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なないろめがね

たかがパン。されどパン。

昨日、今日は、寒さのせいもあり、割と穏やかなお客さんの入り。
久々に棚越しに声をかけてみたり、
横断歩道を一目散に駆け寄ってくる子供の姿を見たり、
なんだか久しぶりに「パン屋さんって良いなぁ・・・」って思いました。
闇雲にただ焼き続けるだけの日々ではなく、
ちゃんとお客さんが買っていかれたのを見て補充できる喜び。
パンがちゃんと並んでるので、お客さんの選ぶ表情もよく見える。
とりあえずあるものしか買う選択肢がない時は、
本当に欲しくて買ってもらってるのかさえ定かではないわけで。
楽しい。
久々に楽しい。
「やっぱりうちはこういう店なんだよなぁ・・・」って再確認しました。


そんな中、金沢から某お鮨屋さん一家が遊びに来てくれました。
一瞬目を疑いましたが、間違いありません。・・・・ちょっと泣きそうになりました。
実はまだアップ出来てないだけで、今年すでに2度訪問してるお店。
お世話になってばかりなので、食べるのかも定かでないパンを送らせてもらったんです。
「パン屋さんだとは思わなかった」って言ってましたけど、
ま、お鮨食べに金沢まで行くパン屋はそういないでしょうけどね(笑)。
風貌は昔から「職業不明」って言われてましたし・・・。
先日もね、横浜某イタリアンさんから全スタッフの引き伸ばし写真が送られてきました。
・・・これもまだアップ出来てないんですが、
今年の訪問時のお礼に送らせていただいたパンのお礼にと、
全員がパンの小袋を持っての記念撮影。さすが、やることが演出染みてます(笑)

でもね、こうして気持ちで表わしてくれるのって本当に嬉しいもんですよね。
僕、パン以外何も出来ないんで、想いをいただいたお店にはパンを送るんです。
だいたい名刺も持ち合わせてませんし、名乗るなんてことももちろんしません。
「・・・誰?」ってなるの目に見えてますから(笑)、恥ずかしすぎますよね。
職業も言いません。だって、一お客として純粋に楽しみに来てるんですもん。
でも何度か足を運ぶうちに、
それこれそういう風な話の流れになってしまった場合に限ってですがパンを送るんです。
だって、自分は食べさせてもらってるのにフェアじゃないでしょ?
それに、御託を並べるより食べてもらうほうが手っ取り早い。
「はい・・・、パン作ってます」とだけ言って、後で身分証明として送るんです。
それで僕を分かってもらえると思ってますので。良かれ悪かれ・・・ね。

今回、しみじみ思いましたけど、
この「pain」のおかげで、僕は多くの方と繋がらしていただくことが出来てます。
シュクレクールをやってなきゃ有り得なかった大切な出会いもたくさんあります。
面識のない方に、「逢ってみたい」と呼び出されたこともありました(笑)。
沢山の料理人と繋げてくれたのも、シュクレのパン。
もちろんお客さんとこうして繋がっていられるのも、
間を取り持つシュクレのパンのおかげ。
金沢から足を運んでいただいたのも、
僕の代わりにお邪魔させてもらったパンたちが、一生懸命伝えてくれたから。
横浜からの便りもそう。パンが僕への信頼を生んでくれたわけです。

僕、パン以外って、野球しか長く続いたものないんですよね。
だからと言って、この岸部の地にブルペン作って、
へなちょこ球でピッチングしてたって、ガキんちょ数人集めるのがやっとです。
それがね、パンを作ったおかげで、こんなに多くの方と繋がっていられる。
パンを作るから皆さん足を運んでいただけるわけで、
作らなかったらホントにただの一人ぼっちの図体のでかいオッサンです(笑)
そう思うとね、僕にとってパンはある意味「魔法」みたいなもんなんですよね。
友達も劇的に少なく、これといって取り柄のない自分と多くの人を繋いでくれる魔法。

なんだかね、「神様、ありがとう・・・」ですよね。
それから、うちのパンたちにも「ありがとう」ですよね。

たかがパンですが、僕にとっては「されどパン」。
もちろん「されど」の部分は胸に秘め、
「たかが」を覆す為に日々頑張って精進するわけなんですが、
自己表現も、人との繋がりも、僕の場合やっぱりパンに助けてもらってます。
でも不思議ですね。「たかが」なとこもわかりますから。所詮パンですから。
でも媒体は何であれ、「たかが」と思えば「たかが」になってしまうし、
「されど」と想いを込めれば、それは「されど」になるもんなんですよね。
職業に優劣はなく、あるのは本人の心の優劣のみ。
だったらこれだけ自分を育ててくれた「ブーランジェ」という職業、
感謝して、胸張って、生きていこうと思います。
by monsieur-enfant | 2010-03-30 21:46 | シュクレクール