2013年 01月 30日
深く、深く。
リアルタイムでの記事は、和歌山繋がりからスタートします。
この時期、
そう、グッと冷えたこの時期は、
ジビエ、トリュフなど、
ポテンシャルの高い食材も豊富で、
最も彼の得意とする季節。
むしろ「この時期以外は来ないでください」とも言われるくらい(笑)。
遠くて、なかなか足を運べないので、
逆にこの時期は、意地でも行こうと決めている。
いくらインフル明けの病み上がりだったとしても、です。
それは年始恒例の「ヨシノ 手島詣」として、
もはや僕の中では行事化されてしまってるのです。
和歌山 「オテル ド ヨシノ」
一年ぶりということは・・・結局、昨年は一度しか来れなかったということ。
なかなか来れないとはいえ、魅力的なコラボイベントがあったりと、
グラグラさせられたことは多々あったんですけどね・・・。
そんな不義理な僕を、いつものように温かく迎えていただき、
ちょっとホッと一息ついた所に、シャンパーニュを流し込む。
すっきりした口に、クロワッサンの油分。
その油分にシャンパーニュのシュワシュワ。エンドレスなスパイラル。
キャビアのジュレ カリフラワーのクレーム添え
手島シェフの「古典へのオマージュ」。
実際作ってみないとわからないことはたくさんあります。
その「わからないこと」を、作ることによって紐解き、
自身が解釈を深めると同時に、スタッフにも見せて学ばせる。
実験的でもあり、挑戦的でもあり、確信的でもあり。
出所はロブションの言わずと知れたスペシャリテですが、
吉野シェフとロブションの関係性もありますので、、
全く無関係なところから引っ張ってきたわけではないわけです。
僕はロブションのは食べた事ありませんが、
こういった料理の噛み砕き方や消化の仕方は、
ホント当代切っての感覚と責任感の持ち主だと感心します。
主張ある甲殻類とキャビアのジュレに、
淡く優しいカリフラワーのクレームが絡みつく。
更にウニが被さることで、双方の輪郭がグッと持ちあげられる。
「まんまです」と笑う手島シェフですが、
まんまに作ることすら容易くないのが、
こういった構成の少ないクラシックな料理。
むしろ、今の皿のように、あれやこれや散りばめられてるほうが、
誤魔化しは利くわけです。印象も分散しますからね。
この後には吉野シェフのも出てくるわけですが、
「スペシャリテ」の名は伊達じゃない。
時間も場所も越えて、必ずそれを食す相手を感動させる力を秘めています。
それは美術館に飾られている絵画と同じくらいの価値があるんじゃないか、
そう改めて思わされる一皿でした。
パンで一旦リセット
次のお皿用のワインが来ました。
熊野牛のコンソメ
真骨頂・・・。思わず低く唸る旨さ。
滋味というか野味というか、キレイなだけじゃなくて、
熊野牛の魂というか、ま、そんな部分まで溶けだしてるような力強いコンソメ。
その香りが、トリュフに押し上げられて鼻孔に纏わりつくわけです。
素晴らしいというか、凄まじいというか・・・。
カワハギのマリネ ジャガイモのスフレと共に
小休止・・・。
今日はやはり体調が優れず、食べれても飲めない日でした・・・。
チリメンキャベツ トリュフ フォアグラのテリーヌ
先にも言いましたが、何度でも食べれます。何度でも足を運べます。
そして、何度でも感動し心震えます。それが「スペシャリテ」。
美術館の絵画の如く・・・というのは、皿の上の美しさでは無く、
観る側と食べる側の違いはあれど、同じような行動をとらせているのですから、
同じような価値があるんじゃないかなぁ・・・と単純に思うわけです。
・・・あまりにデカいトリュフ用に。
舌ヒラメ デュグレレ風
最近では、なかなかお目にかかれない料理ではありますが、
なにより、いちいち擽ってくる、このビジュアル!愛らし過ぎる・・・。
そして・・・モザイクいるかな・・・・。
もちろん、ふざけてるわけじゃないんですよ。
ジビエをいただくってのは、その生命をいただくこと。
もちろん常日頃から、命をいただいてることに感謝しなければいけないのですが、
この季節は改めてその有り難さや尊さを噛みしめさせてもらってます。
ベキャスのトゥルト
「ジビエの王様」と称されるベキャスを、余すことなく使い活かしきった、
「至極の・・・」などという言葉すら薄っぺらいと思わされる一皿。
なんて言いますか、いただいてる間、
その時間さえも逆に支配されてるかのような錯覚に陥ります。
・・・伝わんなかったらスイマセン(笑)
中には「板チョコ?」ってくらいのトリュフも入ってます。
イチゴとブランマンジェ
えっと、今回デセールは割愛させていただきます(笑)
え・・・・っと、ユニークでした!
前日に、9度7分の熱が出たわけですが、
そんなの吹っ飛ばすくらいの元気をいただきました。
本当の意味での「レストラン」、
料理だけでなくそういう部分も大切に継承しようとしてる、
関西では数少ないレストラン。
そんなシェフが、「変わり映えしないんすよねぇ・・・」と一言愚痴を。
それは、料理は同じ構成でも毎年ブラッシュアップされ、
確実に進歩してると。でも、構成上、見た目に大きな変化も無いし、
その変化をヨシとしない自分がいる。でも、そうなると商業的には弱い。
「去年と同じ料理やん」と、こうなるわけですよね。
それと同じ・・・と言うと失礼なんでしょうが、
うちもそう。「新商品、新商品」みたいなことに全く触手が動かない。
毎年毎年考えてきて、今年で10年目。
それなりにちゃんと考えてるので、季節が変われば出るパンが多い。
上っ面だけすげ変えれば新商品みたいなことは絶対にしたくない。
じゃ、何もしてないのかというと、
最近じゃ地味にフガスやシャバタの生地が変わったりしてる。
でも、そんなこといちいちアナウンスしないですしね。
そうなると、「去年と一緒」とか言われるわけで。
お店として、大事にしてるところが根本的に違うんですよね。
ちゃんとやってきたことを、ちゃんとやり続けたい。
そして、進化も大事ですが、深化を好む。
深く掘り下げて、もっと理解したいし、もっと良くなりたい。
それって・・・やっぱり伝わらないんですかね・・・・。
ま、確実に「伝わりづらい」ということは自覚してるんですけどね・・・。
もっともっと本質に。
一歩でも半歩でも近づきたい。
例えそれが周りから評価されなかったとしても。
そこに向かわなくてどこに向かうんだという信念は捨てずに。
いつか、それが価値を放つ時まで。
負けない。負けたくない。
勝ちたいとも勝てるとも微塵も思いませんが(笑)、
手島シェフ始め、心に常に留めてるシェフたちに、
振るい落とされない様、弾き飛ばされない様、
喰らいついていきたいものです。
by monsieur-enfant
| 2013-01-30 18:41
| オテル ド ヨシノ