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なないろめがね

さてさて、珍しく2週続けての東京行きとなった2週目の夜のこと。
この日は神奈川まで飛びます。

天麩羅 「美かさ」
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ピントがボケボケだったので逆にほんわりさせて、誤魔化してみました。
今宵の夢のような時間を象徴するようなメルヘンチックな仕上がりです(笑)

「こんなとこにあるのかぁ・・・」とキョロキョロしながら歩いた駅からの道。
ふいに現れる店構えは静かな佇まい。

中に入ると穏やかな中にも凛とした空気が漂います。
すでに視界にはカウンターの奥で仕込みをされてる大将の姿が映ります。
靴を脱いで、その姿を左に見ながら、右手の待ちあいへと通される。
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ほんのワンクッションですが、この時間と空間は大事です。
入ってすぐ大将の待つカウンターに通されていたら、緊張して味もわかりません(笑)
しばしのこの時間で、「美かさ」さんの空気を感じ、その空気に馴染むよう努める次第。
・・・・・あかん、馴染めないうちに呼ばれてしもた(笑)
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ド平日で時間が早かったのもあり、完全に大将独占状態。
最初はビールをいただきます。エビスやったかな?

海老頭 銀杏 むかご 百合根
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パリパリ香ばしい海老の頭。百合根もほっくりと。
銀杏の香りが特筆!日本人だということを実感させられます・・・・。

海老
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盛りで来られると、絶対海老は最後に食べる貧乏性の僕には、
のっけから海老を食べる心構えは出来ておらず(笑)、
ドギマギしながらいただきました・・・。

もいっちょ海老
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わ!そういえば海老の頭は2つありましたね!
海老、海老、と来るなんて、これだけでテンション上がります。
細胞が「ぷくっ」と熱で膨らんだ瞬間を狙ったかのような火入れ。
ミキュイですがしっかり身はあたたかく、熱によって増した甘みと、
はちきれんばかりのプリプリ感、今度はしっかり堪能しました。

アスパラ
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噛みしめると溢れるアスパラのジュ。
加熱され立ち上る香りを嗅ぎながら、小気味よい食感とともにいただきます。
強い素材は、しっかり目に揚げて香ばしさ加えます。

ここでたまらず燗をいただきます。
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きす
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溶けます・・・・。
ふわっとしたあとスッと溶けます。
なんだか途中から飲み物になってる気がするくらい溶けます。
開いた後、また折って揚げているので、
身の厚みを感じ・・・・たと思ったら、すぐ溶けるんです。

椎茸
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肉厚というか、弾力が凄い。
椎茸は苦手なんですが、嫌な感じの全然しない椎茸。
中には海老のすり身が忍ばせてあり、その食感も合わせて美味です。


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目の前で骨切りを拝ませていただいた後にいただく鱧。
またもやですが、ふわっとした後、スッと溶けます。いや、ホントに溶けるんです。
天麩羅独特の火入れ効果なのかなぁ・・・。他の調理法ではこうはいきませんからね。
酢橘を絞ってサッパリと。

蓮根
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鱧から一転、しっかりした歯ごたえ。
香ばしさを加えるために少し長めに揚げています。
蓮根とか茄子とか、歳とってからしみじみ「旨いなぁ・・・」って思います。

煽烏賊
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うわ!いわゆる俗世間の「イカの天ぷら」とは別物です!
揚げられてというより、温められた身がとろけるという感じ。

茗荷
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く~~・・・・日本人の血が騒ぎ立ちます。
しゃりしゃりした食感からのぞくエッジの効いた独特の香りが、
口いっぱいに豊かに広がります。

お次はこれです。
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はぜ
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ぐはっ!!ホントに飲み物になっちゃった!(笑)
ふくよかさを感じたと思ったら、すぐ溶けてしまいます。
はぜを飲んだの初めてです。
尾びれのサクサクっとした軽さが良いアクセント。

穴子
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「曲がって窪んでるところに天つゆを溜めて食べてください」とのこと。
穴子でつゆを掬って食べる・・・これがまた旨い!
しっかり目に揚げていて衣が香ばしく強い印象、でも嫌な「揚げ過ぎ臭」は全く無し!

無花果
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加熱された果物、僕は生より好きかもです。

天茶
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お出汁じゃなくて、お茶なんですね。
あ~、ほっこりします。酢橘をギュッと効かせていただきます。
なんと言いますか・・・・幸せですね~。


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お茶請けに栗の天麩羅。
ここまで天麩羅なんですね(笑)
コーヒーかなんかで炊いてるのかな?良い香りがフワッと立ち上ります。

緑茶で終焉です・・・・。
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僕、あんまり・・・というか、ほとんど、
天麩羅を目当てにお店に行くことがなかったんです。
なんか、どれも同じで素材感を感じないというか・・・・。
年齢的にちょっと重たいというイメージもありました。
全て覆されました。
各素材が生きています。
魚もそれぞれちゃんと、それぞれの香りを放ち味わいを生み、主張してるんです。
お茶請けまで全て天麩羅でしたが、
決して単調に感じることはなく、そしてちょっと疲れ気味の35歳の胃袋も、
全くもたれることもなく、重さを感じることもなく、
最後まで美味しくいただきました。
大将も、余分なことは話しませんが決して寡黙でもなく、
ちょこちょこ相槌を打ってくれたりするので緊張も解けます。
「写真とか、困るんだよね~」くらい言われるのかと思いきや、
伺うと、快く了承いただきホッとしました。
まだまだ僕くらいの若造が大将と相対して座るにはおこがましいような、
天麩羅と真摯に向き合って食す空間であることを感じるカウンターでした。
惜しまれつつ閉店した大阪の「津むら」さん。
そこに相通ずるような、本物と向き合う緊張感と充足感がここにはありました。
通うものを成長させてくださるようなこの空間に、
今度はいつ来れるだろう・・・・。

天茶に添えられたお漬物が盛られていた小皿です。
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燗の心地よい酔いも手伝って、後半は、こんな顔で座ってたような(笑)
良いお酒に良いお料理に良いお話に良い空間。そして過ごした良い時間。
身体も心もあったかく満たされた「美かさ」さんでの夜のことでした。
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by monsieur-enfant | 2009-10-30 03:10 | 美かさ

ブログが滞ってた理由・・・。
全然時間が無かったのもあるんですが、
こういうヘビーな店を書くときは「えいっ!」と気合を入れないと、
なかなか書き出せないんです。・・・・・だって時間かかるから(笑)
さ、ピクニックの仕込みを切り上げ一時帰宅。
一人4時出勤で仕上げに入るので寝れません。
BBQ、の二の舞は出来ませんからね、マジで。
明日はイベント初の「間に合った岩永」をお見せしましょう!
さ、その前に頑張って書上げてしまおう・・・。
(この後、出勤間際にコテッと寝てしまって、目が覚めたのは6時。
・・・・・結局また皆さんをお待たせしてしまいました。スイマセン。詳細は後ほど・・・)

