2012年 09月 28日
たなびく旗のように。
読む方も覚悟して読んでください。・・・・というのも、なんせ長いです。
っていうか、良い頃合いで区切れるところが無いんですよ。
なので、朝から夜までを1セットにしてお届けする覚悟を決めました。
フランス2日目(・・・まだ2日目(T_T))、アルザスへの旅をどうぞご覧あれ。
「ま、何なら『行かない』って選択肢もあるよねぇ・・・」と、
前日の夜までぐうたらしてたのは、パリ初日の疲れもありましたが、
チケットもホテルも取ってないという自由な状況がもたらしていたのであります。
「パリもゆっくり出来無さそうやし、行かないでのんびりしよっかな・・・」
そう思って結局、朝8時出発予定が、10時くらいまでダラダラしてました。
そう、フランス2日目、予定では朝からアルザスへと飛ぶ予定でした。
お昼前に着いて、ランチして・・・の予定が、今から出ると、もう間に合わない。
でも、急いで支度すれば、ストラスブールまでTGVで2時間半。
何とか「昼枠」中にはアルザスへ到着できる可能性はまだ残されている。
今決めなきゃ!もう決めなきゃ!時間無いよ!どうすんの?じゃ、やっぱ行く!!
・・・ってな感じで決めてからは、
あまりの時間の無さに泣きそうになりながら(自分が悪いんですが・・・)、
急いで荷造りしてGare de l’Estへ向かいます。
「とりあえず、今から一番早い切符をください!」
というと、まさかの10分後。効率的ではあったんですが、心の準備が・・・。
こういった、地方へ出てるTGVの発着駅はパリに幾つかあるんですが、
駅はデカイわ、出発地点が意表ついて遠いとこにあったりするわで、
洩れなく何度も危うい目にあってるわけなんです。
ですが・・・今回はすんなり5分前に乗り込めました。
10年前にアルザスに行った時は、まだアルザス行きのTGVは無く、
えっちらおっちら5時間弱くらいかけて行ったものです。しかも日帰り(笑)
今回はTGV、しかも勿論久しぶりのTGV。テンション上がります!
テンション上がりついでに、「こんなんやったかな・・・」と、
10年前の記憶と重ねながら室内をパチリ。
「あ!!テンション上がり過ぎて忘れてた!!」
TGVは改札が無くて、乗り込む前に小さな黄色いポストみたいなとこに、
チケットを「カチッ」と差し込まなきゃいけないんです。
「出発まであと2分しかない!!」と猛ダッシュでホームを駆け抜ける。
そしてチケットを差し込むや否や、そのままターンしてダッシュで戻る!
息切れして戻ってきた僕に、「チケット入れるの忘れたのね?(笑)」と、
どんだけ聞くねんってくらい聞かれました。あーそーですよ、忘れたんですよー。
「・・・・あ。」
5時間だと持て余し過ぎた時間も、2時間半だと寝てる間に着いてしまいます。
アルザスの玄関口であるストラスブールから30分。
目的地のコルマールに着きました。
今回、コルマールは中継地点。
ここからバスに乗ってカイゼルスベルグという街を目指します・・・が、
探せど探せど、カイゼルスベルグへ行くバス停が見当たらない。
「ここは時間食ってる場合じゃないな・・・」と、
早速駅員さんに聞いてみる。一人目の女性は「バスは分からない」の一点張り。
「いや、間違いなくあなたより分からない人が聞いてるんですけど~~!」
と思ったんですが、時間の無駄なのでサッサと分かりそうな人を探す。
「カイゼルスベルグ行きのバス?ちょっと待っててね」
そう言って、往復のバスの時間帯をコピーしてくれた親切な方がいて、
「これを見ればオールオッケー!」くらいの満面の笑みで渡されたのが、こちら。
え?なになに!?どこ見りゃいいの?
数字とか多過ぎて全くわからんやん!
・・・そもそもバスは苦手なんです。
以前、金沢にて、自信満々で乗ったバスが真逆のルートを走り、
それに終点まで気付かず、たまたま通りがかった地元の方の車を、
ヒッチハイクして駅に戻った苦い記憶が脳裏をかすめる。
「タクシーで行こっと。」
フランスのタクシーは、初乗り料金が安い。
なので、そこそこ乗っても日本よりは全然安い。
それに、基本自分の車を使ってるので、
車好きの方なら、いろんな車種に乗れる楽しみもあります。
今回はシトロエン。帰りはプジョー。
パリでも、アウディやらベンツやらで楽しませてもらって、
最後の最後、ホテルで呼んでもらった空港までのタクシーが、
まさかのプリウス・・・。
さ、コルマールから30分くらいかな?
