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なないろめがね

純シチリア。

先の記事のお店を出る際に、あるお店の名前が出てきました。
そのお店は、同じように郊外にて強い想いを体現したお店を営んでいます。
そう言えば彼が京都で働いてた際、
「よくアルザスに行ってました」って言ってたような。
やっぱり想いは繋がるんですね。
好きなお店のシェフの口から、好きなお店のシェフの名前が出てくるって、
唐突でびっくりしましたが、なんだか嬉しいもんです。
そのお店は、ここ、茨木にあります。
「イル ピスタッキオ」
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年末年始にシチリアに里帰りし、二ヶ月間店を閉めて、
改めてシチリアに浸かってきた檜森シェフ。
その帰国の際の発表には驚いたというか感心したというか(こちら)。
僕にとっては今まででも十分シチリアでした。
茨木だから・・・ではなく、贔屓目抜きで想いはガンガン伝わってきましたし、
お皿を通じて、シチリアの情景まで脳裏に浮かび上がらせてもらってました。
そこから尚踏み込んでいくことは、簡単なようで簡単ではありません。
おそらくシェフの中のどっかに燻ってた部分があって、
そこの箍が、シチリアに行った際に外れたんでしょうね。
より真摯にシチリア料理に向き合う為、
よりリアルなシチリアを感じてもらう為の、リミッター解除だと捉えています。


そんなピスタッキさん、「行かなきゃ!」って思ってはいましたが、
結局半年近く経ってしまいました。先日、やっと行ってきました。
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ワインはお任せ。
シチリアのワインは爽やかで香りも良く、テーブルを華やげてくれます。
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マグロのからすみのブルスケッタ  
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帆立貝のケイパーペーストあえ
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これなんだったっけ・・・
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タコと新じゃがのサラダ
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生しらす
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マグロとトマトのカルパッチョ
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いわしのベッカフィーコ
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つぶ貝
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ラッキーなことに、BBQの際に食べそびれた物も含まれてた前菜の品々。
皿の上の力の入れ方と抜き方のバランスが絶妙。
肩肘張ってては所詮「日本人が現地の真似をしようとした」止まり。
つまり「再現」から「表現」の境は、
何を学んで来たかより、何を感じてきたかに尽きると思います。
お皿の中に、シェフの見てきた「料理」だけではなく、
その料理を食べている場の雰囲気や空気感まで盛り付けれて、
初めてそれは「再現」から「表現」へと移ろうんじゃないでしょうか。

さ、進行に合わせてワインも変わります。
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テンション上がって食いついてしまい、
どんなだったか忘れたパスタ・・・。
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魚介のフリットのクスクス添え
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スープをたっぷりかけていただきます。
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魚介のグリル
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この辺りになると大分気持ちよくなってきちゃってます。
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男の料理!港の料理!潮の匂いがプンプンしますね!

さぁ、ここで前回発見した「いつもの」。
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ピスタチオのジェラートにアーモンドのお酒を注いだ組み合わせですが、
「いつもの」認定してくれてたことを、すっかり忘れてました(笑)
「え~っと・・・」と迷ってると、「『いつもの』ありますよ」とシェフ。
「あ、じゃ、じゃあ、いつもので・・・」
もっとスマートに「いつもの」を言える大人に、私はなりたい・・・。

山や森にあるトラットリアは必然的に魚料理はなく、
海沿いのトラットリアにも必然的に肉料理はほとんどないわけです。
それを「手に入るから」と提供してることに、
どこかシェフは違和感を感じてたんでしょうね。
そこで10月~3月は山のシチリア(野菜とお肉料理のみ)、
4月~9月は海のシチリア(魚料理のみ)と分けたんでしょう。
それは現地シチリアと同じ空気を提供したかったから。
という訳で、今は肉を食べたくても肉は出ません。
それを「不自由」だとか「店本意」だとか思いますか?
それは違います。制限されるのが不自由でも不親切でもありません。
より正確な表現をしてくれることで、
客側は茨木に居ながらにしてシチリアを体験できるという自由を手にします。
そして、それを強く願っての制約は「親切」以外何ものでもないと思いませんか?
そして何より、客側がささやかな制約を受け入れることによって、
シェフの心がどれほど解放されて料理を作れてるかということ。
僕なら、店の想いを理解せず自分本意の注文をするより、
その時間はシェフに委ねて、最善の料理を味わうほうが有意義だと感じます。
別に「昔は感じてたけど」というわけではありませんが(笑)、
今のピスタッキオには迷いがありません。
健やかで大らかで伸びやかな彼の料理は、
降り注ぐ陽射しが反射するシチリアの海のように、キラキラしていました。

さ、もう一つ「メニュー改正」でショッキングだったのが、
「食後の飲み物 エスプレッソに統一」だったんです。
料理に関しては、相当偏ったお店は珍しくありません。
でも、ここを思いきったお店を僕は初めて知りました(笑)
以前あったカッフェラッテ、カップッチーノ、カッフェマッキアート、紅茶、
全部ありません。それらはシチリアでは朝にしか飲まないからです。
その代わり、「エスプレッソの美味しい飲み方、伝えていきたいです」という、
「知ってもらいたい」という想いがあります。
あ、「苦手」って方用には、自家製リモナータがあるようです。
ですので、「エスプレッソしかないの!?」ではなく、
エスプレッソの美味しい飲み方に触れてみて下さい。
「何が正しい」みたいなのは正直ありません。
本人の飲みたいように好きなように、美味しく飲めばいいんです。
でも、ここはイル ピスタッキオ。シチリアを掲げたお店。
ならば、そこに委ねる楽しみを分かち合いましょう。
自分勝手になら、いつでもどこでも出来ますから。
でも、巷に溢れてる「エスプレッソ」、知ってるようで案外知らないもんでもあります。
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・・・・・・・・・・・「あれ?なんも言ってくれないの?」と待つ僕に、
「いや、言おうか言わまいか迷ってたんです」とシェフ。
このタイムラグが、もうアウト。エスプレッソは鮮度が大事。
注がれたら砂糖を2,3個投入し、あまり混ぜずにクイッと行きましょう。
苦みの後に、底の砂糖の甘味を楽しむイメージ・・・って、
檜森先生!合格ですか!?(笑)

思い切った宣言をして始まった2012年のピスタッキオ。
「どんな変化をしてるんだろう・・・」と思って行きましたが、
ネガティブな部分は一切ありませんでした。
今まで通り、気楽に料理を楽しむ空間。押し付けがましさなど皆無です。
それより、そこまでシチリアに惚れこみ没頭できるシェフを羨ましく思います。
先に書いたアルザス、「色濃い店繋がり」のバトンを受ける次の記事のお店。
特定の地域に入れ込めば入れ込むほど、より濃度は濃くなります。
僕には「好きな地域」はあれど、暮らしたのはパリだけ。
もっと色濃くなりたい。もっともっとその想いや空気感を共有したい。
シュクレ、モンテベロ、そして今後の展開も含めて、
パン好きさんや、お菓子好きさんだけを満足させたいわけじゃありません。
フランスに思い入れのある方が来てくれた時、
膝から崩れ落ちるような店がしたい。
そしてその光景を見て僕も崩れ落ちたい(笑)

皆さん、いつの日か店で崩れあいましょう!頑張るぞぉ!
by monsieur-enfant | 2012-06-27 23:35 | イル ピスタッキオ