これはいつごろだったかなぁ・・・・。
なんだかいろいろあったから、だいぶ前だと思ったら、
今月始めのことでした。

夜は1年ぶりかな?
肥後橋「Hajime」
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よその店はシェフだけとかが多いんですが、
ここはスタッフ全員顔馴染みなんで、僕より周りが緊張するんですよね(笑)
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お!久しぶりに見た「パンの舞台挨拶」。
コースの料理に合わせたパンを、こうして最初に紹介して下さるんです。
作り手としては嬉しい限り。
うちのパンも緊張して並んでるようです・・・・が、
僕に僕のパンを見せにくるのも緊張してますよね?(笑)
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「Le Menu nature et dialogue 2009 “自然と対話”」
アミューズからスタートです。
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のっけからエスカルゴとは意表つかれました。
先日のランチといい、以前は若干ぼやけたスタートでしたが、
ここんとこはビシッとピントを定めて来てる気がします。
個人的にはこういうスタートのほうがテンション上がりますね。
トップバッターは大事です。

シャンパンに続いてはロワールやったかな?それ以上は失念・・・。
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お~!遂に姿を変えてきました!
前々回かな?姿を変えずに変化していて度肝を抜かれた卵料理。
卵料理・・・と言っていいんだろうか?まぁ、卵料理には違いないけど・・・。
ずっと繰り抜いた卵の殻に入ってましたが、正に殻を破ったかのような完成度!
あのプレゼンはあれはあれで好きなんですけど、
こうしてザックリ合わせて食べられると表情も全然変わります。

さ、二種のバターとオリーブオイルが運ばれてきたら、
ここらでパンのお出ましです。
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一種目。シャバタに、更にオリーブオイルを追加して焼き上げた「もっとシャバタ」(笑)
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香りとコントラストが増しています。
この「もっとシャバタ」で「もっとチェッカーズ」を連想したあなた、ツワモノですね。
懐かしい!!自分で書いてて超懐かしい!!

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あのね・・・・何がスゴイってね・・・・。
まだアミューズなんですよ!!(笑)
前菜まで辿り着いてないんですから!!
牡蠣と胡瓜の組み合わせ。うん、この発想、何となくわかる。
そこに合わせたのはヨーグルトの乳酸菌の酸味。そこに漂う柑橘の香り。
これスゴイっすよ!!いやホント!
その全てのバランスたるや・・・・いやぁ、ホントに旨かった。

さてさて、ここでやっとメニューに表記されてるものが始まります。
さっきまでのはメニューにさえ書かれてませんから(笑)

mineral
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しばしご自由にご観覧ください・・・・








問答無用の美しさ・・・。
まるで、幾種もの色を湛えたパレットのよう・・・。
一種一種違う火通しで、ランチの80数種に対して100数十種の野菜の数。
その一つ一つの仕事を考えると、止まって手が動き出せません。
凄いというより、凄まじいと言うか・・・・、
この鮮やかさを生むために削りに削られ、研ぎ澄ましに研ぎ澄まされた感性に、
敬意を表さずにはいられません・・・・。

アルザスのリースリング・・・やったかな?
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saba
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はい、鯖です。
三陸・金華山周辺の「金華さば」。
オリーブのソース、トマトと黒糖が添えられています。
撮るの忘れてましたが、鯖に合わせるのは左から二番目にあった「アオサとノアゼット」。
潮の香りと、ノアゼットのコクを合わせてみました。
魚貝全般に強いパンです。

foie gras au naturel
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フォアグラを、パンに見立てたジャガイモで挟んだタルティーヌ。
横はこう・・・。
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相変わらず、ここのフォアグラは旨い・・・。
しかもいろんなアレンジが用意されてるので、回を重ねる楽しみもあります。

ボジョレーだったかな?とてもそんな印象は感じないしっかりしたボジョレー。
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navet et truffe
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かぶですね。ほっくり懐かしい食感に溢れるジュ。瑞々しい!
そこに絡むトリュフはあまり主張せず、優しいかぶを厚い香りで支えます。

そこに合わすのは「しょうがのパン」
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旨い!自画自賛!(笑)
しょうがのコンフィを邪魔にならない程度に練りこんでみましたが、
これがこのお皿にドンピシャでした。ベストカップル賞です(笑)

コート ドュ ローヌ・・・・・辺りだったような・・・
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canard challandais
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これ・・・過去最高の鴨料理でした・・・。ただただ素晴らしい。
この料理になることがわかっているのなら、
「鴨になれ」という神様からの命令も甘んじて受けれてしまうかもしれません。
しっかり皮目を焼いた後、赤外線を使ってゆっくり火を通してるのですが、
炭で焼いた香りが付いてるんですよね。
添えられた柿ともよく合います。

くるみの粉末とくるみのオイルのパン
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そんなに「くるみくるみ」してなくて、
形はないのに胡桃の味や香りを醸し出せるよう作ったパン。
鴨に限らず、そこそこ幅広いメイン料理に対応できるパンです。

fromage
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嬉しいワゴンサービス。
なかなか良い状態のチーズを何種も食べれる機会はないですからね・・・。
で、「全部乗せ」です。
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そこにはドライフルーツの入った「サンクディアマン」、
穀類の入った香ばしい「パン オ セレアル」を合わせてます。
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今日のワインはお任せでお願いしたんですが、
結構、真面目で無難なチョイスが多かったので高揚感は得られず・・・。
そこで「もっと遊んで」とリクエスト。そこで出てきたのがこれ。
甲州 「甲斐ノワール」
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これ、今日一でした。どうしても感じる「日本のワイン」っぽさが全くない。
ブラインドなら絶対わからなかったと思うくらい、しっかりした骨格のワイン。

reine-des-pres
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シモツケソウのアイス。

chocolat
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チョコ好きにはたまらないデセール。
ショコラとカフェの苦味の競演。チュイルはオレンジ風味。
ショコラショーまで付いて、カカオの香りまで満喫。

ミニャ
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一躍、時の人となった米田シェフのサービスショット(笑)

