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なないろめがね

偉大なるリレー

この日は朝からホテルの前で待ち合わせをして、
畑を見に連れてっていただきます。
東京から帰ってきたその足で札幌に来ていただき、
夕方までお付き合いいただき本当にありがとうございました。

札幌から高速に乗り、上川町へ。
途中、高速から見下ろす景色の中にも小麦畑が。
「あれはホクシン」「あれはキタノカオリ」
品種名を聞き、そこに実ってる穂を実際に眺めると、とても愛しく思う。
「あぁ、やっぱり自分はパン屋なんやなぁ・・・」って思う瞬間です。
おそらく、他の業種の方はピンとこないでしょうからね。

今年は日照時間が例年の半分、雨量は倍という、異常気象。
穂がなっても乾燥するほどの陽射しがないので刈り取れない畑が多数。
地盤もゆるくなるので、風で倒れてしまう小麦も多く、
例年の40%減くらいの収穫量になるかもしれません・・・・。
「あ、あそこはもう収穫終わってる!良かった~」
そう話す製粉業者さんの言葉を聞くと、農家さんとの密接な関係が伺え、
嬉しくなるやら、この状況で心配になるやら・・・・。
皆さんがよく耳にする大手業者さんは海外からの小麦をたくさん振り分けてもらえますが、
各地方の中規模の製粉会社さんは、そうはいきません。
地元の小麦農家さんと一緒に頑張って、特色も出していかないことには生き残れません。
道中の車内でもたくさんお話を伺えましたが、
例外なく、どの仕事も今は大変な状況なんですね。
小麦の輸入も自由化され、中規模の会社への小麦の分配も少なくなってくるでしょう。
価格競争になれば太刀打ち出来ません。
ある部分、国に守られてきた古い体質があるのも否めない業界ですが、
守らなければいけないもの、壊していかなければいけないもの、
今が過渡期であることは間違いない中で、なんとか頑張っていただきたいものです。
応援することしか出来ませんけどね・・・。

さ、そろそろ目的地も近くなってきました。
高速降りても全然信号はありません。
山道に入ると、ず~っと一本道。
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頂上に近づくと、少し土地が拓けます。
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その脇の道を少し入っていくと・・・・
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あ、これは鹿除けです。普通に熊も住んでるようなとこですからね。
電流が流れてるので、気をつけて中に入ります。
顔を上げると・・・・
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これはライ麦の畑です。
僕もライ麦畑は初めてです。
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完全な「イメージ」ですが、ライ麦って、
もっと辛気臭くてジメジメどんより育ってると思ってました(どんな農作物や・・・)。
わかりやすく言うと、うちのパン オ セーグルみたいになイメージです。
こんなに真っ直ぐ勇ましくおおらかに育ってるなんて・・・ちょっと意外でした。
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「あ~・・・・こんなイメージのライ麦のパン、作ってみたいなぁ・・・」
はい、作ります。告知は番組の最後に(笑)。

天気の良いときは、ここから残雪を冠した山並みが見渡せるそう。
確かに環境は素晴らしいですね。
近くには北海道では珍しい、食用の牛も放牧されてます。
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ここの農協がやってる牧場で、珍しい品種だそうです。忘れましたけど。
時期的に子牛がやたら多くて、ピョンピョン飛び回る姿はまるで犬みたいでした。
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ま、どんなに可愛くても食べられちゃうんですけどね(笑)

次に向かったのは美瑛地区。
道中、昼ごはんに寄った店がことごとく定休日という不運に見舞われながら、
結局お昼にはありつけないまま到着。
ここは有名な、「親子の木」
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一面の蕎麦畑の向こうに、寄り添う木の間に小さな子供の木。
蕎麦は北海道が収穫高日本一なんですよね。
こちらも蕎麦畑。白い小さなお花がチラチラ可愛らしいです。
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振り向けば小麦畑。これは「ホクシン」
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この辺りは、いろんな農作物が入り乱れ、それらが大地の描く模様を、
「パッチワークの丘」っていうんです。
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やたら、台湾からの観光客が多いです。

