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なないろめがね

優しい魔法に包まれて。

よく晴れた月曜日。
この日は、モンテベロの開店時を共に闘ってくれた、
パティシエールのきりちゃんが、
せっかくの休みの日に僕と遊んでくれた有り難い一日。
まずはランチから・・・ですが、この辺、通りの風景が似たり寄ったりで、
周辺で30分近く迷ってしまいました。
っていうか、そこら中に立ってる警備員はおろか、
警察だって「そんな店、知らない」っていう始末・・・。
実際、本国においての「三ツ星」って、
それくらい一般人にはかけ離れたお店なんでしょうね。
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「あ!」と、この壁を見ただけで、もう分かられた方もおられるかもですね。
そうです。店が店だったため、さすがの僕も30分前くらいに到着してたんです。
・・・結局、プラマイ0でしたけど。
「レストラン アルページュ」
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今回、そんなに「どこどこ行くぞ!」と意気込んできたわけじゃなく、
どちらかというと、久方ぶりの「パリ」というお風呂に、
ゆっくりじっくり浸かって帰るというコンセプトだったんです。
でも、きりちゃんも僕も「行ってみたかった」ってとこが一致しての初訪問。
滑り込みで参加してきた、パリに来てたスタッフの大遅刻で幕を開けました・・・。
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きりちゃんとは一昨年からパリでの食事を待ちわびてたのですが、
僕がなかなかパリに辿りつけず、ようやく・・・の食事となりました。
そんな一日のスタートを、シャンパーニュで景気づけ。
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Dejeuner des jardins.
「菜園の昼食」なるランチコースをいただきます。
野菜のカナッペ風
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マスタードのアイスクリームをそえた、ガスパッチョ。
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カナッペでのんびりスタートしたのに、急に「レストラン」に胸ぐら掴まれる感じ。
ガスパチョは普通に旨い。マスタードのアイスも単体でもそこそこ。
ただ、合わせて食べた時に走る戦慄・・・、これが三ツ星たる所以か。

パンは、最近の流れでは、
グランメゾンでもデカいパンをスライスすることが多くなってます。
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ワインは相談のうえ、サンセールに落ち着きました。
ホント、「困った時のサンセール」ですね・・・。
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今回は、トマトがやたらと出てきます。
これも「3種のトマトのサラダ」。はい、普通に美味しいです。
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次は、メニュー名に「Sushi・・・」とあったように、
中にはビネガーと合わせたご飯が忍ばされ、野菜で包まれてるわけです。
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「違う!鮨じゃないんだ!鮨と比較するもんじゃないんだ!」
日本人としてのDNAと闘いながら食べる。
いや、似て非なるものであって、しかも全く奇をてらってない。
必然のバランスがそこにはあって、素直に旨い。
ただ・・・ちょこちょこ顔を出すDNAがさぁ(笑)、
やたらと「鮨」と比較したがるわけです。哀しい性と言いますか・・・。

表記は「アルルカン」・・・でも「菜園の昼食バージョン」ってとこかな。
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何て言うんですかね・・・・独特の美的感覚なんでしょうね。
小さくとか、細かくとか、そういう切り方をしてるわけでもなく、
結構ざっくばらんな大きさであったり切り方であったり。
決して「繊細」という見た目では無いんですが、
それでもお皿の上で否応なしに魅せられる「美しさ」。
そして、味覚構成はいつも極めて繊細でエレガント。・・・なんかズルい(笑)

トマトのコンソメに浮かんだ、4種類の野菜のラビオリ。
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これはね、食べる順番に結構印象が左右されてしまうわけです。
僕は意外と良い順番、味の弱い方から順に食べれたので良かったです。
スープももちろん言わずもがなの美味しさ。

フラン・・・だったかブルーテだったか・・・。もう記憶も曖昧です。
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そこに無造作にボンッと乗せられるのは、
ニシンのフュメの薫りを移したクレームフェッテ。
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そして、メインに選んだのは珍しく「ヒラメ」
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ま、夜のことも考えてはいたものの、
先にガッツリ系を取られてしまったというのが正直なところ。
これもね・・・見た目なんだか頼りないですけど、
なかなかこのクオリティの皿は食べれないですよ。

続いてミニャ。リンゴで作った花弁がシャレオツです。
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リュバーブのソルベ。
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う〜〜ん、全然普通に美味しかったんですが、
リュバーブっぽくは全然なく、完全に和梨のような印象。

「わ!これ、来んの!?」
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だって、チラチラとデカミルフォイユが、
あっち行ったりこっち行ったりしてるの見えてたから、
てっきりあれがデセールだと思ってたのに!
ここで名物の「リンゴのタルト ブーケ仕立て」が来るんだったら、
せめてミニャにリンゴの花弁、混ぜないで欲しかったわけです!!
一度欠片を見てるので、感動半減なわけです!!
・・・・と言いたい気持ちを抑えながら、にこやかにお皿を見守ります。
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食べてみて「やっぱりさ・・・」と、沸々とさっきの思いが蘇る。
造形に比べて、食べてみると・・・「リンゴのタルト」なわけです。
どう考えてもビジュアルが大きな割合を占めてるこのスペシャリテ。
「だったらさあ、やっぱりさあ・・・・」ってね。
やっぱミニャにちょろっと混ぜちゃアカンよね・・・。

