行かなくても魚が届き、
家畜の世話をすることなく、その肉を手に入れ、
畑を耕さなくても、当然のように農作物が並び、
そこに矛盾の欠片も感じないまま、
感謝する心さえ忘れてしまってるのではないでしょうか。
食糧を商品と呼び、お金との物々交換として持ち帰る毎日の中、
「いただきます」って、誰に向って言ってますか?
「ありがとう」って想いながら食べることはありますか?
たったそれだけのことで、
なんだか美味しく食べれそうな気がするんです。
たったそれだけのことで、
ちょっと気持ちが優しくなれそうな気がするんです。
そしたらもう、
たったそれだけのことは、
たったそれだけのことではなくなっているんじゃないでしょうか。

長々と綴ってきた北海道編。
最後はなんだかよくわからなくなってきたので強制終了とさせていただきます(笑)
僕にとっては珍しく、直接仕事へのインスピレーションに繋がる旅でもありました。
岸部にいては見れない景色の幾つかを、皆さんにもお届けできたと思います。
あ、長期休みごとに突発的に動いてきましたが、今年の夏休みはあまり動きません。
お客さんの中には人間ドックの資料をメールに添付して下さる方もいますので(笑)、
今夏はおとなしく身体を休めることにします。
さ、あと1週間、頑張りますね。
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by monsieur-enfant | 2009-08-10 00:08 | ミッシェル ブラス 洞爺