2000円くらいで着いちゃうので、バスに自信の無い方はオススメです。
「カイゼルスベルグのどこ?」って聞かれたので、
「とりあえず、真ん中で」と答えて降ろしてもらったのが、ここ。
「わ~~~~~~~~。」
「わ~~~~~~~~。」
「わ~~~~~~~~。」
「わ~~~~~~~~。」
「わ~~~~~~~~。」
・・・・くらいしか言葉が出てこない。
ここカイゼルスベルグは、宮崎駿さんの「ハウルの動く城」の街の、
モチーフになったと言われてる街。はい、来た理由は、基本それだけ。
「なるほど・・・」と思わされる街並みが続きますが、可愛らしい街並とは裏腹に、
幾度となく領土侵略が繰り返された、複雑な歴史を持つ街でもあります。
更に、山間の小さな街ではありますが、
マザー・テレサやマハトマ・ガンディーと並び、
20世紀のヒューマニストとして称さる、
アルベルト・シュバイツァーの出身地でもあります。・・・・あるそうです。
さ、時間も時間ですし、お腹も空きました。
到着したところがレストランで、食べようかと思ったんですが、
ランチは14時まで。・・・・グダグダせんと、あと30分早く出てたら良かった。
周りを見渡しても昼食は続いてるので、どこか良さげなお店を探しに行きます。
結局、開いてるのはブラッセリーだけなので、適当に入ってみることに。
朝から何も食べる暇が無かったので、好きっ腹にワインが沁み入ります。
あ、基本、アルザスではワイングラスはこんな感じのが多いんです。
これ見ると、「アルザス来たなぁ・・・」って思います。
そして、もう一つ、アルザスと言えば、「タルト フランベ」。
何度も言ってるのでご存じの方もおられると思いますが、
うちのタルトフランベは、「生地を食べてもらいたい」との気持ちで、
大分厚めに作っています。実際はこんな感じで、薄くてペラペラなんです。
見た目はピッツァを連想され、実際そのほうが分かりやすいとは思いますが、
生活の中の役割とすると、どっちかというとブルターニュのガレットに近い印象。
いつでも気軽に食べれるソウルフードで、同じ生地でデセールも普通にあります。
ただ、ガレットとは生地そのものが全然違うので、
タルトフランベの方が当たり外れが多い気がします。ここはまだ当たりの方。
「タルトフランベ ~」と、やたらメニューが多かったのでよく見てみると、
その半分くらいが、トッピングのフロマージュの種類が違うだけでした。
ですので僕が食べたのは「タルト フランベ マンステール」。
基本のタルトフランベに、数切れのマンステールが乗っけられてる・・・だけです。
が、美味いんですよね~、普通に美味い。これ、大事なことです。
さ、腹ごしらえをしたら、また街を散策します。
なんせ天気が良くて良かったです。
少し歩けば水の音が聞こえてきました。
良いですね、こういった小川の流れは本当に心が癒されます。
しばし、川沿いを歩いてみます。
水の流れもですが、お花も良いですよね。
ここは本当にお花が多い街。
道にももちろんですが、見上げるとどに窓にも可愛い花々が。
素敵にオモチャ箱を彩ります。
ホント、メルヘンの国ですね・・・。
と、少し広い道に出ると、なんだか大きな建物が。
聞くと、ここがメインストリートの入り口だったんですね。
ま、メインストリートと言っても、歩いて10分ちょっとくらいですけど。
この日は本当に暑くて、
ちょっと歩くとね、やはり喉が渇くわけです。
日本ではあんまり飲みませんが、
こっちに来ると一気に比率が上がるのがビール。
続いて、もう一枚タルトフランベ。
店によってホントに様々なので、ここのはどうかな?と思って頼んでみました。
こりゃ、あかんわ・・・。
買ってきて家で作るような、冷凍シートのような生地。
やはりタルトフランベは生地が命。
先に食べたほうが全然美味しかったです。
ね。本当に当たり外れが大きいんです。ちゃんとリサーチしましょうね(笑)
なんかこう満たされない感があったので、ふらっとお店に。
ま、後でも出てきますが、パリと違うところといえば、
やはりクグロフとブレッツェルがやたらと多いことも、その一つになるでしょう。
クグロフは、相変わらずやたらデカイのが並んでるのに加え、
10年前には珍しかった極小サイズが増えてました。
ま、どれもパッサパサですけど。
更にブレッツェルは、よく見慣れた通常のタイプに加え、
甘めのブレッツェル、揚げたブレッツェル、なんかチーズ乗せて焼いてるのやら、
無意味にバリエーションが増えてるのは、ちょっと衝撃でしたね・・・。
十年一昔とは、よく言ったものです。
少し傾いた西陽を受けたサントクロワ教会。
街の真ん中にあり、街の中では一番高い建物でもあります。
入り口では、僕が入る前に入った老夫婦の、
「ここで待っててね」を、
地団駄踏みながら賢く待ってる犬がいました。
中は、そんなに広くないながら、自然光が入り、厳かながら柔らかい雰囲気。
結構メインで掲げられてるキリスト像ですが、
これ以上寄りで撮るとキツいくらいリアルな描写。特に杭の辺りね・・・。
協会を出て、またブラッと歩いてると、
ガラス工芸の実演を見れる工房がありました。
火、ガンガンつけてるんで、部屋の暑さに耐えかねて早々と退散。
晩飯までに行こうと思ってた、街の裏山に行きます。
街並みの間を抜けると、やっと標識のようなものが。
左側にある小さなグレーの矢印に、
小さく「chateau」と書いてありました。
街の裏手に外れると、広大な葡萄畑が。
ぐるりと見渡すと、その向こう側に、小さく城跡が見えます。
目的地は、あそこです!