単純な疑問。・・・・毎年、一年限りなの・・・かな?
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カフェをいただいて、この素敵な時間の終焉です。
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と・・・思ってたら、狙いを定めたきりちゃんの視線が一向に外れない。
多分、「あれが食べれる」と確信を持っていたであろう、
スペシャリテのデカミルフォイユ。
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ね、本当にデカいでしょ?
僕らのテーブルには来てなかったものの、
アラブ系の石油マネー所持者と思われるテーブルや、
中国のお金持ち親子と思われるテーブル(カルトをガンガン頼んでた)には、
巨大なミルフォイユが運ばれて、その場で必要量カットされる光景が、
幾度となく繰り返されてるのを見せつけられていたわけです。
その瞳の奥には、「喰わずに帰れるか・・・・」くらいの、
執念めいた意志がメラメラ宿っていたので、
「・・・えっと、・・・・食べて行こっか?うんうん、食べるよね、そりゃ」
ってなことで、持ってきてもらったのが、こちら。
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かっる~い!なんちゅう軽さ。こんなエアリーなフィユタージュは初めてです。
ま・・・後は特筆すべきものは無いですが、
「今作って今挟んだ」という鮮度の与える儚さというインパクト。
飲み干してしまってたカフェも、フィユタージュの破片が喉に当たって、
カハカハしてたのを不憫に思われたのか、足していただきました。

楽しい時間はあっという間。
なんていうか、ま、「余裕」と言いますか、
めちゃくちゃ肩の力の抜けた三ツ星ですよね。
「パリで三ツ星を!」ってのを楽しみにしてる方にはオススメしません。
もっと過剰に「パリ感」を感じれる華美なレストランはいっぱいありますから。
でも、先に書いたように、独特の空気感はアルページュならでは。
「ガッツリ作り込んでます!」っていうより、
軽やかに優雅に気ままに、と言った感じでコースが流れていきます。
それは一枚のヴェールをかけられたような、
心地良い魔法をふんわりかけられたかの如き時間。
それは食後すぐくらいに、シャツにジーンズにサンダル姿、
かの井上陽水の「お元気ですか~?」を、
彷彿させるような軽さで入店してきたアラン パッサール氏を見て、
「カッコええ~!」と思わされてしまったことでも、
如何に「マジック」をかけられてたのかが分かります。
冷静に考えたら、全然カッコ良くない登場でしたから(笑)

それから一つ、今更ここで「アラン パッサールはね・・・」なんて、
薄い知識で軽々しく書くつもりもありませんが、
これだけはちょっと許せないと思うのが、、
このレストランを「ベジタリアン」などというチープな表現で括る輩が多いこと。
野菜が主役と言うのは情報だけに留めておいて、
目いっぱいアルページュの世界観を楽しむことが大事なんじゃないかと。
固定概念や一方向からの情報で物事を見ても、
立体的に捉えられることなど何もないですからね。

とりあえず、やっと来れました・・・。
僕が初めて勤めた「フランス料理店」のシェフの出身店に。
「フランス料理」に触れ、「フランス」を目の前に押しつけられ、
僕の脳裏に、常に「キュイジニエ」を意識せざるを得ないような、
そんな出会いをくれたお店のルーツに、遅ればせながらやっと来れました。

一つ、喉に刺さってた棘が取れたような気がしました。

さてさて、最後のミルフォイユが実はお腹に結構なダメージを与えている中、
次に向かったのは、とりあえず行ってみた「デ ガトー エ デュ パン」
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うん、年々惹かれなくなってる・・・。
オープンしたての頃は、惹きつける引力があったんですけどね・・・。
パンもお菓子も全く触手が伸びず。連れてったスタッフが数個買うに留まる。

そこから数分のとこにある、エルメのお店へ。
お腹いっぱいでも、やっぱテンション上げられますね。
ここで何個か買ったお菓子と、さっきのお店のお菓子を食べるのに、
暇そうなカフェを探して交渉(笑) 食べて良いって承諾をいただきました。
遠慮なく、関係ないカフェでお菓子を広げるの図。
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ま、この日がパリ滞在最終日のスタッフがいたので、
僕もきりちゃんも、それに付き合わされた感はあるんですが、
それにしても最初から戦意喪失のお菓子の数・・・。
「美味しそう」と、「食べれる」とは全く別問題ということを、
一口食べた瞬間に知らしめられる・・・。ギブアップです・・・。