いやはや、凄まじい料理のクオリティです。
人って、ここまで仕事に魂を捧げることが出来るんですね・・・・。
妥協の一点も無い料理を前にして、
今の自分の微温湯さ加減を痛感します・・・・。
それでも尚、「いやぁ、まだまだ・・・」と本気で言ってきます。
このシェフが、「まだまだ」と言ってる間、まだ伸びしろがあると思うとゾッとしますね(笑)
もちろん自分の伸びしろと共に、
「レストラン」としての総合的な伸びしろやと思います。
まだまだ2年目。まだまだ成長し成熟していくことでしょう。
騒動が収まるまで、しばらく行けないですが、
その信念は、変わらず、ブレず、揺らがず、真っ直ぐに貫かれることと思います。
何よりも、何の評価よりも、自分が自分に課したハードルが、一番高いのですから。


この日の夜風はとても気持ち良く、
素敵な時間を過ごせた心はとても穏やかで、
大阪駅までの足取りも軽やかに、
ふと見上げれば空にはキレイなお月さま・・・・。
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そしてこの数日後、
昼間でも眩いばかりに輝く星に照らされる栄誉を掴みました。
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by monsieur-enfant | 2009-10-30 02:06 | HAJIME

道標

ちょっとグダッとしてしまってました。
しばらくここにも書けないかなぁ・・・・って。
でもね、こうしてパソコンに向かうのは、やはり想いに触れるからなんですね。
あ、でもやっぱりしんどいので、ちょっと手短に行きますね(笑)

先日、千葉から僕に会いに来てくれた子がいました。
一応、面接ではないのですが、働きたいので話がしたいと。
ただそれだけで、貴重な休みに日帰りで来てくれました。
メールをもらってた文章からも熱意は伝わっていて、
実際会って話してみても、想いが溢れて涙ぐんだりするような子でした。

問題は、この子が「大阪に行きたい」と相談した上司たちが浴びせた言葉です。
「無理だろ」
「今のお前が行ってもうちの評判落とす」
「そうやって行って駄目になった奴を何人も知ってる。」
「夢を見てる」
「俺も昔は思ったけど」
・・・・腐ってますね、ここ。

僕も昔そういう経験がありまして、
フランスに渡ることを決めてパン業界を辞め、アルバイトに明け暮れてる時のことでした。
たまたま自転車で移動してるときに車から呼び止められました。
まぁ、パン業界では今でもそこそこ名の知れたシェフでした。
「今、何してんの?」と聞かれ、
「別の仕事をして、フランスに行くお金を貯めてるんです」
そう答えた僕に、
「フランス?行って何になるの?」
車から引きずり下ろしたろかと思いましたが、僕、根が温厚ですからね(笑)

僕にはフランスに行こうと思った動機や経緯がありました。
その時もアルバイト期間中、睡眠時間は2時間も取れず、
朦朧として記憶も定かじゃなかった頃。
毎日が苦しくて苦しくて、何度も辞めて楽になりたいと思ったものでした。
それでもフランスに行きたいという想い、
何かを掴みたいという想いに突き動かされて息をしていました。
先にも書きましたが、その相手は一応名のあるシェフだったんです。
ただの同業者とは訳が違います。
立場上、多少の影響力はあるんです。
僕らの言葉は、応援し、鼓舞することも可能な代わりに、
若者の心に芽生えた小さな想いくらい簡単に摘み取ってしまうことも可能なんです。
それぐらい責任があるんです。
シュクレの2年目の時かな・・・、
お店に来てくれた、まだ若い女の子が同業者だということで、
手を止めショーケース越しに話にいきました。
しばらくすると、女の子が泣きだしてしまったんです。
「うわ!またやってしまった!」と慌ててると、
「違うんです・・・まさかお話できると思ってなかったんで・・・・」
ゾクッと、鳥肌が立ちました。
オープンして2年、僕の中では変わらず「岩永 歩」だったのに、
こんな僕でもいつのまにか「シュクレクールの岩永」になっていて、
その言葉は僕ではなく、「岩永シェフ」の言葉として伝わっていたんです。
怖くなりました。
その責任の重さに怖くなりました。
言葉の責任って、僕はあると思うんです。

さっきの某シェフの話に戻りますが、
僕だったから良かったものの、
他の子なら下手したら「そうなんですか・・・」と火を消されてしまってたかも知れません。
背景も知らず、想いも知らず、よくもまぁ簡単に言ってくれたもんです。
しかも本人は行ったことないんですよ!
おかげで僕の中の炎はメラメラメラメラ燃えたぎってきたんですけどね(笑)
行って何があるかはわかりません。
でも、体験してないのに軽率に言葉にするような人にはなりたくない。
実際、例え本当に何もなかったとしても、
僕は行って自分で体験してから「僕にとっては何もなかった」と言いたい。
結果フランスは、僕にとって生涯の財産を用意して待っててくれました。
ある意味、僕の想いを強固にしてくれた某シェフに感謝しています
・・・って感じ悪い言い方ですね(笑)

どうにもこうにも、その千葉の職場の上司の言葉がその時の言葉と重なって、
はらわたが煮えくりかえる思いでした。
中にはこの子の想いや理由すら聞いてくれない人もいたみたい。
言葉ってね、
僕は大事にしたいと思うんです。
誰かに発するのはもちろんですが、
まぁ、それは受け手次第って部分もありますから。
一番気をつけなくてはいけないのが、気づいてそうで気づいてないのが、
自分の口から出る言葉を、一番近くで毎日繰り返し耳にしているのは、
そう、「自分自身」だということです。
中途半端な言葉や、消極的な言葉、おべんちゃらやご機嫌取り、
嘘や社交辞令、それら全部最初に聞いてるのは自分自身なんですから。
どんな言葉が飛び交う仲間なのか、
どんな言葉が飛び交う組織なのか、
モチベーションは明らかに違います。
「絶対やり遂げる」と自分に言い聞かせてる言葉と、
毎日「僕なんて・・・」って自己防衛の為の謙遜の言葉を繰り返してるのと、
どっちが前に進めるかなんて簡単なことです。

僕は明確に言葉にするほうやと思います。
でもそれは自信があるからなんて滅相もないです。
自分のことは自分が一番よく知っています。
そんなに意思は強いほうじゃありません。
そりゃ誰だって楽なほうに走りたいですよ。
そんな自分を知ってるからこそ言葉にします。
言葉にして自分やスタッフを鼓舞しています。
じゃなきゃ進めません。
新たな苦しみなんて求めなくたって、何とか御飯食べていけてますから。
それでもやらなきゃいけないんです。
心の片隅から湧き出てくる小さな小さな前向きな声を捉まえて、
心の拡声器を使って無理やり大きな声にして言葉にします。
そしてそれを嘘にしないように、嘘だけはつかないように、
自分で言ったことの責任くらい自分でとれるように、
一つ一つ形にしていくだけです。
有言実行なんてとんでもない!
言わなきゃできないだけなんです。でもやらなきゃいけないことがあるんです。

心の中にあるだけじゃ消えてしまうでしょ?忘れてしまうでしょ?
だからね、ちゃんと自分の胸の内を言葉にして、文章にして、
心のノートに、書き留めていくんです。
言葉って大事でしょ?

