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なないろめがね

想いに溢れた空間の中の、殺伐とした風景と交わらない想い

先日、恩師のお店の5周年に、でかパンとアントルメを持って顔を出しにいきました。
想いに溢れた空間の中の、殺伐とした風景と交わらない想い_c0116714_034943.jpg

うちと同じ5周年。
お互い厨房で一人の時には毎日電話してました。
夜中の1時、2時に、「まだ終わんないんですか~」って(笑)
恩師であり、父のようでもあり、兄のようでもあり、
数少ない僕を応援してくれてる理解者です。

ま、今回はそんなこと書きたいんじゃなくて・・・・書こうか迷ったんですが・・・・
前回も少しお客さんのこと書いたので、具体的に述べれる良い機会だと思って、
頑張って冷静に書きますね(笑)

あのね、お店とお客さんって、僕は何度も言うように「人」と「人」だと思うんです。
そこに会話があろうがなかろうが、繋がってる部分は「人」の部分だと思うんです。
って、何回も言ってるんですから愛のない人は来ないでくださいってば。
僕はね、ここでお話させてもらってるのは、賛同を得るためなんかじゃありません。
だったらもっと当たり障りない小学生の日記のような文で終わってます。
でも一つは表現者の端くれであるということ。
上手な文や綺麗な文は書けませんが、伝え表現する文くらいは書けないといけません。
パン屋である前に、僕らは表現者なのですから。
二つ目ですが、さっきも書きましたが、賛同を得るために主張してるんじゃないんです。
ちゃんと選択してもらうために書いてるんです。
「僕はこんな人ですよ」「こんな職人ですよ」
「こんなことが嫌で、こんなことが好きなんです」
合わない人に、合わないとわかってもらうには、はっきり書かないとダメなんです。
そして、合わない人には無駄足を踏んで欲しくないし、
不愉快になるんで来ないでほしいんです。
お店には「千客万来」のお店もあるでしょう。
でも、そうじゃない店もあるんですよ。
借金背負って、それでも売上よりも自分のやりたいことを優先し、
それを伝えることに心血を注ぎ、こうして5年やってきてるんです。
ついでに寄れないような、既に人通りのあるような、そんな場所から離れてるのも、
好きな方だけ、理解していただいてる方だけ来てくれたらいいと思ってのこと。
店や商品をモノとしか見れず、その背後にある想いやメッセージを聞こうとしない方は、
どうぞよその店に行ってください。ホントによろしくお願いします。
好きなお店があるなら、貴重なお金を使わずに、
どうぞ好きなお店で使ってやってください。それで良いじゃないですか。
例えお客さんが少なくなったとしても、
結果として残ってくださった方の為にパンを焼けるなんて、こんな幸せなことありません。

こんなお客さんがおられました。
僕の嫌いなことフルコースやってくれたので書きますね。
遠方からのご来店らしく、なんて言うんですか、骨だけのスーツケースみたいな、
そんなものを引き連れてのご来店でした。
かなり多くの数をご予約いただいてました。
「こりゃ、持たれへんやろ・・・・」ってぐらいの量です。
うちはご予約のお客さんは、その分をすぐお渡しできるよう袋に入れておくんですが、
お会計の時に、「一つずつ入れてください」と。
全部、袋から出して、一つずつ入れなおさせていただきました。
そしてお会計の後、レジの横でレシートとパンを照会し始めました。
とりあえず他のお客さんがお会計できませんので、広いとこでお願いしました。
それが終わると次は「荷づくり」です。
入れた袋から出し、自分の持ってきた台車にダンボールをセットし、
見てるこっちが痛々しくなるくらいガッサガサ詰めていきます。
その後、「ここで食べていいですか?」と聞かれたので、「どうぞ」と伝えると、
「サラダ持って来たんですけど一緒に食べていいですか?」
さすがに無理に決まってるやろ!!(笑)

あのね・・・パンの袋くらい一個一個入れますよ。
レシートも、うちもたまに打ち間違えてお客さんにご迷惑おかけすることもあります。
確認されても嫌な気はしません。
ですが他のお客さんに迷惑にならないとこでお願いします。
そう言う方は、いろいろ自分の中にルールがあるのでしょう。
気が済むように詰めかえてもらって構いません。
ただ、それ、モノじゃないんですよ。
作ってる人間や、売ってる人間が見てるんですよ。
ってか、パンが好きだから買いに来て下さってるんじゃないんですか?
パンが好きだから、わざわざ名古屋から来ていただいてるんじゃないんですか?
「好き」ってなんですか?「パンが好き」って、食べれればいいんですか?
おそらく頼まれての沢山のパンだったはず。
みんなの分も引き受けるようなお優しい方に、
遠方からわざわざ来ていただいて沢山買っていただいたお客さんに、
なんで気持ち良く「ありがとうございました!」と言わせてくれないんでしょうか・・・。

