2009年 10月 04日
孤高の領域へ
岸部から市内に出ると、いつもキョロキョロしていまいます。
いつもと違う景色は、好奇心を刺激するには十分な要素です。
そして、いつもと違う「非日常」を味わいに、肥後橋までテクテク、キョロキョロ。
「レストラン ハジメ」
ミシュラン前の駆け込みの予約の電話が1日100件近くある日もあるそう。
でもその「とりあえず」的のおかげで、心無いキャンセルも多発してるみたい。
ミシュランの発売により、海外のお客さんも増えた東京のレストランでは、
クレジットカードの番号登録による予約が珍しくなくなってるようです。
そうでもしなければキャンセル料だって振り込んでくれないお客さんもいるわけで。
一部の心無いお客さんの為に、理解あるお客さんに規約を押し付け、
気軽に来てもらえなくなることを米田シェフは懸念してますが、
ある種、仕方のない措置なのかも知れませんね。
自分の店やスタッフも、シェフは守らなくてはいけませんから。
ま、僕はと言えば、そのキャンセルの恩恵に預かっての来店なんですけどね。
喜んでいいのやら・・・。
席に着くと、何やらお隣から話し声が・・・。「シュクレクール・・」がホニャララ。
広げないでもいいのに話を広げるから、
恥ずかしくて黙ってたんですが名乗らざるを得ない状況に。
どうも前日にシュクレに来て下さってた御夫婦でした。
めちゃくちゃ良い感じのナイスミドル。
香川から車で来て、僕のブログを見てくださってたらしく、
「あなたが勧めるお店だから間違いないと思って」と嬉しい言葉。
香川にはこういうお店はないし、僕のブログを頼りに大阪巡り・・・かと思いきや、
とんでもない!話の端々に「ミッシェル・・・」やら「アルぺージュ・・・」やら出てくるので
聞いてみると、フランス料理が好きでフランス語を勉強してるくらい大好きらしく、
パリに行った時の、三ツ星のアルぺージュに行ったお話をサラッとされてたわけで・・・、
って、僕のブログの情報なんていらんし!(笑)
もうすでに「Hajime」の名前も小耳には挟んでらしたんでしょうね。
debut カボチャ トリュフ ノワゼット
わ!静かなスタートかと思いきや、優しいカボチャの隙間からエロエロのトリュフ臭が!
印象には残るけどお腹には残らない。スターターとしては最高の一品。
oeuf
卵のいろんな表情を引き出すために桃のピュレや、エピス風味のクリーム、
アーモンドのローストが入ってますが、ヴィネガーが下のほうにあるので、
勿体無いですが思い切って混ぜちゃったほうが良いですね。
印象がガラッと変わりますから。
シャンパンの後はなんだったけ・・・。
あ、アルザスのリースリングやったかな。それ以上の知識はありません。
お昼の最初の小さなパンは、バゲットと同じ生地を使ってます。
オリーブオイルに2種のバターを添えて。
crevette
これ、すごかった!「天使の海老」は何度か他店でもいただきましたが、
その「天使っぷり」には「?」だったんですが、これはまさに天使!
真骨頂の繊細な火入れも如何なく発揮。繊細といっても「弱い」ということではなく、
頭の部分は何とも香ばしくメリハリのついた一皿。
mineral
言わずと知れたスペシャリテ。
シェフの自然への敬意も感じられる、説明不要の一皿。
「命」そして「敬意」さらに「歓喜」。それらが必然の繋がりの中で表現されています。
あ、これはもう・・・マジで忘れた(笑)
mer
食感の対比を表現した一皿。それはもちろん皮目と身の部分。
・・・素晴らしいの一言。ちょっと完全に図抜けて来てますね。
チンゲンサイは低気圧でオリーブオイルをゆっくり浸透させてるよう。
生を上回る「パリッと感」は、思わず楽しくなり頬も緩みます。
パンのおかわりは、バゲットよりしっかりめのラミジャンの生地。
porc
完全無農薬の天草梅肉豚。
もういないだろうと思っても、どんどん知らない豚がでてきますね。
皮目の焼き目も重要なアクセント。豚の甘味にマンゴーのソースの酸味が好相性。
4時間かけて焼きあげます。
晴天のランチですし、ボジョレーで賑やかに。
olive
オリーブを様々な形で味わいます。ソルべ、乾燥、ソース。
やもするとアミューズに引き戻されてしまいそうな構成ですが、
ちゃんとアヴァン・デセールになってます。見事なさじ加減。
peche
これも凄い!久しぶりにデセールで唸った!