だってね、

そのノートが、自分自身の道標になるんですから。
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by monsieur-enfant | 2009-10-26 18:45 | シュクレクール

0時かぁ・・・・

さっき終わったと思ったら、今から仕事。
今月は公私の用事も絡み、なんだかバタバタしています。
2週続けての東京が明けると、
「食事会」のイベントの第三回がこないだの日曜日に。
終わってホッとしてると、来週はピクニック。
とりあえず、今日やっとメニュー決まりました(笑)
ピクニック前は仕込みが重なるのは覚悟していましたが、
まさかこの土日に、こんなに予約が入るとは・・・。
今週末、なんかありましたっけ?

うちは通常営業にプラスアルファの時は、
日頃動いて無い時間に動かないとしょうがないんですよね。
なんせ厨房が小さいもんで。
なのでこの時間から一人でスタートします。
みんなが来る時間になったらちょっとバトンタッチして、
御飯でも食べに帰ろっかな・・・納豆めかぶ御飯ですけど(笑)

11月もなんだかんだとイベントが重なり、
今から楽しみでもあり憂鬱でもあり・・・・。
あ、モンテベロの2周年もあるんだ・・・。
乗り越えたらボジョレーかぁ・・・・
と思ったらもうシュトーレンとベラヴェッカの仕込みですね。
定休日の変更もあるし、そろそろ妹も出産間近ですし・・・・。
脳みそがショートしそうです。

あ、ブログの更新も最近ままなりませんが、
メールも返せてませんね・・・。
ちゃんと目は通させていただいてます。ありがとうございます。
返信は必ずしますので、しばしお待ちください。
あ、お手紙も返せてませんね・・・・。
こちらも必ずお返事書きますので、しばし・・・、しばしばっかりですね、スイマセン。

さ、とりあえず、この週末、楽しみに来て下さる方々に喜んでもらえるよう頑張って、
アバウトな告知にも関わらず多数参加して下さったピクニックに全力を傾けます!
万博公園の芝生の上で昼寝出来る水曜日を夢見て・・・・(笑)

さ、行ってきます!!
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by monsieur-enfant | 2009-10-23 23:58 | シュクレクール

「ちょっと寄りたいんですけど、夕方時間ありますか?」
そう連絡があったのは、一躍時の人となった「Hajime」の米田シェフ。
忙しい中、どうしたんかな?・・・そう思いながらシュクレで待っていました。

その日は肌寒く、空にはオリオン座流星群が見えるという日。
生憎、ちょっと曇っていたので、実際大阪から見えたのかな?
夕方の予定が渋滞に捉まり、陽は暮れて辺りは暗くなり、
雲間からは幾つもの星たちが、チラチラと遠慮がちに輝き始めていました。

「米田さん、来られました!」
二階で作業してた僕をスタッフが呼びにきてくれ下に降りてみると、
シェフとマダムのお出迎え。
「どうですか?落ち着きました?」
アキュイールさんやFujiyaさんなどもそうですが、
最近の最初の挨拶は大体こんな感じになってしまってます。

ミシュランの反響で電話が鳴り止まなかったり、
予約が殺到したり、店頭での対応にも追われたり・・・、
予め準備と対策を練ってたのに、実際はそれ以上だったようです。
少し落ち着いてきたようですが、どこもバタバタで大変なようですね。
その中でもHajimeは郡を抜く注目度、うちに来てる暇なんてないはずです。
シェフとは当日電話で話した後、先日やっと直接会うことができ、
お互い何も言わずに歩み寄り、ただガッチリとハグを交わしました。
マダムはパンを取りに来ていただいたときに、いつも話をさせてもらってます。
なので何の用かもわからずにいた僕に、赤い袋が差し出されました。

「ん?なんですか、これ。」
「これを渡しに来たんです。ずっと渡したかったものなので」
「どうしたんですか?開けてみてもいいですか?」
誕生日でもなんでもないし・・・・何かプレゼントなんていただく理由もないし・・・・、
そう思いながら受け取った赤い袋の中には、立派な赤い箱が。
そう、バカラの箱です。
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「ん?なんで?なんで?」
そう思いながら箱を開けてみると・・・・
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一瞬で米田シェフが言ってくれてた言葉が、流れ星のように頭をよぎりました。
「三つ取ったら、一つはシュクレにあげたい」
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一気に前身の力が抜けへたり込んでしまそうな身体を両膝に手をつき支えはしましたが
しばらく顔を上げることもできませんでした。
全く動けなくなるくらい・・・・身体が硬直するくらい心が震え、
いろんな想いや、いろんな言葉がうねるように溢れてきましたが、
何一つこの場に相応しい一言を口にすることはできませんでした・・・・。
「シュクレのパンが無かったら、うちは三ツ星は取れませんでした。
だからそのうちの一つを岩永さんに渡したいんです」
その言葉だけで嬉しかった・・・・。
うちなんて何の力にもなっていません。
ただただ彼の精進あっての、もらったのではなく掴んだ三ツ星だと思います。
それでも、そう言ってもらえて嬉しかった・・・・。
本当にそれだけで嬉しかった・・・・・。
なのにこんな・・・・。

搾り出すようにやっと言えた一言は、
「パン屋になって・・・・本当に良かった・・・・・・」

僕は専門学校も行っておらず、店も転々としていて、
横の繋がりも少なく、頼る人も縋る人も少なく、
有名シェフらのように、何かの賞の受賞歴も一切なく、
いわゆる肩書き何てものは何一つ持ち合わせておらず、
市内や東京で勝負するような勇気も財力もなく、
辺鄙な場所で隠れるように細々と始めた店ですが、
ただただ自分の想いだけで今に至っているわけです。
そんな僕に、この日もらったこの星は、
今までの自分を表彰してもらったかのようでした。
何賞でもありません。選考理由も書いてません。
ただ、そのどんな賞よりも嬉しくて、
どんな賞よりも輝いていて、
僕の心の屈折した暗い部分に、
決して進む道を誤らないように輝く北極星のように、
小さくても強い光を差し込んでくれたかのようでした。
「今のままでいいんですよ」
そう言ってもらえた気がしました・・・・。

強烈に忙しい中、こんなことにわざわざ時間を割いていただき、
言葉だけでなくこんな素敵なプレゼントまでいただいて・・・。
「家宝」として、末代まで大事にさせていただきます。
ちなみにこれ、わかってるとは思いますが、
ミシュランから渡されてるわけじゃありませんからね。
こんなのそれぞれの星の数配ってたら、ミシュラン破産しますから(笑)
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by monsieur-enfant | 2009-10-22 07:39 | シュクレクール