・・・と、その前に、本当に美味しそうに葡萄が生ってます。
美味しいワインになると良いですね。
さてと・・・・、城跡に行くにも道が見当たらない。
キャッキャとはしゃいでる家族連れが居たので聞いてみると、
「そこを真っ直ぐ行くんだよ。で、突き当たったら左に曲がって・・・」
「うんうん・・・」と頷きながら、その「そこ」と指差す方を目で追うと、
いやいや・・・普通に葡萄畑ですけど・・・。
ま、キャッキャとはしゃいでた家族も、声だけがする中、
突然葡萄畑から出現してきたわけなので、
その辺はオッケーってことですよね。
ということで、葡萄に囲まれながら城跡を目指す。
とりあえず突き当たりまで歩くと、アンニュイな標識のようなものに出会う。
気にせず、言われたまま左に進路を取ってみる。
「これ・・・観光用の道なの?」ってくらい、まあまあ険しい。
葡萄畑越しのサントクロワ教会。
こうしてずっとこの街を見守って来たんでしょうね。
ちょっとしたトレッキングみたいな足場を進んでいくと、
城跡がいつの間にか近づいてきました。
思ってたより結構距離もありましたね・・・。
迂闊に観光気分でサンダルなんかで登ったら、相当キツい道のりです。
僕も夏用の底の薄い靴でしたし、
以前捻挫した左足首が未だ完治せずグラグラするのと、
初日パリを市中引き回しのように連れ回されたダメージがね・・・(笑)
「お!」
遂に、その城跡がその姿を露わにしてきました。
やっと入り口に立ちます。
中に入ると、さっき教会にいた犬と老夫婦が。
「いつの間に登ってきたんやろ・・・」との一抹の疑問はありましたが、
なんとなく「登ってきた」という連帯感に包まれる。
だって、そこそこ観光スポットのはずなのに、
他には誰もいませんでしたから・・・。
塔の入り口は、薄暗くてちょっと怖い・・・。
なんでこうフランスは螺旋階段多いんですかね・・・。本当に目が回ります
「お・・・」
真ん中くらいに外を眺めれる覗き穴が。
「頑張ろ!」と思わせてくれる景色。
ちゃっかり、おばちゃんと犬が写り込んでましたね。
さ、やっと頂上!かなり急な階段でした!
・・・・と、さっきまで歩いてた街並みが!
葡萄畑が!
見えなかったとこまで!
まるで、ジオラマ!
いやぁ・・・、上って来て良かった。
この景色を届けれて良かった。
頑張って歩いて来た甲斐があったというものです。
・・・と、もう一つ、上らなきゃ見えなかったものがありました。
塔を降りて、裏手に回ると、更に上れる道がありました。
そう、こんなとこにベンチがあったんです!
座って眺める景色は、こんな感じ!
そして!上りきったら御褒美で食べようと、
下から持参したミラベルのタルトを頬張る!美味い!
