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なないろめがね

存在意義。

まだパリは夜が遅い。

20時なんて、夕方の感覚。

なので、なんだか朝も遅い。

スカッとした朝ではなく、ゆっくり気だるそうに起きあがってくる朝。
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その気だるさの中、日本では考えられないくらい元気に歩く僕。
小刻みに、勢いよく上る階段をふと見ると、
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「僕は、夏の夜明けを抱きしめた」 (直訳ね)
きゅ~~~ん!
と来るやん!なんなん、このイカした落書き。
エスプレッソの揺らぐ湯気の向こう側に淡く覗くセンチメンタル。
う~~ん、パリやわ。

「うんうん、パリやわ・・・、うん、あれはパリやわ・・・」と、
しつこいくらい余韻に浸りながら、僕は愛すべき場所を目指す。

まだ眠くて機嫌がよろしくなさそうな薄曇りの空の下、
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心の友に会いに来た。
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表にパトカーが停まってるが、なんかやらかしたわけではない。
僕が店に着くのと入れ替えに、嬉しそうにパンを抱えた警官が出てきた。
微笑ましい。勤務中だろうが、構わない。腹が減っては戦は出来ぬ。
「デュ パン エデジデ」
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改めて、大きく息を吸い込む。
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ここは特別な場所。
毎日走りまわった学び舎が廃校になってしまったような僕の中に、
再びパリで「帰る場所」を提供してくれた特別な存在。
パリ滞在中は、ほぼ毎朝買いに来る。
そして、パンを抱えてサンマルタンに腰を下ろす。
知らぬ間に出来た、僕のパリでのルーティン。
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3年前には無かった、小洒落たパン袋。
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滅っっっ多なことじゃ、手提げなどくれない。
単品購入なら小袋も付かず、くるんでハイ、で終わり。
岸部でやったら怒られるんやろなぁ・・・。
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この後、待ち合わせもあるので簡単に朝食を済ます・・・が、
いちぢくの凝縮感がすごい!エグイくらいの濃度。
もっと大きく淡く瑞々しい日本のいちぢくとは別物。
一枚食べきったら胸やけするくらい濃い。
この旅の最終日、これを5枚買って、
機内持ち込みでグチャグチャになりながら持ち帰りました(笑)
食べてもらいたかったのは単純且つ明確な素材の力の違い。
何か感じてくれたのだろうか・・・。

・・・・とか思ってたら、時間がかなりヤバくなってまして。
連絡手段が無いので、あまり遅れると大迷惑をかけてしまいます。
・・・・えっと、中迷惑くらいで済んだかな?(笑)
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「あ・・・・」
メトロから顔を出して、やっとピンときました。
待ち合わせ場所は、僕が働いてた時の通勤路。
今回は歩こうか歩くまいか迷ってましたが、
こんな形で「rue Monge」と再会することになろうとは。
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「あ!来た来た!」
スタッフにも定かではありませんし、
スタッフ以外に慕われることなんてない尚更無い僕ですが、
なぜかやたらと慕ってくれる、京都某パティスリーチームと合流。
ほぼ手ぶらでパリに乗り込んだ僕を相当心配してくれてたそうで、
会えたことをとても喜んで・・・というか安心してくれました。

そこから歩いて数分。
そのパティスリーのシェフのお気に入りの場所があると連れて来られたのは、
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散々通った道の傍らに、こんな建物があったなんて知りませんでした。
「ラ モスケ ドゥ パリ」
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5区、カルティエ・ラタンにある、パリ最大のイスラム寺院。
一歩足を踏み入れると、そこには何とも開放的なテラスが。
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ここでは伝統的なイスラム料理や、
ハマムと呼ばれるトルコ式サウナも併設されてるみたい。
ちょっと雰囲気の違う体験をしてみるのも良いかも知れませんね。

待ち合わせからバタバタと移動。
ろくに顔を合わせて挨拶も出来てなかったので、テラス席に腰掛ける。
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運ばれて来たのは、シェフが大好きだというミントティー。
温かく、そして柔らかく甘い。
す~~っとミントの香りが抜けて、とてもリラックスします。
このミントティー、京都のお店で飲めるようになったら嬉しいな。