おばあちゃんち

この日の東京はえらいこっちゃでしたね。
そうです、台風です。
下手したら飛行機飛ばないんじゃないかな・・・ってくらいでした。

朝のうちに通り過ぎたようですが、その余波はまだ残り、
動かない電車の路線があったりと、
帰りの為に早めに予約を入れてたリストランテに向かう最中は、
どうなることやら・・・・でした。

運よく丁度動きだしたりで、ちょっと時間より早く着いたので、
同系列の近くの食材屋さんへ。
「ロッソ ルビーノ」
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パスタやオリーブオイルから、生ハムやチーズまで、
かなり充実したラインナップ。
何も買わずに出る時に目に留まったリモンチェロ用の陶のグラス。
・・・・・・・・・・・あかん、負けたわ(笑)
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グラスだけじゃ意味無いのでリモンチェロも購入。
いつ飲むんやろ・・・。

そこそこ時間も潰せたので数分のとこにある店に向かう。
ん・・・・?なんか貼ってあるけど・・・・?
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見~つけた!!(笑)
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噂には聞いていたものの、よくこんなとこに店を構えたものです。
だって、この奥にあると思いきや・・・
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右ですからっ!!
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文京区 「リストランテ ラ バリック トウキョウ」
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思わず「おばあちゃんちと同じ匂いがするっ!」と口走ってしましましたが、
実際、オーナーさんのおばあちゃんの家だったそうですよ。
その後の細かい経緯などは知りませんが、
この建物とともに息づく時間や思い出、それらを踏まえて、いろんな想いとともに、
ここでのリノベーションを決断されたんだと思います。
何事もそうですが、積み重ねることの難しさに比べて、壊すことは一瞬です。
建物としての価値などはわかりませんが、
守ろうとするものがあること、素敵やなぁ・・・って思うんです。
それを守ろうとする気持ちも、もっと素敵やなぁ・・・って思うんです。

とはいえ玄関は、まんま玄関。
いくら「靴のままお上がり下さい」と言われても、日本人のD.N.Aが、ざわつきます(笑)
席に座ってしまうと、やはり落ち着くんですよね~。
中庭の見える席に案内され、陽に照らされ風にそよぐ草木に癒されます。
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ところどころの違和感、ところどころの安心感。
高級な店構えなどは東京じゃ珍しくも何ともなくなって来てる中、
逆に、なかなか体験することが出来ない「非日常」の空間。
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さ、料理をいただきましょうか!
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左隅に辛うじて写ってるのは最初からテーブルに置いてあるグリッシーニ。
これ、結構美味しいです。

最初に登場するのは・・・
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お!一口サイズのハンバーガー。
久しぶりに食べた、バターロールみたいな柔らかいパン。
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なんだろ・・・キャベツと、ちょっと肉の脂分を感じます。

ホタテですね。
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周りに生ハムを巻いてソテーしてます・・・と、ここまではよくあることですが、
ホタテのぷりっぷり度が半端じゃない!生ハムから染み出た旨味も吸収して、
一回りも二回りも美味しくなってます。塩っけも良い塩梅。

パン
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ま、実際のイタリアのパンはこんなクオリティなんでしょうけど・・・・。

メジマグロと根菜のサラダ仕立て ガルムソースとマグロのカラスミ添え
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なんでも少しアレンジしてくれたらしい。
手前は生ですね。マグロのタルタル。下はなんだったけな・・・。
奥はコンフィです。マグロを生っぽく使うのは難しいですね。
どうしても日本人のD.N.Aに引きづり戻されてしまいます。
美味しいんですけどね。
丁寧な仕事に次への期待は高まります。

パルメザンチーズのリゾット
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今でも香ってきそうなほどの芳しさ。
なんでも飛行機直送で何時間しか経ってなくホニャララ・・・・(あまり聞いて無くて・・・)
だそうです!そりゃ、芳しいわけです!(笑)
シンプルなリゾットですが、米も現地から調達。
ふっくらしていながらにして芯を感じる面白いお米。
これもちゃんと説明してくれたのになぁ・・・・、もっと早く書かないと忘れてしまいますね。
そのシンプルなリゾットの上には牛の煮込みがドンッと。
これもちゃんと説明してくれたんですよ!ホントにすいません!
美味しいことだけ伝わったらそれで許してください(笑)
記憶力が無いもので、最初から諦めて聞いてないんです・・・。

馬ヒレ肉のロースト バローロソース
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なかなかメインで「馬」ってないでしょ?
珍しいなぁ・・・と注文してから気づきました。
前日の晩のSALONEも馬でした(笑)
ま、全然タイプは違って、しっかり「馬肉!」って感じながらいただけました。
ハツも添えられてます。

ティラミス 
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バリック風の解釈。マスカルポーネはムースに、上には氷状のコーヒー。
そこまでは良いバランスでしたが・・・
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間に挟まってるコーヒーゼリーが、
いわゆるそこらのコーヒーゼリーを彷彿させる食感。
良い苦みと香りを持ってるだけに残念!

安らぎの一時・・・
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日本家屋でいただくエスプレッソも、乙なものです。
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ニ階にある男性用のトイレに向かう途中、
ふと目に入った小さな小窓。
多分ここは、まんま残してるんやろなぁ・・・と思ったら、
祖母の家に気持ちがトリップしてしまいそうでした。
今は亡き祖母の家。
晩年は同じく亡くなってしまった長男と同居してましたが、
僕にとっては旧家が「おばあちゃんち」。
その旧家は今は他人の手に渡り、なんだか汚く使われてました。
もちろん僕がそこをリノベーションしてブーランジェリを開くなんてことはできませんが、
ところどころに人が住んでた息吹や面影を残すこの家屋で、
一体どんな気持ちで働いてるのかなぁ・・・って想いを馳せてしまいます。

