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なないろめがね

カテゴリ:ル マンジュ トゥー( 1 )

8年分の想いと共に

この日、既に3件(お菓子屋さんも寄ったから正確には4件)回り、
そこそこお腹いっぱいな中、今回の東京訪問のメインとなるお店に向かう。

正直、ダメもとで電話したここが取れてなかったらお昼で帰ってました。
たまたま取れたので一日滞在を延長しての訪問・・・でしたが、
時間ギリギリで最寄り駅に到着し、確信をもって猛ダッシュした道が逆方向。
更に近くまで行っても見つけられず、この角曲がってなかったら電話しよう・・・、
そう思って見渡すと、ありました!!
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神楽坂 「ル マンジュ トゥー」
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8年前くらいかな?
谷シェフの本が出た時に買ったんですよ。
勿論、当時の僕なんかが読んでわかるような内容ではなかったんですが、
なにより「人」に興味があったんですね。
何度か書いてますが、結局僕が魅かれるのは「生きざま」なんです。
ルセットなんかどうでもよくて、
その背景に流れる「なぜ今この料理を作ってるのか」という信念というか、
そういう匂いを欲してたんです。
だから訳も分からず料理人や菓子職人の本を買い漁ってたんです。
「フランス」というものに人生を捧げたドラマ、
全て上手くいったわけではない紆余曲折の人生模様、
それでも貫いた先に辿り着いた、現在の輝き。
なんかね、不甲斐ない自分と比べて、そんな姿にずっと憧れてたんでしょうね。
あ、長くなってきましたが本題に入りますと、
当時、有名シェフの本ってもう別に珍しくはなかったわけなんですが、
じゃあ、そのなかでなぜ「いつか行ってみたい」と心に残る一冊だったかと言いますと、
その本の最後にね、最後の最後のあとがきの下の方にね、


 「後に続く若き料理人へ

 店の大小じゃないんです。肝をすえてやればできます。
 一歩一歩確実に、自分との戦いです」


って一言があったんです。
鳥肌が立ちました。
僕、料理人じゃないですが、自分に言ってもらってるかのようでした。
というのもね、当時・・・というか今もかもしれないですけど、
誰の本も「我が我が」みたいな感じ。
自分のことばかりで、これだけのことやってきた、これだけすごいものが作れるんだ、
なんかそんな本ばかりだったと思うんです。
ま、あとは単なるレシピ本。
パン屋の本は大概この類でしたよね。つまんないったらありゃしない。
そんな中で、
谷シェフの本の最後にあったこの言葉に貫かれました。
「次の世代のことを、こんな有名なシェフが気遣ってくれてる!」
行ったことも無いお店の、会った事も無いシェフの言葉に、
簡単に踊らされるピュアな29歳(笑)、シュクレクール開店直前の話でした。
思い返すと、8年も前の本でこの本くらいです。
どこの本屋さんでどんなシチュエーションで買ったかまで覚えてるのは。

そんな思い入れのあるお店に遅れて到着。
一階の厨房にシェフの気配を感じながらも直視など出来ぬまま二階の客席へ。
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駅から少し距離があったのもありますが、
シャンパンが旨かったなぁ・・・。
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やっと来れた・・・と実感。

アミューズ
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・・・黒キャベツのローストが長すぎて写真が撮れない・・・。
最初、昆布かと思ったもん(笑)
添えてあるのはブルゴーニュ産エスカルゴのプロヴァンス風。

蝦夷鮑のソテー トリュフ風味
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反則です。
鮑にトリュフ、理性が吹っ飛びそうな組み合わせ。
優しく静かで長い余韻に、上質が漂います。

白・・・は、何飲んだっけ?
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バターだってカッコイイ。
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パンも美味しい。こうでなくっちゃ。
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帆立貝のムースリーヌ マデラソース
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プリン!?・・・と思いきやのムースリーヌ。
帆立の淡い味わいに対して、ちょっとマデラソースが強かったかな。
ただ、薄いソースだと、プリンのキャラメルソースのフェイクにならないからなぁ・・・。
ここは遊び心を味わうべきとこと割り切って楽しむべし!ですね。