あ~~~~、幸せ。
ミラベルは美味いわ、景色はキレイだわ、誰もいないわ。
ただ風に吹かれ、ただ雲の流れを追い、
時間と、時代と、歴史と、その狭間で強く生き抜いてきた、
カイゼルスベルグの街を一望する贅沢な夕暮れ。
猛々しくも静かに、そして誇らしげにたなびくカイゼルスベルグの旗。
この旗のように、風に身を任せれる柔軟さと、
その風に吹き飛ばされない強固な軸を、いつも心に持っていたい。
そしてその旗を、いつも心の奥にたなびかせていられるような、
そんな生き方をしてみたいです。
ふと見たら、心の旗が「へにゃっ」ってなってるような生き方、嫌ですもんね。
ちょっと覗いてみてください。
皆さんの心の中の旗は、猛々しくたなびいてますか?
陽も大分傾き、風が冷たくなってきた頃、
「そろそろ降りよっかな・・・」と思った僕がふと目を向けたそこには、
城跡の入口まで街から最短距離で来れる道の存在が・・・・。
やはり、葡萄畑は正規ルートじゃなかったようですね・・・。
老夫婦も、ここから上がって来たんですね・・・・。
見なきゃ良かった・・・。
そして街に戻り、
「どうせ美味くないやろ」と写真も撮らなかったブーランジュリをパチリ。
もし、これきっかけでカイゼルスベルグに行く人がいるなら、
ここのタルトは買いですよ!ミラベル、ありがとう!
・・・と、「ん?」
なんか、こないだの柿田川の時から猫遭遇率が上がってるような気がする・・・。
シャイなのか、目線を合わせそうで合わせない。
とてもエレガントな雰囲気の猫さん。
カイゼルスベルグ到着時、目の前にあったレストラン、
ランチを逃した悔しさから、勢いで夜を予約。
なので帰れなかった・・・という経緯もあったりなかったり・・・。
城跡で散々時間を潰してきたのですが、
さっきミラベルのタルトを食べきってしまった満腹感から、
なかなか解放されないまま食事が始まる。
「美味しい!」と感じるパンに出会う確率は、意外に低い。
カトラリーの「ちょっと斜め置き」は、アルザスではよく見かけます。
ささやかに、クレマン ダルザスで一人で乾杯。
「アルザスといえば」の一つに、フォアグラ料理があります。
なので、フォアグラのテリーヌを前菜に。
合わせるのは、やっぱりゲヴェルツトラミネール。
これが、期待してませんでしたが普通に美味しかったです。
ガルニも美味しく、フォアグラとの相性もバッチリ。
食パンみたいなブリオッシュ以外は・・・・ですが。
隣の席に座った男女計8名の旅行客。
リヨンの近くからアルザスに来られたそうで、とても楽しげ。
でも、ずっと皆の写真を撮ってる方がおられたので、
「僕撮りますから、入ってください」と声をかけると、
「めっちゃ親切やん、自分!」的なテンションで大歓迎されまして・・・。
グラスが空けば、彼らのミュスカを注がれるという、
「あの、次、リースリングが来るんですけど・・・」とは、
とても言いだせない空気になてしまいました。
そこへシュークルート!
結構、お腹タプタプなとこに来てシュークルート!
え~~、ジャガイモの大きさから大体の全体像を連想してみて下さい・・・。
そして、もれなく合わせて頼んでたリースリングも有無を言わさず・・・。
「なんかのペーストなんかな?」と思って、思わずペロッといきかけたのは、
シュークルート用のマスタード。
ややこしいポーションで出しなさんな・・・。
「あぁ・・・・キツイ・・・・」
苦悶の表情が伝わったのか、さっきのテーブルから声援が飛ぶ。
「あと、ふた口!あと、ふた口!」
そして、それに後押しされてパクッと一口で最後を飾る。
声援が歓声に変わる。・・・・・何これ。俺、何してんの?(笑)
「デザートは?」と、この状況で聞きに来たのは、
「いや、もう頼んでても良いですけど?」と、
「デザートは食後でお聞きします」と言われた後に返した、
食べる気満々だった食前のやり取りに対する当てつけだったんだろうか・・・。
もう何も入らない。カフェすら入らない。
パリ出発直前に手配したコルマールの宿に戻るために、
タクシーを呼んでもらう。
「コルマールまで」と言って渡したホテルの住所を見て、
なんか言ってたのは薄ら聞こえていましたが、
満腹感と、そこそこ飲まされたミュスカのおかげで記憶がおぼろげで・・・。
とりあえず、予約してたホテルに無事送り届けてもらう。
とにかく疲れた。
昼過ぎに到着したとは思えない疲労感。
そして、なかなか可愛いお部屋で、あっという間に眠りにつく。
翌朝、衝撃の事実を知ることも知らずに・・・。
by monsieur-enfant
| 2012-09-28 23:58
| フランス 2012