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なないろめがね

「いつか」へと続く道。

さて、と・・・、
諸々の発表もとりあえず終わったので、
フランス日記の方を再開させていただきますね。

アルザスから帰ってきた翌朝、いつものようにサンマルタンで朝食。
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いつものパン屋さんは、サンドイッチ担当のスタッフが休んだ時、
代わりに入ったシェフが一言、「面倒くさい!」
これで、カスクルートは販売中止になったそうです(笑)
なので、いつもと違うパン屋さん。普通に美味い。マヨネーズが。

この日は、渡仏前に唯一そのシェフに頼んでた、
「製粉会社に行きたい!」を叶えてもらった日。
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そもそも「美食の国」フランスとは、
腕の良いキュイジニエがいたから呼ばれるようになったわけではなく、
豊かな土壌があって、そこから色鮮やかな野菜や果物が生まれ、
その野菜や果物を食べる鳥や動物、更にそれを食べる獣など、
美味しいものが常に巡る、食材の宝庫だからだと思うんです。
土壌と言えばやはり連想するのはワインなんですが、
もちろん小麦もワイン同様、
直接テロワールの影響や恩恵を受け易いわけです。
なので、日本の国産小麦とは、そもそもポテンシャル自体が違うんです。
ですが、そこはキャラクターや用途で使い分ければ良いと思ってます。
なので、結局は描く終着点の問題。
好みはあれど、善し悪しを比較するのもナンセンス。

参考までに、
僕は、国産小麦には粉に触った際のザワザワとした高揚感を感じません。
腕を突っ込んでみても、とっても静か。尋ねても黙ってて答えてくれない。
粒子が均一で密着してしまい、香りが立たず、大人しい印象。
もちろん、その特徴を生かして使ったりもしますので、
あくまで特徴であって、ネガティブな意見ではないので悪しからず。
ではフランス産ですが、だからと言って良いわけではありません。
日本に多数入って来てる粉も正直ピンキリなので、
「フランス産だから」ではなく、ちゃんと選択することが必要です。
僕が選ぶ基準は、腕を突っ込んだ際にザワザワするかどうか。
粒子が粗く、不均一。表面積が大きくなり、放つ香りのトーンも高い。
いかにも元気でやんちゃそうな子に出会った時は、
作り手として「どうしてやろかな・・・」との高揚感を抑えきれなくなります。

そんな粉が、作られてるのはどんなとこだろう。
皆さんは気になりませんか?
どういう想いで小麦に向き合い、
どういう想いで小麦粉を生産しているのか。
気になったら確かめずにはいれないのです・・・。


この日も晴天。まだ暑かった夏のパリ。
アルザスと同じくGARE DE L’ESTからの出発。
パリで働くパン職人の友人との約束の時間を、丸一時間間違えての到着。
携帯も使えない中、「待ち合わせ場所、間違えたんちゃうかな・・・」と、
ひたすら待ち続ける一時間、正味、地獄でした。
そこからR.E.Rにてパリ郊外へ。
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昨日乗ったTGVと、こんなに格差ある?ってくらい不安なビジュアル。

しかも、ここから小一時間動かない。
アナウンスは「ちょっと待ってね」程度。
正直、行き先も正確に知らないし、
その見知らぬ街で製粉会社の人に迎えに来てもらってるわけで。
・・・と、黙って発車しやがった(笑) 
日本なら、少なくとも平謝りのアナウンスが連呼されるやろうに。
・・・と、次の駅ではまた30分程動かない。
アナウンスは「ちょっと待ってね」程度。
友人も、「40分で着くところが既に1時間半・・・」と嘆いてましたが、
ちなみに僕は既に2時間半経過してるんですけど・・・。
だからぁ!黙って動き出すの止めてくれへん!?(笑)

結局、原因も告げられぬまま、2時間近くかかって到着したのは・・・、
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そこそこの田舎っぷり!
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初めて聞いた駅名。
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なんとも長閑な空気漂う駅前で、「あの人かな?」と、
ほぼイメージで近づいていった老人は完全に人違い。
意外に若い人が迎えに来てくれてて驚きました。
ま、僕の「田舎町→若者が少ない→寂れた製粉工場→ほぼ初老の従業員」という、
勝手な妄想でしか無かったんですけどね。