少し走ると、また違う品種の「キタノカオリ」
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隣はホクシン。並べたら全然違うでしょ?収穫時期も2週間ほどホクシンが早いんです。
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のどかな景色が広がります。癒されますね~。
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「あれ、なんですか?」って見上げた先には・・・
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ちょうど、刈り入れをしてる最中でした。
大型のコンバインはヨーロッパ製。収穫した小麦をトラックに移してるところです。
あ、動き出しました。
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ゆっくり刈り入れ場に移動。向きを変えて刈り入れ開始です。
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こんな遠くから、しばらくボーッと見とれてました。
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ゆるキャラ登場。
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こうして刈り取られた小麦は、ここ美瑛のJAさんに集められ、サイロに保存されます。
そこに製粉会社さんがトラックで取りに来て、各社で製粉されるんです。
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富良野経由で江別に移動します。
途中見かけたこの麦は・・・・
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大麦です。ほとんどがサッポロビールさんのビールに使われるそうです。
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江別に入ると、ここでしか採れない小麦が現れます。
「はるゆたか」
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なくなりそうになってたこの品種を、農家さんと一緒に守ってきたんです。
刈り入れは、大型のコンバインで順番に回って刈り取ります。
さっき美瑛で見たのもこれくらいの大きさ。道ですれ違うのも一苦労・・・ってか無理やん。
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石狩川の畔にある製粉会社に到着。
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工場はこうして縦に連なります。高低差を利用して製粉していきます。
まずは一階。
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一台一台はこんな感じ。
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何台も同じような機械がありますが、各台によって粉の粗さが違うんです。
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ここで挽かれた小麦がまた上に吸い上げられたり、
上で篩われて細かくなって違う台に落ちてきたり。
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ここは3階。ブレてるんじゃなくて大きな箱がグルングルン動いてるんです。
右の入り口と比べたら大きさがわかるでしょ?
この箱の中に篩いが入ってて、揺すって粉を篩ってるんですって。
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ここ2階では、先ほどの3階の粉を振り分けて1階の各台に流します。
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ザックリ説明しましたが、なんとなく製粉の流れ、わかりました?
ここから送られた粉が、岸部まで旅をしてきてくれるんですね。

農家と密接な関係を築く製粉会社さん。
でも僕らが接するのは問屋さんか製粉会社の営業の方。
その向こうの農家さんであったり畑にまで想いを馳せることって少ないと思います。
お米なら日本人の多くが畑から収穫までイメージできるでしょうけど、
日常の中で小麦畑を目にすることは日本では滅多にありません。
お米は粒で使いますけど、
製粉業者さんから問屋さんに渡り持ってきていただくときには粉になっていますしね。
僕はフランスで一面の小麦畑を目にして強烈な印象を持っていますが、
ライ麦畑は初めて見ました。小麦の種類によっても形状は全然違います。
小麦粉が農作物であるという原風景を想いながら作ること、
自分たちのところに届くまで、どういう工程を経てるのかを理解して作ること、
とても大事なことやと思います。
今回の画像で初めて見たお客さんも多いと思います。
麦が生ってる様、収穫してる様、美瑛のJAも見ましたよね?
そうなると・・・・、
せっかくですからそれらを思い描きながら噛み締めていただきたいと思うんです。
パンという形になったものを手に取り、味わっていただき、
食べるということで完結させていただきたいんです。
シュクレの夏休み前の15、16の2日間、美瑛産の小麦を使ったパンを作ります。
通常、僕は粉を単体で使うことはしませんが、今回は「背景」を大事にしたいんです。
通常のシュクレのパンに比べれば淡く弱いパンになると思いますが、
あえて美瑛産単体でシンプルに作らせていただきます。
美味しい不味いもいいですが、できれば今回見た景色を心に思い浮かべ、
パンが大地から生まれた「食糧」であることを感じながら食べていただければ幸いです。
支える大地があり、陽射しを降り注ぐ太陽があり、雨となり潤す水があり、
パンを焼くための火を燃やす空気があり、
それらの偉大な自然と同じく必要不可欠なのが、「ブーランジェ」なんです
自然は小麦は育てれてもパンは作れませんからね。
でも、僕らも含めて、どれが欠けてもパンにはならないんです。
僕らはこうした自然の偉大なリレーによって生まれた小麦をパンという食糧に変える、
最後のバトンを受け持つ位置にいる職人なんです。
大地、太陽、水、空気・・・、それらに負けない仕事をする責任があるんです。
そしてパンという食糧は、それらを表現する食べ物であるべきなんです。
たくさんの命をいただき育った小麦を、民衆の命を支えるものに変える仕事。
それがBoulangeであり、その昔、聖職であった誇るべき仕事なんです。

そういえば、「なんか書いて」と言われて、
プチメックさんの一番奥の壁にフランス語で上記のようなことを書かせていただいたのは、
まだシュクレクールをオープンする前やったんちゃうかな・・・?
間違ったら申し訳ないので、ちゃんと下書きして行ったのを思い出します。
消されてたりして(笑)

さ、なんだかんだで札幌まで電車で帰ることに。
意外と近いんですね。30分くらいかな?
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なかなかこういう一日は過ごせませんよね。
貴重な時間を過ごさせていただきました。
北海道も残すとこ、あと一日。
最終日は晴れたので、素晴らしい景色をお届けできると思います。
お楽しみに!
by monsieur-enfant | 2009-08-07 02:46 | 北の国から