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なないろめがね

セレモニー

さてさて、
刻はまた遡り、2月の末日のこと。
いろんなことが起こった年末年始に輪をかけて、
受け止めきれないことなどがあったころ・・・。
かなり病んでたころですね(笑)

かねてからずっと「いつか」と思ってたレストランがありました。
僕がまだフランスに行く前など、同業者からフランスの情報もなく、
あるのは雑誌や書籍化されてるキュイジニエやパティシエからの情報くらい。
行ってる同業と言えば、集団でパン屋さんばかり回るツアーや、
表面的な知識だけ携えて、キュイッソンの解釈もできず白い焼き色のパンを焼き、
わざわざ本質を理解できてない無知をひけらかすような方々ばかりでしたから。
パン業界の意識レベルの低さを早くから痛感し、
異業種に追いつけ追い越せで頑張っては来ましたが、
ふと周りを見渡すと、「そうでもない」人が圧倒的に多いもので(笑)
結局、どの業界でもそうですが、
やってるやつはやってるし、やってないやつはやってないんです。
シンプルに、ただそれだけのことなんですよね。

話は戻りまして、そんなシェフたちの熱い体験談を読んでは、
「すげえなぁ・・・カッコいいなぁ・・・」って、
その生きざまに惚れ込み、憧れを募らせていたものです。
「自分もこういう風に前のめりで生きてみたい」ってね。

書くと長くなるので省きますが、
僕にも渡仏のチャンスが巡ってきました。
27の秋でした。
フランスに向かう前、空港で手にした雑誌がこれ。
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たまたまですが記事の内容が、
渡仏したシェフの特集や、フランス時代の話の座談会など。
読み漁りましたね。
滞在中も、苦しくなると読み返し読み返し、ホントに読み漁りました。
行く道中の飛行機で感じたこともあり、
着いて闇雲に頑張ってるときに支えてもらったこともあり、
後半になって「こういうことか」とわかってきたこともあり、
ホントにリアルに為になる内容でした。
僕にはめちゃくちゃタイムリーでしたね。
中でも印象に残ってるのは、
「フランス人の2倍やって同等、3倍やってやっとフランス人を使えるようになる」
って一文。実際、言い得て妙でした。
「まだまだ!まだまだ!3倍やらなきゃ!こいつら使うこともできずに帰れるか!」
そう思いながら必死に闘ってたのを思い出します。

帰国後、やはり憧れは支えとなって残るもので、
面識もないのに勝手に「裏切ったらあかん!」って、
自分のスタイルを貫くことに不安になるたび思っていました(笑)
このころ、まだ可愛いとこあったんですよ(笑)

その中に、自分の30歳の区切りとして行くことに決めてた店がありました。
フランスでお金を使いはたして帰国した当時の僕には、
とてもじゃないですが敷居が高く、国内であまり食べ歩きもしてなかったのも手伝って、
どうしても足が向かなかったんです。イメージが膨らみ過ぎてたのもありましたね(笑)
ですので、ご褒美としてもですが、自分を試す意味もありました。
30歳という区切りの歳に、こういう店で自分は何を感じれるのか、
30歳の男性としての嗜みや立ち居振る舞いがこなせてるのか、などなど。
でも、ちょうど30歳って、29でオープンしたシュクレクールの、
オープン後1カ月で迎えた歳だったんです。
・・・無理でした(笑)
死にそうでしたもん、マジで。ってか、死にかけてましたもん。
とてもじゃないですけど体力的時間的精神的金銭的にそんな余裕ありませんでした・・・。

それから時が流れ、店が落ち着き始めると、
少しずつですが食事にも出れるようになりました。
でも結局そのお店には行けませんでした。
正直、まぁ、いろいろわかるようになってきましたので・・・ってなとこもありましたが、
やっぱりどこか僕にとっては特別なままだったんですよね・・・。
特別なまま、終わらせようかとも思ってましたが、
今、もう一度区切りのセレモニーの場として使わせていただきたく訪ねました。
一度に押し寄せた様々なことに飲み込まれそうになってた2月の末日のことでした。
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中央区 高麗橋 「ラ・べカス」
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いや、違うんです。
今日は感想とかいいんです。
思うところもありますが、長々と先述したように、
ここはある意味特別で、この日もある意味特別で、
そういう意味で、やっぱりこれからも特別で・・・。
ですから・・・そう、今日という日がここに刻まれただけで、それでいいんです。
あえて刻んだ記憶を思い出しに来ることはないかもしれませんが、
良い時間を良い空間にて過ごさせていただきました。


なにげない一言で豹変してしまう感情もあれば、
決定的な一言ですら消化できないこともあります。
何も起こってないのに諦めてしまう時もあるのに、
もうどうしようもない現実ですら受け止めきれない時もあります。
心は・・・ホントに我儘ですよね。
頭で理解する前に折れてしまう時もあるくせに、
頭が理解してるのに分かってくれない時だってあります。
「もう、どうしようもないんだってば・・・」
そう何度嗜めても、心は「聞く耳持たず」って(笑)
それ、余計辛くなっちゃいますから・・・。

あったことが無かったことになる境界線。
あったものが無いものになる一瞬の刹那。
流れてきた時間が急に止まった次の一歩を、
いつどんなきっかけで踏み出せば良いのでしょう。
未だ色つきの想い出が褪せていくのに、幾つの季節を巡ればよいのでしょう・・・。

この日はいろんな感情を有無を言わさず区切る儀式の日。
受け入れれるとか理解出来るとかでなく、現実を丸のみして、
自分が「今」だと思っていたことを「既に過去」のことだと心に突き付け封をする日。
振り返り顧みることのないよう、ただ明日を見て歩けるよう、
そしてまた笑って手を振れるよう・・・。
by monsieur-enfant | 2010-05-28 01:46 | ラ べカス