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なないろめがね

移ろう時間の中の動かぬ真実 

この日は朝早く目が覚めたので、
この旅初のプランニング。もうパリ来ちゃってますけど(笑)
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そうそう、今回写真が多すぎて、撮りっ放しの画像処理無しでお届けしています。
見にくいのもあると思いますが、ご勘弁を。

今日は昼から約束があるので、ぶらっと散歩がてら古巣に寄って、
近くでプティ デジュネと洒落込みますか。

うっすら明るくなってきた朝のマルシェ。
準備が終わるにつれ、街も目覚め始めます。
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最寄のメトロのマルシェを横目に角を曲がると、慣れ親しんだ「モンジュ通り」へ。
「あぁ・・・帰ってきたなぁ・・・」
あまりに変わらない景色、空気に、
今、店からあのころの僕が出てきそうな錯覚にも陥りそうになる。
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そんな錯覚から引きずり戻してくれたのが、リニューアルした「エリック カイザー」。
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僕がいたころの店名は「メゾン カイザー」。
噂には聞いていたが・・・・とてもじゃないけど、怖くて何も買えなかった。
僕の帰る場所が無くなってしまいそうで、何も買えなかった。
当時は、カイザーが一番愛していたお店。
彼の代名詞である、「バゲット モンジュ」の「モンジュ」は、
この店がある「モンジュ通り」の名から取られたくらい、
1号店でもあるこの店には特別な思いを抱いていたはず。
当時から生産量は他の支店に比べ郡を抜いていたこの店。
更に人気に拍車がかかり、生産が追いつかず、製法も変わり、
クオリティを維持出来なくなってしまったのだろうか・・・。
後に訪れた店のマダムに、「多店舗展開して成功してるんだから仕方ない」
と窘められたが、やはり違うと思う。
人を感動させた以上、それを維持する義務があるんじゃないだろうか。
その心を、想いを、守ってあげる義務があるんじゃないだろうか。
勝手に心を揺さぶっておいて、「仕方ない」じゃすまないんじゃないだろうか・・・。
確かに彼のフランスでの功績に変わりは無い。
生きながらにしてパンの歴史書に名を刻むほどの功績が汚れることはないだろう。
僕の彼への想いも変わることはない。彼なくして今の僕は在りえなかったと断言できる。
ただ僕は、「仕方ない」と思わない生き方をしていきたい。
まだ見ぬ多くの人を喜ばせる道を選ぶより、
少ないかもしれないけど今うちの店を愛してくれてるお客さんやスタッフを裏切らない、
そんな道を歩いていきたい。いや、歩いていかなきゃ、やね。

何も買えず店を出ようとした時、見慣れた顔と出くわした。
「なにしてんの!?」的な反応で再会したのは、僕が働いてた時のシェフ「セドリック」。
しかもこいつ、全っ然変わってない(笑)
辞めたことは知っていたけど、戻ってきてるなんて知らなかった。
まんまの顔に、まんまの声。二言三言交わして「またな」っと別れる。
そう、そこにはまた何も変わらない「通り」が・・・。
入ってしまった。スイッチが入ってしまった。
空港に降り立っただけで泣いてしまうだろうと思ってたのに意外と冷静だった自分。
6年前と同じ駅からパリ入りし、同じ景色の中歩いてきたのに冷静だった自分。
変わらない顔、変わらない声、変わらない景色、堰を切ったように涙が止まらない。
懐かしかった。苦しいくらい懐かしかった。
あった。ここに僕の帰る場所がちゃんとあった。変わらないものだってちゃんとあった。
嬉しかった。心がちぎれるほど嬉しかった。
だって僕には、ここしかないんだから・・・。
思わず店に戻って、「セドリーック!!」と叫んだ。
会えたことが奇跡。もう二度と会えないかもしれない。じっとしてはいれなかった。
頼むのも恥ずかしかったが、写真を頼んだ。
撮られるのも恥ずかしかっただろうが、心良く応えてくれた。
ただ、シャイなもので、一人は恥ずかしかったみたい。ヴァンドゥースと一緒に。
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思わずクロワッサンを買ってしまった(笑)
状態はともかくとして、食べ慣れたバターの味。
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スイッチの入ってしまった心は朝食なんてどこへやら、
最初にお世話になった宿へと向かい始めてました。
冷静に考えれば、片道徒歩40分くらいの道程。
往復だと・・・待ち合わせの時間には間に合わない。
でも、そんなことより「今の感情が優先」。未来はなんとでもなるさ!
我ながら、困った性格やわ・・・。
by monsieur-enfant | 2008-11-13 01:09 | フランス 2008