「日本家屋でイタリアンなんて・・・」、そう思うのは簡単です。
でも、なんにでも自分の物差しを当てて考えるのは、
自分の世界を狭めてしまうことになるとは思いませんか?
そして「日本家屋でイタリアンをしてない店」が圧倒的に多い中、
一件くらいこういうお店があっても良いんじゃないですか?
日本人は、否定するのが好き。
否定するだけで自分はしないし代替案も出さない。
多数決の多いほうが好き。
とうより少数意見は不安なんでしょうね。群れる民族ですから。
くだらない・・・。そんな価値観じゃない人たちが必死で「自分」を表現してるのに、
違うことが悪、少ないほうが間違い。
知る努力もしないくせに、わかりづらいものは不親切。
ホント、ふざけんな・・・って思います。
肯定するにも否定するにも、言葉には責任を伴わなくてはいけないんじゃないでしょうか?
言葉って、もっともっと重くて大事で温かいものだったんじゃないでしょうか?
なんだかね・・・・、古い考えだと思いますが、
直筆の文字って心が宿ると思うんです。
その時の感情が筆圧にでたり、字で性格が表れたり・・・。
今の世の中、そんなことナンセンスなのかも知れません。
もちろん便利なものは使っていくべきだとは思います。
でも、「打つ」のと「書く」のは違っても、
その「心」まで変わってしまっていいのでしょうか・・・・。
顔も見えない誰が打っても同じ字がそこらじゅうに氾濫し、
もし一文字一文字書いていたのなら、
決して書けなかったんじゃないだろうか、もしくは途中で気づいたんじゃないだろうか、
そう思うような心を持たない言葉が、「表現の自由」という便利な言葉に守られて、
躊躇することなく一瞬で文章となり公表できる暴力として日常に蔓延っているわけです。
「便利」とは、軽んじることではないのになぁ・・・って、そう思うんですよね・・・・。

ま、あまり書くと終わらなくなるのでこの辺にしておきます(笑)
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by monsieur-enfant | 2009-10-21 06:25 | バリック トウキョウ

取り急ぎ!

えっと、今月末のピクニックの申し込み、多数いただきましてありがとうございます。
全く返事をすることが出来てませんので、先に告知させていただきますが、
現在FAX及びメールで申し込みしていただいた方々については、
全員受付させていただいております。あと数名くらいなら何とかなります。
受付終了は、明日火曜日までとさせていただきますので、
宜しくお願いします。

とりあえず、11時万博公園中央入り口集合と、
座るときに下に敷くやつと遊び道具は各自持参。
お昼御飯は用意しますが未だ未定・・・。
値段は高くても1000円・・・1500円くらいかな?まだわかんないですけどね。
ってな感じですので、みんなで楽しんでもらえれば嬉しいです。
詳細決まり次第ご連絡差し上げますが、
今いただいてるご応募の方は、来る気でいてくださいね。
みなさんと緩い時間を過ごせるのを楽しみにしています。
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by monsieur-enfant | 2009-10-19 18:02 | シュクレクール

仕組まれた「歓喜」

さてさて、とりあえず一度、前回の流れに戻りますね。

西麻布での打ち合わせも終わり、次の約束の場へと移動。
渋谷から、みなとみらい線の終点「横浜中華街駅」への道程も、
これで何回目になるんかな・・・。
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お盆休みに来店した、うちのヴァンドゥーズがえらく気に入って、
「また行きたい」を連呼してる中、
ある雑誌に見開きで掲載されてるのを見つけたんです。
「これはヤバいです!予約が取れなくなってしまいます!」
「あ、そう?」と僕。
そう、これくらいの返事だったはず。
先日辞めたモンテベロの中村を、どうしても連れていきたいらしい。
「そう?じゃ、誘ってみたら?」
中村は、渡仏前の資金難を理由にかなり渋っていました。
そりゃそうでしょ、横浜ですからね、ここ。
残念そうな顔に見かねて言ってしまった一言が、また彼女に火をつけてしまった。
「中村が行くって言うなら、僕も行くよ」
執拗なアプローチの末の、まさかの中村落城。
っていうか落とす前に、もう予約入れてたよね?(笑)
しかも「中村さんの深夜バスは私が払いますから」と言ったらしい。
・・・・ってことは、・・・・その言い回しは、
必然的に僕が食事代を出す流れになってませんか?なってますよね?
はめられた(笑)完全なる確信犯・・・・敵ながらあっ晴れ。
こうして予め仕組まれていた横浜行きが、とうとう当日を迎えたのでした。

「SALONE2007」
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今日は心配事が一つありまして。
「SALONEの顔」というべき藤巻さんが、
新店のオープンに伴い、店にいないというのです。
そのインパクトたるや絶大なので・・・というか、
藤巻さんのいないSALONEが想像できなかったと言ったほうが正しいかも知れません。
一抹の不安が過ぎったのは、僕だけじゃなかったと思います。
それを聞いて若干テンションが下がったのも否めません。
さぁ、どうなることやら・・・・。
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いつものようにワインはお任せ。シャンパーニュからのスタート。
料理もさることながら、イタリアのビオに特化したチョイスは、
他所じゃ飲めないものばかり。
僕の「イタリアワイン」の概念を覆したのは、ここの変態ワインです(笑)

山形牛のスピエディーノ
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藤巻さんの顔を見ると、一気に「SALONE劇場」へと引きずり込まれるのですが、
今日はそれもなく何だかソワソワした感じでしたが、一口でパクッといただくと、
胸ぐら掴まれたかのように世界へ引き込まれます(笑)
ここで実感!!脳が認識しました。SALONEに来たってことを!!
それぐらいエグいっすよ、これ。

鱸のブレザオラと焼きポレンタ
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食感、香りを駆使した、これも「ワールド」を感じる一皿。
今主流の飛び道具も使わず、
これだけトンだ印象を与えれるのはここぐらいじゃなかろうか。
尚且つ、ポレンタを使ったり、ちゃんと自分たちの土俵は踏み外さない。
スタンスがブレない中でのインパクトは、さすがです。

いきなり変態ワイン(笑)
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ホントに説明するだけの知識がないのでスルーしますが、
この濁りは、ワインの下澄みだけを集めて作られたからだそう。
以後、食後酒まで6杯くらいいただくわけですが、
まともな説明できないので省略させていただきます。

鮮魚のヴァポーレ
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山形牛のスピエディーノと並ぶ、SALONEのスペシャリテ。
全く派手さはないものの、身体に沁み入る旨さ。
アイデアだけではない、仕事の正確さや丁寧さが表れる逸品。
この二品で早くも「来て良かったなぁ~・・・」と思わせてくれます。

ミルクのトレネッテ トロペア産赤玉ねぎとペぺローニクルスキ
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卵を使わずミルクで仕込んだ優しいトレネッテ。
酸の感じない赤玉ねぎとの絡みも良かったです。
ペぺローニクルスキって、何やったっけ?ドライピーマンだったかな?

赤海老のサルティンポッカ
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・・・・言葉になりません・・・・と言いながら、興奮してかなり騒いでしまってましたが(笑)
赤海老は、樋口シェフのお気に入りの素材らしく、
好きだからこその生かしきった調理法とプレゼン。
赤海老を満喫させるべく作られた一皿。・・・だけじゃ終わりません。
添えられてるのがトリュフのプリン。
頭から流れ出るほどたっぷり詰まった赤海老の濃厚なミソに、
トリュフのプリンの妖艶なる共演。興奮せずにいられますか!?