・・・とか言ってる間に時間が慌ただしく過ぎる。
僕がお昼前にさっきのパン屋に戻らなきゃいけないのです。
「じゃ、近所なので、その前に行ってしまいましょうか」と言われ、
サクサク行くのかと思いきや強烈に大回りして辿りついたのが、こちら。
「パティスリー カール マルレッティ」
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ご存じの方も多いと思いますが、
モンテベロのシェフの逢坂君の母校でもあります。
来阪された際に店に寄ってもらったので、
手土産にシュクレの近所の大月酒店さんで日本酒を持ってご挨拶。
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奥に居るのがカール氏。覚えててくれたようです。
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とりあえず買い物だけして、一旦パティスリーチームと別れ、
再びデュ パン エデジデへと戻ります。
ちょうどそこへ・・・。
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朝は、この自転車だけしか見れなかった、シェフのヴァッスールが登場。
紹介するまでもない有名人ですが、30歳くらいまでアパレルに勤務し、
世界を飛び回ってたという、変わった経歴の持ち主。
情熱と信念と、更に経営の才覚にも長ける、頭の良い職人です。
正直、そんなに時間は無かったんですが、
焼き立てのバゲットを一緒に一本、その後、パンデザミも一個、
もしゃもしゃ千切って食べながら、しばし談笑。
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「あ~~、旨い。幸せ・・・」と言うと、「だろ?」とヴァッスール。
「1ユーロで、こんなに幸せになれるんだ」、そう自分の仕事を誇る。
日常の中で必要とされ、それに応え、尚且つその日常を豊かに出来る仕事。
それを岸部でやりたくて始めたシュクレも、もう8年。
未だその実感は得れぬまま。
あと倍くらい続ければ、そんな感覚に陥れるのかなぁ・・・。

その後、ここでバリバリに働いてる友人と、
近所で賑わうお店にランチに行きました。
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久しぶりのパリでの食事。
軽く、お昼のムニュをいただきます。
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出てきたのは、メロンのスープ。
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なんかね、今回やたらとメロン食べたんです。
しかも、どちらかというと前菜扱い。
でも、どうしてもデセール感が拭いされないんですよね・・・。
このスープも、たっぷりメロンを使った美味しいメロンスープ。
ま、メロン、好きだからいいいんですけどね。

ふと横を見ると、良い感じの光景が。
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やっぱ、家族でとか、子供ととか、
地域に根差してる感じがして良いですよね。
写真の手前にも男の子がいて、向こうの女の子と、
トマトソースのスパゲッティを口の周りを真っ赤にして食べてました。
その光景が何とも微笑ましくて、思わず目を細めて眺めていました。
それに、子供用にそんなメニューを用意してるのも素敵ですよね。
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「・・・・・・・」
あれ?あのスパゲッティ、子供用じゃなかったの!?
いや、ほら、パリ最初のランチ、多少不味くてもいいから、
なんかこうデローンとか、どや!みたいなね・・・・、パスタですか(笑)

しかも、なんとも久しく口にしたことがないような、
もったりした太さのパスタ。いや、スパゲティ。
ソースは不味くないです。お家にお呼ばれされたときとかに出てきそうな味。
で、肉団子がバランス悪いくらいジューシー。

さ、とりあえずお腹も満たされたことですし、サンマルタン運河に移動して、
さっき買ったカールマルレッティのお菓子をいただくことにしましょう。
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・・・・ちょっと崩れちゃってますね、すいません。
何とも優しい味ですね。
左端のモンブランなんて、小豆かと思ったくらい淡い。
中央のタルトシトロンとパリブレストを食べた時、
「あぁ、逢坂君、元気にしてるかなぁ・・・・」と、
思わず逢坂シェフを懐かしく思い出したくらい、そっくり。
ここのお菓子がどうのの前に、逢坂君の再現力に思わず唸りました。
僕は知らないうちに、パリで逢坂の味が懐かしいと思わされるくらい、
ちゃんとカールマルレッティのお菓子を食べさせてもらってたんですね。