そこから車で5分・・・と聞いてたけど、とんでもない!
15分はかかるうえに、それは信号が一つも無かったからで、
普通の街並みで信号があれば、優に30分はかかってた道程。
駅前を抜けて少し走ると、こんな感じ。
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え・・・・っと、また少し走ってもこんな感じ(笑)
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いやぁ、ず~~~っと一本道。ただただ一本道。
そして横を見れば、
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しばらくして横を見れば・・・、
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基本、景色一緒です。で、さすがにめちゃくちゃ広い!
十勝も広かったけど、その比じゃないですよね。

で、合間合間にチョロッと小さな集落があって、
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もう着くやろと思ったら、またさっきの景色の繰り返し。

そして、やっと「らしきもの」が見えてきました。
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そうそう、来たかったのはこの製粉会社さん。
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パリでもよく見かけるこの車、「ムーラン ブルジョワ」です。
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ちなみに皆さんピンと来てないかもしれませんが、
このタンクの中には小麦粉が入ってるんですよ。
パン屋さんの厨房まで外からホースを伸ばして、
貯蔵室にホースを接続して流し込むんです。
僕らの頃は1袋50kg、今では「重すぎる」ということで40kgになったようですが、
そんなのを搬入してたら、一回で何往復しなきゃいけないか分からないのです。
フランスのパン屋の粉の使用量は、それくらいケタ外れ。

そして、いきなり奥に通され、責任者の方が自ら案内を買って出てくれました。
上着を脱ぎ、タンクトップで挨拶の席に着く、なかなか気風の良い女性です。
なんかいきなり商談みたいな流れになって驚きましたが、
話が落ち着くと、その方に連れられて製粉工場へと向かいます。
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「立派な建物ですねぇ・・・・」と言うと、
「前に全焼したから」とサラリ。・・・・ちょっとブルーになりますやん。

ここは言わば検査室。
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成分から、実際にパンにしてみての発酵具合まで全てここでデータを取ります。

そして工場内へ。
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いやぁ・・・さすがにキレイ。でもそれは全焼したから・・・。
ま、それは一旦忘れて、やはり規模がデカイ。これでも中規模だそう。
それに、やはり粉の香りのトーンが高い。
湿気が少ないということも無きにしもあらずなんでしょうけど、
日本の製粉工場では、総じてもう少し重くてムワーーっとした香りだった記憶が。

ここでは、いろんな粗さの粒があって、
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上に行ったり下に行ったりを繰り返し、
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それぞれの粉の粗さによって分類されます。
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それを今度はふるいにかけるわけです。
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止まってるように見えますが、この箱が常にブルブルと動いて、
あたかも手でふるってるかのような効果を生みます。

周り同様、敷地内は緑に溢れています。良い環境ですね。
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ちょっと場所を移動して、ここで最終的に分類されるようです。
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ここはまた独立した部屋で、石臼挽きの粉を挽いています。
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中に入ってグルグル回ってるのは、この石臼。
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やっぱりフランスでも石臼挽きの粉は高いみたい。

その部屋を出て、
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あのパイプを通って、
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ブレブレでスイマセンが、この狭い通路を通った先には、
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ここで詰め立ての小麦粉が生まれるわけですね。
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小麦粉が詰められる前の粉袋。なかなか見れないですよね。
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そして、併設のラボを見学。
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機材から何から、ホント懐かしい景色です。
で、何より驚いたのが、ここで焼かれたパンの美味しいこと!
日本でも当然ながら各製粉会社にテストキッチンなる物はあるのですが、
まぁ美味いパンなんて食べたことないわけです。
販促用のパンフレットに写ってるパンも、
「これじゃ逆に購買意欲を削がれるんじゃ・・・?」と、
こっちが心配になるくらい、つまらない表情のパンばかり。
それが文化の厚みだと言ってしまえばそれまでですが、
「製粉会社」という存在の持つ役割や責任が、おそらく根本的に違うんですね。
プライド持って仕事してます。プライド持って粉を作っています。
だから同じくらい、その粉を使ってパンを焼くことにもプライド持っています。
それは表現としてとても大事なこと。伝えるのは実践しかないんです。
粉だけ作って後は問屋に流すだけでは、
届くものも届かないし、伝わるものも伝わらない。
それでは非常に勿体ないと思うんです。