もちろんギブアップと言って戦線離脱することを許してもらえるわけもなく、
振り分けられたノルマを淡々とこなす時間を強いられるのでした。

しかも・・・というか、よりによって・・・というか、
この日の夜に予約してるお店が、ガッツリ系ビストロ。
10年前、現ランデブー デザミの大谷シェフが勤めてた際、
現HAJIMEの米田シェフと食事に行く約束をしてたビストロ。
修業先のロワールから向かおうとしてた米田シェフは、
まさかのストに襲われ、パリへは来れず。
当時めちゃくちゃ勢いのあったビストロの中に一人投げ込まれた僕は、
借りてきた猫のように小さくなり、
残ったのは、その勢いと熱量にただただ圧倒されたという記憶のみ。
初めて「ビストロ」という文化に触れた、
というより飲み込まれた、思い出のお店。
その名は、「ラ レガラード」
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内装は未だに当時のまま。
ここが、瞬く間に埋まっていく人気店。
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相変わらず、頼んでもないのに持って来られるのが2種類。
パテは、そのままドン!好きなだけ取って良いんです。
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10年前は、頼んでも無いのに持って来られた代物に対して、
「あの読めなかった前菜は、これやったんか・・・」と勘違いし、
「こりゃゆっくり食べてたら食べ終わらんわ」と思って、
必死で食べてたという苦い思い出もあります。
もちろん「もうおしまい」と取り上げられましたけど。

コルニッションだって、ちまちま取りませんよ。
ポットごとテーブルに置かれて後は放置!パテはしばらくすると回収されます。
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パンも、こうです!だって、ビストロですから!
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そこにワインと前菜が来ると、必然的にテーブルはこうなります!(笑)
そりゃそうでしょ!だって、ビストロだから!!
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さて、興奮して順番が逆になりましたが、前菜はこちら。
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ジロールだらけとパクチーだらけ。
旨い。本当に素直に美味しい料理。
・・・が、やはり「今」なのかな。
10年前のシェフは、今のビストロブームの仕掛け人でもある、
現「Le Comptoir (ル・コントワール)」のイヴ・カンドボルド。
働いてた頃の大谷シェフからは「毎日、戦争みたい」と聞いていた武闘派。
ただ、そんな熱気もろとも皿の上に「おらっ!!」と乗せられてた印象。
歩くだけでも席にぶつかるほど密集した店内で、
読めやしない手書きの文字でびっしり書かれたメニューから、
一体何なのかも分からぬままやっとの思いで選んだ料理が、
ご機嫌なムッシュたちの笑い声の中をすり抜けて運ばれてくる。
もちろん、僕の経験値も相当低く、
圧倒されてたことでイメージ先行になってることも否めないが、
それを差し引いても、今は僕が描いてた「ビストロ」ではない。
誤解のないように付け加えておくと、今のシェフに変わった今も、
パリ中心部に新店を出すほどの人気店。
なので、勝手に僕が抱き続けてた「ラ レガラード」の面影を、
今のシェフに押しつけるほうがナンセンスなんです。
それは分かってるんです。比較したりするのは本当に好きじゃないですし。
ただ、単純には目の前のお皿を楽しめないほど、
僕の中での当時の「ラ レガラード」は強烈な印象を残してたんです。
僕に、本当の「フランス料理」を突き付けてきたお店でしたから・・・。

何度も「もう、いらないの?」とお皿を下げられかけながらも、
「いや、大丈夫!食べますよ!」とダラダラ食べてたのは他でもない、
理由はケーキの過剰摂取。単純に腹部の容量のキャパオーバー。
「やばい・・・もう本当に食えないかも・・・」と思いながらも、
運ばれてきたのが、こちら。
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もう何の肉だったかも記憶にございません(笑)
いや、本当に美味しいお店なんです。
僕の勝手な想い出と、ケーキの過剰摂取さえなければ、
もっともっと楽しめたはずなんです。
ただ・・・、無理矢理デセールを流し込んで、
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「もう一滴も入らない・・・」と言いながらカフェを飲みほして、
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言うても料理の皿数にしたら、前菜とメイン。2皿です。
19時に入って、出たのが11時半くらい。2皿に4時間半・・・。
その間、ず~~~っと少しずつ食べてました
どれだけキツかったかお察しいただけるかと思います。

なんてことない話ばかりでしたが、
なかなかじっくり向き合って話す機会の無かった、きりちゃん。
変わって来た部分、変わらない部分、変わりかかってる部分、
言葉の端々からいろいろな感情が迸っていて、
聞いてるだけで「充実した時間をパリで過ごしてるんやなあ」と、
嬉しくなりました。
昔から、放っといても自分が納得するまで止めない子だったので、
僕から何か言うとかよりも、自分が納得出来るか否かだけの問題。
好きなだけ挑んで、踏ん切りがついたら帰ってくればいいんです。
フランスでしか出来ないこと、いっぱいあります。
フランスでしか過ごせない時間、いっぱいあります。
今は「点」をいっぱい集める作業が大事で、
その「点」に意味を求めるのは先の話。
とりあえず手当たり次第「点」を集めておけば、
これから先の未来の中で、不思議とそれらが結びつき、
勝手に「線」へと繋がっていきます。
その「線」になる素をたくさん集めて帰って来て下さい。
どこに居ようが応援してます。
・・・落とし所を見失ったので、
タイミング良くきりちゃんが載った記事を貼付けときます(笑)
きりちゃん、一日付き合ってくれて本当にありがとね!
Gros bisous
by monsieur-enfant | 2012-11-21 05:33 | フランス 2012