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なないろめがね

はじまりの序章。

さて、久々に、
急かされた切迫感と共に書き綴ってるわけですが、
ようやく・・・というか、多少ズルをしましたが、
昨夏に訪れたフランス旅行、やっと書き終えることが出来そうです。

最後はお食事の・・・これまたダイジェストで(笑)
「Akrame」
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例に漏れず、向かいの2号店は大繁盛。わりかし評判良いっすよ。

今回、ここで一緒に食事したのは、パリでの出店に挑まんとする若者。
いろんな失敗や予想外の出来事があった中で、
今や無事にモンパルナスにてオープンし、日々奔走しています。
キラキラして前を向く恐れを知らない眼差しはとても眩しく、
無条件に応援したくなりますし、こっちまでエネルギーをもらいました。
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「自分なんて・・・」って、いつまでも萎縮して挑んでこない若者なんかより、
よっぽど、よっっっっぽど接してて気持ちよかったです。
Akrameは、いわゆる前衛的なレストラン。
多皿構成で、工夫した仕掛けが度々顔を出します・・・が、
同じコース中に、同じパターンが何度か出てくると、
さすがに「また・・・?」ってなりますよね。
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単純に、美味しいとは思います。が、ちょっと演出がウザいと言いますか(笑)、
ここは好き嫌いが分かれるところ。と、なんせ照明暗めです。
僕は幸い、とても熱い若者のおかげで、あっという間の時間でした。

看板もなく何気に営業してるこちらのお店。
「abri」
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こちらは日本人が経営してるお店。
なかなか触手が向かなかった「パリで頑張ってる日本人のお店」。
多分、僕的に初めてになるんじゃないかな?
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店内はコンパクトで、清潔感もあって気持ちよい空気。
そんな中でユルっとランチが始まります。
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シェフは、ロブションやタイユバンで修行された経歴。
そういったシェフが、こういうカジュアルなお店で腕を振るうってのも、
最近じゃ全然珍しくなくなってますよね。
僕が行ってた10数年前だったら、事件でしたよ(笑)
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2012年にオープンされてるんですね。
僕が行ったのが去年だから、まだ1年くらいしか経ってなかったんですね。
でももうすっかりファンを掴んで、お客さんの楽しげな空気で満たされてました。
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コースは昼夜、共に1種ずつだったと思います。
値段も25€と40€と、極めてリーズナブル。
で、クオリティ高いっすよ、マジで。
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お昼の肉か魚の選択以外は、基本料理はお任せ。
メニューにもメニュー名は書いてません。
でも、決して押し付けがましくなく、今日は何をいただけるのか、
楽しみに思えるお店だと感じます。
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最寄り駅がPoissonniereなので、
日本人観光客が多く泊まるオペラからも近いですね。
機会があれば、是非行っていただきたい・・・ですが、予約必須です。
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ランチですので全部載せてみましたが、
思えば、こういったお店の記事を丸々書くのも久しぶりですね。
一時はよく書いたものです。よく食べたものです。
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一店丸々って意味では、
もしかしたらこのお店が最後になるかもしれませんね。
あとは長くなるのでダイジェストですから(笑)

そういえば、僕がパリで働いてたのが27歳の頃。
食べ歩きなる贅沢なことを初めてしたのも、その時でした。
労働の象徴として仕事終わりにもらってたバゲットと、
三日間に分けて食べる自炊した鍋で日々の飢えを凌ぎ、
休みの日にはケチったお金を握りしめて、
毎週食事に出かけたものです。
その先に見据えていたものは、やはり「キュイジニエ」という存在。
初めて交わった頃は、ただただ圧倒されたものでした。
意識も、知識も、とてもじゃないですが太刀打ち出来ませんでした。
でも、もしもう一度、どんな形になるかわかりませんでしたが、
再び交わる機会があった時に、また「及ばない」は嫌だったんです。
また同じように「太刀打ちできない」と思ってしまうことは、
自分自身が許せなかったんです。
僕は実は割と寛大なので、最初のミスは許すんです。
だって、初めてですから。
ただし、同じことを策もなく繰り返すことは絶対に許しません。
無策なら必ず繰り返します。もはやそれは必然になります。
偶然ではなく、案の定の結果なのです。
それを防ごうとするから考えるわけだし、
実際はそれを防いだという目先の成果より、
考える過程を繰り替えすことのほうが大事だったりでするわけです。
出来る限りのジャンルを食べ、行ける限りの地方へ行き、
雰囲気を感じ、空気に触れ、
その場に在るべき「pain」とはどういう佇まいなのか、
どう必要とされ、どこに差異があるのかを考える。
そうやって彼らと対峙する術を集めていったのです。