出ていかれる時に、チラッと見えたんですが、
まだ余裕があったんですよね~・・・・、その台車に。
嫌な予感は的中、僕の恩師のお店にも来られました(笑)
冒頭に書いたように、その日は恩師のお店の5周年の日。
初めての百貨店での催事でフラフラにも関わらず、定休日の日曜にお店を開けました。
もちろん本来定休日です。普通の営業ではありません。
定休日でも足を運んでくれるお客さんに、5年間の感謝を込めて、
3種ほどの異なるセットを作り、いつも使ってないフロアで飲み物を振る舞う一日でした。
でも、そういうのって、お客さんにとってはただのイベントなんですかねぇ・・・。
限定商品が出るからってだけで来られるんですかねぇ・・・・。
シェフの想いや心意気、この日の意味や意義を、
はたして何人のお客さんが感じてくれてたんでしょう・・・・。
僕は厨房に立って何名かのお客さんが来店されるのを見てたんですが、
見てる間はほぼ100%、「5周年、おめでとうございます」とか、
シェフに労をねぎらう言葉をかけた方はいませんでした。
一人一人、真っ先に「いらっしゃいませ」と声をかけてたにも関わらず。
中には、この日のセットを「お得ですか?」と聞いてきた方もいるとか。
得とか得じゃないとか、そういう日じゃないでしょ!?
僕も、こういうことが原因で3年続けた周年のイベントを4年目は止めました。
普段でもキツイのに、それにも増した労働を課し、ただ喜んでいただきたくて催し、
結果「限定パンはどれですか!?」「限定パン、ゲットしました!!」
心が寒くなり、強烈な疲れと虚無感に襲われ続けた3年間。
それでも一部のお客さんの言葉に、
「やって良かったんだ。意味はあったんだ」と思わせていただきましたが、
4年目は、自分を奮い立たせることは出来ませんでした。
5年目の今年、うちもやりました。
「5周年やし・・・」と、自分を納得させて。
昨年やらなかったことを、どう受け止めていただけてるのか・・・という思いもありましたし。
結局、対して変わりませんでした。
公の場で営業している以上、仕方がないんだと諦めることはできました。
この日だけは、僕らが喜んでもらうことは基本ですが、
お客さんからの言葉もあってしかりやと思ってましたが、
やはり、恩師のお店も同じでした。
もちろん全てのお客さんではありません・・・が、実際過半数です。

催事でほとんど寝れず、それでも寝ずに頑張った恩師の疲れ果てた顔。
そこから漏れる、「こんなもんだよね・・・」の言葉。辛すぎました。

そこに!!はい、なにやら引きずって入ってきました。
そう、さっきシュクレに来て下さってた方です。
・・・・・いったい何セット買われてるんやろ・・・。
少なくとも朝シュクレで買っていただいた量の、軽く5倍はあったでしょうか。
先に書きましたが、うちの時点で「持てるんかな・・・・」と思うくらいでした。
そこからまた「荷づくり」が始まります。
目を覆う光景でした。うちのパンは、さらにさらに詰め込まれていきます。
だって、ここで買ったパンが入る場所がないんですもん。
目の前で一旦出される見覚えのあるシュクレの袋。
それがまたガッサガサ、淡々と詰め込まれていくわけです。
見てるこっちはたまりません・・・。心が荒みます・・・・。
自分の子供が目の前でハイエナに食べられてるような心境です。
愛の欠片もありません。買えたことに満足、食べた事実に満足。
そんなやり取りをしたくてパンを作ってるんじゃないんですけどね・・・・。
ふと厨房にいる僕を見つけて歩み寄ってきたその方は、おもむろに、
「どっかに公衆電話ありませんか?」
って、知らんし!!(笑)

その後、その逆の少数派の方々と少しお話ができ、多少癒されて帰りましたが、
最近、昔ほど見なくなったとはいえ、なんとも後味の悪い光景でした。
こんな関係をお客さんに望むのは、
単なる作り手の思い上がりや独りよがりなんやろうか・・・、
そう考えさせられる一日でした。
by monsieur-enfant | 2009-09-29 01:09 | とりとめなく・・