さ、食べ終わったら、今度はさっきのパティスリーチームと合流。
結構ね、左岸と右岸の往復ってしんどいんです・・・。
「ピエール エルメ パリ ボナパルト」
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僕はパリに来たばかり。
京都パティスリーチームは本日最終日。
なので午後は、行き忘れてるとこや、もう一回行ってみたいとこなど、
僕に気を遣わないで好きなとこ行って、とお任せしました。
今回は、僕の旅程にパティスリーがあまり入ってなかったので、
初日にいろいろ見れたら助かりますし。
その最初がエルメ。パリ在住中は、週4くらいは通って食べてたパティスリー。
すぐ傍のサンシュルピス広場のベンチに腰掛けていただくことに。
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全部は撮ってませんが、サクッとこんな感じです。
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他にもガトー数点、マカロン、ボンボン、などなど・・・。
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五割の確率。
五割は普通に美味しい。
しかし、後の五割は別格。
全てのバランスが計算し尽くされてる。
既に制作はエルメの手から離れてるにも関わらず、
食した瞬間に「別格」だと思い知らされる凄み。
この旅の間、幾つかのお菓子を食べましたが、
結論、「日本で食べれる」でした。もちろん「味覚として」です。
パリがどうではなく、それくらい東京の数店のパティスリーのレベルは高いです。
そのなかでも、やはり格が違う。
有名過ぎて観光地みたいになってますが、それでもこのクオリティ。
世に新しいパティシエが華々しく出てこようが、
今までにない斬新な切り口で表現するガトーが出てこようが、
やはりそれらは一陣の風に過ぎず、今でもここからトレンドが生まれ、
「時代」を牽引してるんだという凄みを感じました。
おまけ。
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有名なイスパハンのクロワッサンバージョン。
バラとライチとフランボワーズの繊細な組み合わせに、
バターは許せてもイースト臭は異臭以外何ものでも無い。
勿論、「イスパハン」と思わなければ秀逸なヴィエノワズリー。

・・・・と、サクサク食べちゃって横を見ると、
「あぁ、やっぱ菓子屋はこんなに必死に学ぼうとするのね・・・」
というくらいのガン見っぷり(笑)
その間、ちょっと暇だったので、
何度となくこの場所には来てたけど中には入ったことないな・・・と思い、
ちょっくら散策に行ってきました。
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「おお・・・・」
中は意外に広く、自然光の射し込む清々しい雰囲気。
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いやぁ、もうちょっと早く覗いとけば良かったです・・・。
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エルメに行く日本人も多いと思いますし、
食べるところが無いので、ここを利用する方も多いと思いますが、
是非それだけでここを立ち去らず、中に足を運んでってください。

え~~~っと、次はどこだったっけな・・・。
あ、とりあえず、メールなども全く受け取れない状況のため、
京都パティスリーチームの泊るホテルに戻って、
ちょっとレクチャーしてもらうことに。そして、足早に近くのパティスリーへ。
ランチ後、結構お菓子も食べて、合流して更にお菓子を食べ、
ちょっと厳しいな・・・と思ってたら、お目当ての物が無かったよう。
で、そこからレ・アールまで移動して、今度は調理周辺器具のお店へ。
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全然買う気無かったんですけどね。
パン用って、圧倒的に品物が少ないわけですよ。
それでも並んでるのを見ると、何故か愛しくなってきちゃって、
思わず数点購入。かさ張るんですよね・・・、これが。

荷物が増えた状態で、今度は食材屋さんへ。
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またしても、ここで買うつもりの無かったものを購入。
多分、朝食べたタルト フィグの印象が強かったんでしょうね。
同じく小粒のいちぢくのドライがあったんで、思わず2㎏購入。
あ、どのタイミングか分かりませんが、
いつかこのいちぢくを使ったパン オ フィグ スペショーを、
皆さんにお届けしますね。お楽しみに!