「キュイジニエ」というフランスの食を司る職業に対して、
「ブーランジェ」という同じくフランスの食を司る職業として、
僕は多分そういう意味での「同業者」になりたかったんだと思います。

そんな当時の僕が、
「・・・40歳になったら、来れるような自分になっていたい」、
そう思って足を運べなかったお店がありました。
フランス料理に触れる経験そのものが浅すぎた自分には、
とてもじゃないけど早過ぎると思ったんでしょう。
そのレストランの名は、「L’AMBROISIE」
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正確には、昨年ですから39でした。
ただ、出発前には既に、
来年はおそらくパリには行かないだろうことを、
なんとなく薄々わかっていたんです。去年の来年ですから今年ね。
なので、「40には行こうと思ってたけど行けなくなっちゃうなあ・・・」
と思ってたところ、「岩永さん!L’AMBROISIE行きませんか!」
そう声をかけてもらったんです。本当にたまたま偶然だったんです。
僕が当時に比べて行けるような経験を積んだとかではなく、
これは「行っとけ」という流れなんだろうなあと解釈して行ってきました。
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当時とは作り手は変わっていますが、
本や映像でしか見たことの無かった料理が運ばれてくる至福。
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そう、僕には単なるここで過ごす時間ではなく、
12年間の諸々の歳月と感情が交錯する、
とてもとても感慨深い時間だったんです。
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40歳ではなく39歳。
1年ズレたこのタイミングでここに来れたこと。
それは、後々分かることですが、
僕にとって非常に絶妙なタイミングだったんです。
迷ってた大きな決断を、後押ししてくれる踏ん切りにもなりました。


さ、今回のパリで、なんだかんだで一番良かったのは、こちら。
「Astrance」
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ちょうど僕がいた頃に、疾風のごとくミシュランに滑り込んで来たんです。
ただ、僕の遠い記憶ですけど、
当時の店内は、もっと奇抜というか、
確か色違いのカラフルな椅子が並べてある写真を、
雑誌かなんかで見た気がするんです。
でも確か、帰国が決まってた・・・頃じゃなかったかなぁ。
最初から長く居れないのがわかってた中で、
やっぱり自分に刷り込みたかったのは、フランスのトラディスィオン。
気になってたそのレストランは、瞬く間に三ツ星まで駆け上がったのでした。
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それと同時に秀逸なのは、日本人シェフも含めて、
本当に多くの優秀な人材を輩出してること。
味覚や技術だけでなく、思想や姿勢、人格など、
人が学ばんとし引きつけ止まない何かが、ここにはあるんでしょうね。
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ここも、L’AMBROISIEと同じく、
声をかけてもらわなかったら来れてなかったと思います。
想いはあれど、どうもなかなか一歩を踏み出せなかったので。
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思ったよりストレートな料理でしたが、
十二分に楽しませてもらえるコースの起伏の妙。
そして絶対的に、美味い。決して外さない。
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そしてサービスも秀逸でした。
おまかせのコース設定ですが、全然レストラン主導じゃない。
僕らは僕らできちんと料理も時間も楽しませてもらえる「幅」が、
付かず離れずの距離感の中に何気に忍び込まされている。
ワインのチョイスは言わずもがなです。ドンピシャどころかズバドンです。
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こんなに隙がなく、かといって堅苦しくなく、
楽しまされながら驚かされ、心から「来て良かった!!」と思えるお店って、
やっぱり少ないと思います。うん、もちろん相性もありますし。
でも、レストランってやっぱり一定以上の時間もお金も預けるわけですから、
「お客さんに満足して帰ってもらおう」なんて小さい目標立てずに、
その向こう側まで引きずり回したろくらいの意気込みは欲しいわけです。
だってもう、「食」というジャンルじゃなくて、
立ってる舞台は「エンターテイメント」でしょ?
ま、表現は乱暴だったかもしれませんが、
たとえシリアスな舞台だったり、泣けるような映画だったりしても、
それくらいの意気込みで作ってるわけですよ。
なんかね、これだけ美味しいものを作れるシェフが日本人にも増えてるのに、
なかなか日本でそれを感じれるお店は増えて来ないですよね・・・。
それが「店作り」の難しいとこなんですよね・・・。
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この夜は、良い観劇を終えたあとのような、
圧倒的な余韻に包まれながら、
心地よい夜風に吹かれるまま、トロカデロからのシャイヨ宮経由という、
個人的にエッフェル塔を眺めるのに結構好きなルートで、こんばんは。
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終電を逃すんちゃうか的な雰囲気にはあえて誰も触れず、
ただただ毎時ちょうどのピカピカエッフェルを待つのでした。
酔っぱらいの大人が気持ち悪いくらいワクワクした顔で待ってると、
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ピカりました!(笑)・・・っていうか、珍しくもなんともないんですけどね。
この距離で見ると、やっぱりテンション上がります。