うさぎのポーピエット そのジュ 64℃で茹でたポーチドエッグ
牛乳のエスプーマのソース
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ここで、うさぎ!
優しい牛乳のソースに包まれての登場。
泡の下のベースのスープはなんだったっけなぁ・・・。
ポーチドエッグの卵黄と絡まるポーピエットの紅潮したピンク色の肉体、
そこに薄っすら香るトリュフ臭が相まって醸し出す、若々しく健康的なエロス。
ごっつぁんです(笑)

ビーツとオレンジの冷製スープ
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スープというより、思いのほかジュース寄りでした。
さっぱり口直し。

ノドグロのポアレ 緑アニスとペルノーのソース
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ノドグロ!
コース一本なので事前に食材を知らないわけですが、
前半から鮑だったりウサギがソース仕立てで出てきたり、
ここでグッとノドグロだったり・・・と、変化に富んだ食材に楽しませていただいてます。
緑アニスとペルノーのソースが全く邪魔にならず、
ガルニのお野菜とも相性抜群でした。

赤はグラスで。
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ランド産鳩のロースト
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もちろん、今までどれも美味しかったんですが、
ここにきて「本気」・・・と言ったら今まで何やったんやってなりますね(笑)
あ、真骨頂と言いますか、あくまでイメージですが、
谷シェフのド真ん中ストレート勝負!ってな感じ。
言葉なく、ただひたすらむさぼる時間。
思考ではなく本能に直接働きかける「旨さ」。
至福・・・。

味覚、視覚、嗅覚を魅了され、
しばらく放心状態で余韻に浸ってる所に登場した、ポップなシリコン製の物体が。
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スポッ!ではなくベリベリッっと剥がされたシリコンのカバーの下から出てきたのは、
山羊ミルクのキャンディー仕立て
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C'est mignon!!
古典の男らしさから一転、運ばれてきたラブリーな空気。
後ろに残るコクがない代わりに、山羊ミルク独特の香りが心地いい。
これを残ってたパンに乗せると、
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あら不思議、香ばしいコーン代わりに大変身(笑)
お行儀悪いですね・・・失礼しました。

苺のミルフィユ
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旬の苺の香りと酸味、濃厚なパティシエールの甘味、
しっかり焼きこまれたフィユタージュの粉とバターの香ばしさと軽やかな食感。
どれが外れても成り立たない関係性が当たり前に表現されてる安心感。
デセールでガッカリする店が多いなか、
シンプルなミルフィユが普通にちゃんと美味しいあたり、さすがですね。

ミニャ
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抜かりなしのミニャ。
最後にいただいたのはエスプレッソだったっけ・・・画像損失、記憶も喪失です(笑)

最初に谷シェフへの一方的な想いは書かせてもらったのであまり書くこともないのですが、
ひょんなことから「シュクレクールさんって大阪のパン屋さんですよね?」ってなって、
お会計を済まして下に降りると谷シェフから話しかけてきてくださいました。
「知ってます。Hajimeさんにお邪魔した時に、パンが美味しくて聞いたんです」と。
頭、真っ白になりそうでした。
谷シェフの前でしどろもどろになるわけにはいかないので踏ん張りましたが、
軽く意識飛びそうでした(笑)
だって・・・、ねぇ。
ただ抱えてきた想いと共に時間を過ごせれば良いと思って過ごした2時間半。
まさか、岸部でピーチクパーチク言ってるだけの小さな店のこと、
知ってもらってるなんて夢にも思いませんから・・・。
Hajimeさん様様ですよ、ホントに。
こんなとこでもお世話になってしまって・・・、憎いお方(笑)

その後、谷シェフが思うレストランのパンの有り方など話していただき、
調子乗って僕の意見なども生意気に述べさせていただき、
なんか夢みたいなフワフワした、且つ一本の鋭い光が差し込んだような、
短かったけどとても貴重な眩い時間をいただきました。
こうしてお話していただける機会があって思うのですが、
がっぷり四つなんてとんでもないですが、
せめて後ろめたい気持ちにはならないような仕事をしてこれて良かった・・・と思います。
谷シェフが書いておられたように、
肝を据えて一歩一歩、小さな店ですがやってこれてることを、
僕自身を通じてシェフに見ていただけたなら、
ささやかな恩返しにはなれたのかなぁ・・・と思いました。

夢見心地の帰り道・・・、振り返ると恥ずかしながら単なる一ファンの自分がいました(笑)
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by monsieur-enfant | 2011-05-27 23:12 | ル マンジュ トゥー