その間も、一皿一皿に合わせたワインに容赦なく責められ続ける快楽(笑)
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フォアグラのクッキアイオ
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ワンスプーンでいただくということもあり、
さっきの興奮冷めやらぬままおもむろに食べてしまった・・・・。

ラヴィオローネ 北海道産仔鹿を詰めて
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柿やミントが散りばめられたファンタスティックな料理と思いきや、
ソースはしっかりゴルゴンゾーラ。仔鹿のラヴィオリもド直球。
かと言って離れすぎず纏まり過ぎず。「らしいなぁ・・・」と唸るしかない一皿。

熊本産馬フィレ肉のインパナータ
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見た目のペラペラさを絶する馬肉のポテンシャル。
それらを見た目と共に彩るハーブ類が、口の中でも賑やかに。

食後の一時に、葡萄で作られた桃のお酒。
だって、桃の味なんですもん。葡萄なんですけど・・・・。
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リンゴのストゥルーデルとイチジクのセミフレッド
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充実のミニャ
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今日はハーブティーで。
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こうも各スタッフのモチベーションの高いレストランが、
はたして何件あるだろうか・・・。
理想と現実はかけ離れてるのが現状で、
ここでも何度か嘆きの声を漏らしてるほどの人材難。
頭数を揃えるのも至難の業の中、
温度まで同じ温度に上げていくのは更に至難の業・・・。
藤巻マネージャー不在の中、店を盛り上げようと、お客さんを楽しませようと、
本当にスタッフ皆さんで作り上げてくれた、今日の「SALONE劇場」。
最初の一抹の不安は誠実な接客で取り除かれ、
ここでしか味わえない料理によって惹きつけられ、
いつも以上にフロアに出てきて楽しんでもらおうと振る舞う樋口シェフの姿など、
逆に藤巻さんがいらっしゃる時には見えなかったSALONEの一面が、
僕にはとっても魅力的に映り、「好き度」がまた上がってしまいました。
困るんだよなぁ・・・・なんせここ、横浜ですからねぇ(笑)

フランスに旅立った親友と、
「帰ってきたら、またここで帰国祝いをしようね!」との約束を交わし、
この日の中華街を後にしました。
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by monsieur-enfant | 2009-10-19 03:20 | SALONE2007

ひきだし

私ごとでスイマセンが、
ちょっと感傷に浸らせてもらいます・・・・。

先日のミシュランの発表で、
うちのパンを使ってくれてるお店が3店選ばれました。
行くたびに声をかけて下さるお店も何店か選ばれていましたし、
本当に嬉しい一日でしたが、
やはり直接やりとりがあるお店は身内のような感覚です。
そこにパンを出せてることを誇りに思います。
うちも、ある種の「ご褒美」をいただいたような気分でした。

そんな気持ちの時、一通のメールが入りました。
妹からでした。
僕には妹がいまして、
妹は僕のことを「お兄(おにい)」と言いまして・・・。
その妹からのメールの一行に、
「パリに行く前のお兄に『数年したらこんな素晴らしい事があるから頑張れ』って
教えてあげたい気分になりました」とありました。
・・・・そうですね。
まさかこんな日が来るなんて、当時は思いもしませんでした。
星付きのレストランと絡む仕事を岸部でしてる自分を想像してなかったどころか、
自分の店を持てるなんて考えもしない状況での渡仏でしたから・・・。

当時は、ただ必死だったと思います。
フランスに何があるのか・・・、フランスで何を学ぶのか・・・・、
そんなことよりも、誰の助けも無い場所に、
中途半端な自分を払拭したくて飛び込んだというほうが正しいかと思います。
お店も転々として給料も少なく、共働きも出来ない環境で貯金も出来ず、
「独立」なんてものは夢にも描けませんでした。
意気揚揚と未来へ向かっての渡仏では無かったんです。
ただただ中途半端はイヤ・・・、中途半端に生きてきた自分自身が嫌だったんでしょうね。

働いたお店はレストランとの絡みが多いお店でした。
その中にはアラン・デュカス、ギー・サヴォアなどの三ツ星シェフとの絡みもありました。
「キュイジニエ」を意識せずにはいられない環境ではあったんですが、
やはり同時期にフランスにいた元同僚である、
二人のキュイジニエの存在が大きかったんです。
そのうちの一人が今回三ツ星を獲得した「Hajime」の米田シェフでした。
会うことは数回でしたが、漠然とですが常に存在が頭の中にありましたね。
日本に帰って、もし一緒に仕事することになったとき、
話の中で「知らない」じゃ済まされないことが多々あります。
フランス全土の料理の特色や、有名なレストランの名前やシェフの名前、
パリに絞るとそのシェフの料理の特色や修行経路まで、
なるべく会話の中でズレが出ないようにと必死で調べ、食べ、感じる努力をしました。
休みに日帰りで地方に出向いたり、
なけなしの給料はたいて星付きにいったり、
食文化を身体に擦り込むようにビストロをまわったり、
どこのどんなカテゴリーとも仕事が出来るように、
料理も含めて、そこで提供されてるパンも観察しました。
パン屋だからパンだけ作ってりゃ良いわけではなく、
どれだけ理解して作れるのかが大事だと思うんです。
ブーランジュリで販売するパンと、
レストランで出すパンは、似て非なるものなんです。
でも当時から分かって動いていたかというと、そうでもありません。
2人のキュイジニエに「そんなん知らんの!?」と言われるのが嫌だったんです(笑)
「パン屋だから知らなくても仕方がない」では、何か寂しいでしょ?距離を感じます。
なんとか対等に近い立場で仕事がしたかったんですね。寂しがり屋なもんで(笑)
ま、そういう意味ではパティスリーに関しても同じ考えでした。
一番疎いのが、本業のパン屋のことでしょうか(笑)

でも、そんな引き出しも、すぐに開ける機会はありませんでした。
独立に関しての細かい経緯は、以前どっかで書いてますから省くとして、
フランスで勝負しているキュイジニエより一足先に帰国した僕は、
彼らが帰国した際「やっぱり日本やからこうなるんや」と思われるような店は、
絶対に避けたかったんです。そうは思わせたくなかったんです。
フランスで過ごした時間、語った言葉、嘘にはしたくありませんでした。
何年かかるかわかりませんが、
それらを一滴残らず搾り出せる店をしたかったんです。
ただ、現実は甘くありませんでした。
岸部の町に見慣れぬ佇まい、トングとトレイに慣れた方々には対面販売も違和感、
ショーケースの中にはいつものメロンパンやクリームパンは無く、
覗いては帰って行かれる方ばかり。
どうすれば通ってもらえるんだろう・・・、そんなことを考える前に、
どうしたら口に入れてもらえるんだろう・・・、そこから考えなきゃいけませんでした。
当時、妹に手伝ってもらっていたんですが、
全くお客さんが来ず、夏場のアスファルトから立ち昇る陽炎をボーっと眺める横顔を、
今でも忘れることはありません。