比較は嫌いなのでしたくないのですが、
ミッシェル・ブラスの「クーラン」の進化系・・・というか、
このコントラストと完成度は比較にならない!
クーランのスーパーサイヤ人3と言えばわかり・・・・にくいですね。
鏡割りのように「サクッ」と!あぁ、めでたい!(笑)
黒糖の生地の中に、白桃が少し温められて隠されてます。
その温度でキルシュのアイスが程良く溶けるそのタイミングの絶妙さ。
ミニャもランチでは十分な量。あ、写ってないですが、もう1種類あります。
夏の終わりですからハイビスカスティーな気分。
お隣のナイスミドル御夫妻が帰り際、
「車で来てワインが飲めないのが残念だったけど、
君が飲んでるのを見て飲んだ気になってたよ」って。
う~~、ベタなワインばっかりでスイマセン!!(笑)
とても静かで、上品で、ユーモアもあって微笑ましくて・・・・。
「またお会いできたらいいなぁ・・・。
Hajimeも、こんなお客さんに愛されたら幸せやろなぁ・・・。」
そう思いながら、外まで見送りに行きました。
さてさて、米田シェフの料理なんですが・・・・
途中で書きましたが、ちょっと図抜けて来てます。
今の店の状況では、ホントよくやってる・・・というよりは、
よくこれだけやれてるな・・・・ってのが実際のところ。
スタッフの成長、充実なくして、レストランはまわせません。
もう少しシェフの身体や時間に余裕が生まれれば、
また違ったお皿も見せてくれるんじゃないでしょうか。
このストイックで美しい料理に、「遊びの余地」みたいなのが生まれてくると・・・、
ってのは、先々の楽しみとしましょう。
でも前回・・・そう2回目の来店で感じた「厚み」ってのは、
今回もひしひしと伝わってきました。
コース全体の「厚み」、一皿一皿の「厚み」。
1回目の来店時に感じなったこれらが、2度続けて感じられました。
これらは圧倒的な想いや労力、思考、時間、
それらを全て注ぎ込んだ毎日を繰り返したものだけが得られる「厚み」。
そう、一枚一枚意味のある日々を積み重ねて生まれた厚みは、
もう決してシェフの手から無くなることのない財産やと思います。
その「厚み」を、この短期間で得ることが、どれだけ大変なことか。
ただ積み重ねるだけじゃだめなんです。
ただ毎日を過ごすだけじゃだめなんです。
「何を積み重ねたか」が、どれほどの厚みを生むのかにかかってきます。
でも彼は、まだ積み重ねてます。
決して自分に課すものを軽くせず、ただひたすら上に上に・・・。
だから図抜けてくるんです。だからストレスで蕁麻疹に襲われるんです(笑)
もうすぐその生き様に、三つのご褒美が授けられることでしょう。
誰がなんと言おうが、その価値は自分の中で噛みしめるべき栄誉やと思います。
また様々な問題も生まれるでしょうが、
彼が越えれない壁なら、誰も越えれないとさえ思えます。
時間がいくらかかっても、たとえ何年費やすことになったとしても、
米田シェフの「行き先」「を、ずっと見守り、応援していきたいなぁ・・・と思います。
1ファンとして、この先ずっと。
by monsieur-enfant
| 2009-10-04 02:49
| HAJIME