・・・・いやぁ、言うても2㎏プラスは重い。
そしてかさ張るパン用の道具たち。
歩きにくいったらありゃしない。
ぶつかるカバンで、左ひざの外側から血が出てました。
それでも、「何とかこれを持って帰って、
みんなに美味しいパン オ フィグを食べてもらうんだ」
との一心で頑張りました・・・・って、嘘です。
「くそ・・・・、買わなきゃ良かった・・・」と、悪態つきながら歩いてました(笑)

さ、そこからまた移動します。
「パティスリー デ レーブ」
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あっちゃこっちゃで露出してるので今更ですが、店内。
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左岸右岸を行ったり来たりし、とりあえずアンヴァリッドの前の広場へ。
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初登場、某パティスリーのNシェフです。
この日最後のお菓子は、ピクニックスタイルでいただきます。
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ちなみにこの時、もう19時くらいだったかと。
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店内同様、お菓子もラブリー。
はたして、京都進出ではどんなお菓子を提供してくれるんですかね。

ここから、夜に予約してるレストランへ向かうためにメトロへ移動中・・・、
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まだ遥か遠く、全体が見えるわけではありませんが、
夕陽を背に浮かび上がったシルエットが目に入った瞬間・・・、あかんね。
いろんなものが込み上げて来て、いろんなものが零れそうになって、
パリに着いた時から分かっていた感情。
「じゃあ、なんで・・・?」の問いが怖くて目を背けてた感情。
その感情を、急に目の前に突きつけられた。
難しいことも、ややこしいことも、理屈じみたこともない、
理解され難いほど単純で、純粋で、深く、滾るような想い。
「好きすぎる・・・」
好き過ぎて仕方ない。街も人も空気も景色も。
ここで生き、ここで暮らし、ここでパンを焼く。
そんな毎日が再び送れたら、どんなに幸せだろう・・・と今でも思う。
でも、10年前、もし帰って来てなかったら、
間違いなく僕は今ほど成長してなかったと思う。
片や求められる中、大らかに、健やかにパンを焼き、
片や「固い」「大きい」「焦げてる」と、歪みばかりの毎日。
でも、その「歪み」に新たな成長の余地はあったんだと思う。
それに加え、シュクレに、スタッフに、お客さんに育ててもらって今がある。
「パンはおやつ」の国に戻り、自分がやりたいこととの歪みの中で、
「それでもやり続ける」以外に糧が無かった。自信ではなく意地でした。
この街は、僕がboulangeとして生まれた街。
ここで生まれ、ここで育ててもらった、唯一羽を休めれる街。
再確認した。やはり僕の存在意義は、この街にあると。
何を言われても、僕はこの街を表現したいし、
異国にて、この街を眼前に突き付けるようなパンを焼きたい。
そこにしかモチベーションはない。そこにしか存在意義も無い。
僕は「boulangerie」を営み、「pain」を焼く。
なぜなら「boulange」だから。
そしてそれらは自分で作り出しているものでありながら、
boulangeとして生き続ける為の酸素のようなものでもある。
もし、painを作らなくなったら、boulangerieを逸脱したら、
僕は息が出来なくなり、boulangeとして死んでしまうんだと思う。
つまり、何も無くなってしまうわけです。
「どうせ吸うなら、もっとキレイで美味しい空気が吸いたい」
10年前、帰国した時のように、また新たな覚悟が生まれた。
迷ってたのか、迷いがなくなった。霞んでいたのか、霧が晴れた。
目の前にまた道が見えた。
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友人が働くレストランへ行く為に凱旋門からジョルジュサンクへ向かう。
そこで一瞬「ビクッ!」と悪寒が走るような光景が。
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「草間さん!!(泣)」
ヴィトンとのコラボ商品が出てるのは知ってましたが・・・。
ぐるりとヴィトンのショーウィンドーを全てジャックしてました。
恐るべし草間彌生・・・というか、本当に恐いです。
と、子供の泣き声が。
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「もう行くよ!」
「やだ!まだ見てるの!」
・・・・草間さん、そういう類いの代物じゃないんですけどね。

そんなこんなで、慌ただしくパリ初日が終わろうとしています。
あとは、ご飯を食べて、戦友とのパリでの再会を楽しんで参ります。
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さ、明日はいきなりパリから離れます!
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by monsieur-enfant | 2012-09-24 21:23 | フランス 2012