帰国してから、なかなかフランスに行けなくて。
借金だけで開店し、お店やるのでやっとで、時間も無ければお金もない。
そんな想いを知ってか知らずか、
旧友が結婚式への招待状を送ってくれたのが2008年。
開店から4年、帰国から5、6年は経ってました。
クソ遠いリヨン郊外の街から送られて来た招待状に、
ここで行かなきゃもう行けない!と思い、
結構無理して行った気がします。
その時は、パリを歩いてるだけで泣けてきたっけ。
スタッフに「帰って来ないんじゃないか」って、
本気で心配されたりもしましたね。
でも、お客さんも含めて、待ってくれてる人がいるってことに、
気づかされたのもこの旅から帰って来た時でした。

そっからもちょっと空いたんですよね。
本当は、1年に1回くらい行きたかったですけど、
現実はそんなに甘くなくて。
結局、そこから3年経って行ったのが一昨年。
この時も、2008年ほどじゃないけど、
常に胸いっぱいで過ごした気がします。
なんか、フワフワしてっていうか、
落ち着いてるようで浮ついてるようで。
僕にはやっぱり、とてもとても居心地の良い場所なんです。

でもね、僕にはもう1つ顔があって。
それは、小さいながらも、
1つの組織のトップをやらせてもらってるってこと。
その組織が、7年、8年、9年と歳月を重ねて行くわけです。
比例して、スタッフの経験も積まれるわけですし慣れも生じます。
うちは、変わらない強さもあるとは思いますが、
物事には常に対局にある別の問題が付随してくるものです。
「変わらない」にも、メリットとデメリットがありますよね。
そろそろ組織に変化や刺激が必要な時期であることは、
僕自身、分かっていましたし、探してなかったわけではありません。
10年という1つの区切りが近づいた昨年のフランスで、
一番強く思ったことは、「一度、ここから離れなきゃ」ということでした。
心地よい水の中で泳いでいる時間は、
少なくても今のタイミングではプラスに働く要素は少ないと感じたのです。

そんなタイミングで、本来今年(40歳になるので)行くはずだった、
「L’AMBROISIE」に1年早く行くことになったのは、
「来年、来てる場合ちゃうでー!」って、
前倒ししてもらったのかな、と思ったり。

そして、パリの象徴であるエッフェル塔のライトがフッと消えたとき、
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「ほな、またね」と、

「しっかり次の行き先を見つけてくるんやで!」、

そう言われたような気がしたんですよね・・・・。
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by monsieur-enfant | 2014-04-05 00:33 | フランス2013