フランスでの粉屋とパン屋の関係は、とてもドライでシビア。
「使う」「使ってもらう」だけの関係じゃなく、
自分たちが作り上げた粉を使う職人にも、技術と情熱を求めます。
でも、そこには、リスペクトと愛情が含まれています。
出来なければ売らない粉もある代わりに、
出来るようになるまで教える制度を製粉会社が持ってるところもあります。
ここ、ムーラン ブルジョワでは、
テストキッチンにて何日かの講習を受けたパン職人には、
独立の際、会社が保証人を引き受けるというのです。
これを聞いた時には涙が出そうになりました。
僕は本当にキツかった。
本当にキツかった以外の言葉が出てこないくらいキツかった。
10年この業界に居ての独立でしたが、
10年居たことでのメリットなどありませんでした。
機材の一つ一つが高く、本当に初期投資額がかかります。
それで借り入れ出来ず独立できない人なんてたくさんいます。
返済がキツ過ぎて閉店してるところもたくさんあります。
修業期間や修業先なんて、社会的信用にはなんら転換されません。
いわば、そんなことしなくたって自己資金さえあればお店は出せちゃいます。
時間や労力を犠牲にし、お客さんに出来るだけ美味しいものを・・・、
そう思って修業に明け暮れなくても、
有望な保証人さえいればお金は借りれてしまいます。
それは今に始まったことではないんです。
つまり、今も変わってないんです。
以前にも書きましたが、
同じく初期投資の高い業種である美容師さんの美容師協会は、
会員になってると独立の際などに、
保証協会に働きかけれるメリットがあると聞きました。
僕らの業界には何かあるんでしょうか?
自分たちが苦しんできたこと、乗り越えたら後は知らんじゃないですよね。
僕は、入ったことも繋がったこともありませんが、
パン業界でももちろんそういった協会はあるそうですね。
苦しい時代を乗り越えた先人達が知恵を絞って、
次の世代に何かの手を差し伸べてあげれてるような、
温かい繋がりや制度が作られてるなら素敵やなぁ・・・と期待してしまいます。
製粉会社さんも、もっといろんなことフランスに学びに行くべきです。
製粉技術だけじゃなく、歴史、文化、ブーランジェとの関係性など。
そういうとこまで理解してお話できる方は少ない気がします。
切っても切れない関係なのは周知の事実。
双方の向上なくして双方の未来は開けないわけですから・・・。

「時間が無いよ」との一言で車に飛び乗る。
別に何時に帰らなきゃいけないわけでもないんですけどね。

もちろん帰りも一本道。
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「あれだ!あれ!」
駅に着くか着かないかで列車がホームにやってきた。
その「あれ」に走って飛び乗れといわんばかりに荷物を渡される。
正直、無理だと思うくらいのタイミングで客人を降ろした彼の最後の言葉は、
満面の笑みでの「Good Luck!! 」
必死に走りながらも、その言葉に食い気味に返した最後の言葉は、
「ざけんなっ!」
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なんとかギリギリで列車に飛び込む。
ネックになったのは渡された、このお土産。
これだけで7,8kg。手提げの部分切れそうでしたもん。
これ抱えて走らされて「Good Luck!! 」は無いでしょ・・・。

ま、いろいろありましたが、良い時間を過ごせました。
こんな時間をコーディネートしてくれた某シェフに感謝。
この間、ずっと僕の想いを伝えてくれた友人に感謝。
そして何より、こんなに誇らしげに、
自分とこの粉を語る社長に出会ったことがありません。
そんな出会いに、心から感謝です・・・。

会社で車に飛び乗る前、最後に質問したのが、
「あなたたちは何を一番大事に仕事をしてるのか?」の問いに、社訓を指さし、
C’est la qualite du ble 
qui fait les meilleures farines.

よい小麦粉を作るには、良い品質の小麦が何より大事なんだ」(ざっくりね)
シンプルにして明確、そして絶対。それが彼らのphilosophie.
この社長や会社の想い、広がる広大な小麦畑、
それらがバックヤードにあるこの粉を是非使ってみたい。
吹田の岸部にある小さな店からで恐縮ですが、
何とかして皆さんにもこの粉を使ったパンを食べてもらいたい。
そう強く強く思わされる、今回の訪問でした。

・・・・と、これだけで終わる僕ではないですよ(笑)
実は、パリでもう一個バッグを買い足してまで持って帰ってきたものがあります。
何だかわかりますか?
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Moulins Bourgeois
 Label rouge 5kg

ムーラン ブルジョワの中でも最高級の、「ラベル ルージュ」と呼ばれる粉。
その中でも僕の最も好きな灰分TYPE-65を、パリから引っ提げてきました!
そして可能性を模索してる最中ですが・・・・まだ彼らとのやり取りは続いてます。
うちのような弱小店舗では正直難しい現実はありますが、
まだ夢は続いています。まだ物語は続いています。
舞台は岸部へと移り、そして「いつか」皆さんの元へと・・・。
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by monsieur-enfant | 2012-10-13 00:33 | フランス 2012