こうして当時を思い返してみると、
よく今があるなぁ・・・と思わずにはいられません。
引き出しは、持っているだけでは意味が無いんです。
その引き出しを、開けなければ意味がありません。
僕は、開ける機会すら無かったですから。
もちろん、当時フランスで一緒だったキュイジニエが、
大阪でお店をする確約なんてあるわけもなく、
生活していくために毎日必死にパンを焼いていた僕は、
そんな引き出しの存在すら忘れていってたような気がします。

そんな日々を経て、
何の因果か、フランスで共に過ごしたキュイジニエは大阪で店を始めました。
それも2人とも。そして僕のパンを使ってくれてます。
「フランスの香りがする」と、言いながら・・・・。

生きていくことが必死な今の世の中、
目先のことで精一杯なのが現状です。
ただ、「今」ばかり見ていては行き詰ってしまいます。
「今」だけを見ていては視野も狭くなってしまいます。
「今」を見るのと同時に「いつか」も見なくてはいけません。
「いつか」のために今やっておかなければいけないことも沢山あります。
「今」の為にすることと同時に「いつか」の為にしておかなきゃいけないことも、
忘れてはいけないと思います。
その「いつか」はいつ来るかわかりません。
もしかしたら来ないかもしれません。
引き出しが開かないまま終わってしまうかもしれません。
でもね、多分、引き出しを作ってない人には最初から「いつか」は来ないんですよ。
そして引き出しを持っていない人には、
その鍵を開けてくれる人との出会いもないでしょう。
「あれ?確か、ここに引き出しあったよね?
その引き出しの中、見せてもらいたいんだけど」
今の料理人との仕事の数々は、そう言ってくれてるように思えてならないんです。
フランスで感じた様々な料理、地方の風、カテゴリーの空気感の違い、
そしてパンの果たす役割の違いや存在価値。
シュクレクールを営むこととは違う、もう一つのブーランジェの仕事。
それは相手がいなければ、やりたくても出来なかった仕事。
求めてくれるキュイジニエに感謝、そんなキュイジニエに出逢えたことに感謝・・・。

妹からのメールにあったように、
明日も見えず、ただただ闇雲に走ってた当時の自分に、
今の「いつか」を教えてあげたい気持ちになりました。
当時の僕が走りまわってくれてたおかげで、
僕はシェフたちと同じ温度で、喜びの涙を流すことが出来ましたから・・・・。
そう思わせてくれる言葉をくれた妹に感謝。
おかげでちょっとだけ、自分に「よくやったね」と言ってあげることができました。
心が、一瞬だけ緩む時間を持てました。
ありがとね・・・・。

その妹も、もうすぐ第ニ子の出産を控えています。
お兄も頑張るから、お前も頑張れよな!!
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by monsieur-enfant | 2009-10-16 03:23 | とりとめなく・・

取り急ぎ・・・

ぐへ・・・・・
今、東京から岸部に着きました。
諸々あっての2週続けての東京行き。
ま、これでしばらくありませんけどね。
仕込みに合流する前に、ちょこっと書いておきますね。

完全に時を逸した感のある「ミシュラン大阪・京都」の話題。
よりによって、その日に東京いましたから(笑)
でもね、火曜日の朝、電話が鳴りました。
「とりましたよ!岩永さん・・・、三ツ星とりましたよ!」
一躍「時の人」となった「Hajime」の米田シェフからでした。
その声は涙で途切れ途切れになってたものの、
僕らの間にそれ以上の言葉は要りませんでした。
「うん、うん・・・・」
様々な出来事や交わした言葉が走馬灯のように蘇り涙となって溢れ出る中、
そう言ってうなずくのが精一杯でした。
最後に絞り出すように言ってくれた「シュクレのパンがあったから取れたんです」
その言葉を生涯の宝としてプレゼントしてくれた米田シェフに出逢えた僕は、
本当に本当に幸せ者やと思います。
今も書きながら勝手に流れる涙を止めることが出来ません・・・。

そしてFujiya1935、アキュイールの両店も、二ツ星の評価を受けました。
同い年の二人のシェフが受けたこの栄誉を、本当に嬉しく思います。
電話をもらったFujiya1935の藤原シェフの声も震えてました。
「誰もやっていない」ことに挑戦し続けてきた中で、
抱え切れない不安やプレッシャーを背負ってきたと思います。
そのシェフの募る想いが滲み出た、喜びと安堵を噛みしめるような報告の電話でした。

ミシュランに様々な解釈があるのはわかっています。
「星」が全てではありません。
そして星をとったお店には、今後、良いことも悪いことも降り注ぐでしょう。
ただ、この「星」には、一般の方には理解できない価値があるのも確かなんです。
特にフランスはじめヨーロッパで修行してきた料理人には無視できないものであり、
一種の呪縛であり宿命なんです。
もちろん一時とは違い、フランスでも星を拒む者や返上する者も珍しくなく
権威は堕ちたかのもしれません。
でもそれは価値観の多様性によるものだと感じます。
料理人が一方的にミシュランに選ばれることが全てだった時代から、
料理人側も選ぶことを始めたことは、良い傾向ではないでしょうか。
東京も含めた「日本版」。
今はその歴史が始まったばかり。
ミシュランの権威とは、その評価の正確性よりも、
積み重ねてきた歴史によるものが大きいとも思います。
その権威を築くのか、「日本版」は失敗という結末を見るのか、
数年で判断するには歳月が短すぎる気がします。

そして最後に、
その価値は形ではありません。
価値をもたない人にとっては何の意味もありません。
参考にするもしないも個人の自由です。
それはそれで良いと思います。
ただ、それを誇りに思う料理人の胸に輝く星だけは、
誰にも汚す権利のない勲章であることだけは間違いないのです。


P.S 火曜、水曜と留守にしてまして、
   このブログの更新が無かったにも関わらず、
   今日、見てみたら信じられないくらいのアクセスがありました。
   ミシュラン発表に対して
   「こいつ、何言いおるんかな?」と思われてたのでしょうか(笑)
   ご期待に添えれない大人しいコメントでスイマセンでした。
   根は気弱で引っ込み思案な男なんです(笑)
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by monsieur-enfant | 2009-10-15 17:59 | とりとめなく・・