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なないろめがね

TARTINE BAKARY

昼間はシャツ1でも過ごせる暖かさのサンフランシスコですが、
夜は思いのほか冷え込みますね。
さて、日本の倍くらいのデカさはあろうかという、
ゴミ収集車の迫力に圧倒されながらも初出勤です。
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「グンモーニン!!」
・・・・・あかん、耳から入ったフランス語と違って、
英語だとどうしてもカタカナの発音になってしまう!!
でも、ここで臆してる場合ではありません。
「ナ・・・ナイスミーチュー」
「Hi!!Good morning!!How are you?」
「ア・・・・アイムファイン・・・エンデュー?」
わーーー!!中1の教科書通りの返ししてるーーー!!
ハズい!!!かなりハズい!!!!
カタカナ英語に顔面がみるみる熱くなっていくのが分かる!!!
あかんあかん・・・・、
中1の2学期で止まってる英語力を公然の場で露呈するのは、
いくらM気質の僕でも堪え難い自虐行為やわ・・・。
それに・・・・・マジで返しが聞き取れない&理解できない。
英語を公用語としたこの国で、はたしてなんとかなるもんなのか・・・。
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さ、仕事に取りかかるわけですが、
このお店が少々伝説的になってる理由の一つに、
「夕方にしかパンが焼き上がらないのに、
そのパンが連日すぐに完売する」って触れ込みがあるんです。
夕方にしか焼き上がらない理由をいろいろ考えたりもしたんですが、
来てみてすぐ分かったのは、
ここのデカいオーブンが、各段で温度調節を分けれないってこと。
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つまり、オーブン全体で1つの温度設定しか出来ないので、
例えばパンを焼く高温に設定してしまうと、
クロワッサン等には高過ぎて焼けない。
逆にクロワッサン等を焼く温度帯だとパンを焼くには低過ぎる。
なので、午前中にはクロワッサンを中心にしたヴィエノワズリー、
えっとアメリカで言うところの「ペストリー」しか焼き上がらないわけ。
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そこから温度を上げて、午後からパンを焼き始めるってこと。
つまり、別に製法云々が理由だったわけじゃなくて、
ようは窯の都合上、どうにもこうにも仕方なかったってこと。
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ただ、普通はそこで「仕方ない」とは割り切れない。
だって、やっぱりオープンからなるべくパンは揃えたいもん。
朝からパンが欲しいお客さんを逃しちゃうことになるだろうし、
「朝からお昼はクロワッサンを買いに来てくれるお客さん、
夕方にはパンを買いに来てくれるお客さん、
分かれて来てくれるから、お客さんは倍来てくれるんだよ」
いやいやいや!!なんだその理屈!!
朝から両方並んでたら、ついでに両方買ってくれるだろ!!(笑)
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でも、結果的にそれが付加価値になってるのは事実。
そして、僕の尊敬する経営者は、
総じて思い切りが良く振り幅がデカい。
仲良くさせてもらってるパリのブーランジュリ、
「デュ パン エ デジデ」のシェフ、ヴァッスールもそう。
イチオシである「パン デザミ」に製造ラインも特化し、
「フランスといえば」のバゲットですら、
「効率が悪い」と止めてしまったうえに、
どこのブーランジュリでも置いてるカスクートなども、
スタッフが休んで自分がカスクートの製造に入った時に、
あまりに面相くさかったらしく、「効率が悪い」と止めてしまった。
ただ、自分たちの強みを生かせる商品に集中した結果、
完全に他店との差別化に成功し、他の追随を許さない店になってる。
ここタルティーヌベーカリーのチャドもそう。
やっぱり普通なら何とかして、
朝からパンもクロワッサンも並べようとする。
でも、そこを早々に「仕方ない」と判断し、
それでも営業出来るスタイルを考える。
結果としてなのか確信犯なのかは分からないけど、
それがこの店の付加価値になってるわけ。

ちょいちょい出てくる「普通なら」って言葉。
これが結局は平均化を生み、個性を奪っていく。
不自由や不完全は制約を生み、
他者との「違い」という、
一種の不安要素を掻き立てて行くわけですが、
そんな「違い」や「制約」があるからこそ生まれる、
「尖り」もあるわけです。
・・・いや、逆ですね。
満ち足りた環境では間違いなく尖りは生まれません。
不自由であり不完全であるから、
周りと同じように出来ない自分が不安で仕方ないから、
だから考えることがある。考えれることがある。
その狭い制約の中で収まってしまったら勝てないんですもん。
制約や不十分を言い訳にして生きて行くか、
ギンギンに尖って環境もろともぶち抜いてしまうか。
それは多分、経営戦略や理念とかちっぽけなものじゃなく、
どっちを選んで生きて行くかという「生き方」なんだと思います。

今現在は、チャドは店にはほとんどいないけど、
開店当初から朝はスタッフに任せ、
昼のパンの時間から出て来てたらしい。
その間、何をしてたかというと、
子供と遊んだり、趣味のサーフィンをしてから出勤してたみたい。
・・・日本の職人が最も苦手とするスタイルとスタンスですね(笑)
本当、フランスもそうだし、ここでもそう、
日本人がどれだけ馬鹿みたいに働いてるかってことを痛感します。
だって、それはシェフだけじゃないんだもん。
シェフだけが店を任せてそれをしてるわけじゃないんです。
もう気質ですよね。生まれ育った環境と言いますか。
スタッフみんなが、自分の時間を大事にする。
だから働けるし頑張れる。それを阻害されるくらいなら働かない。
僕らは違う。家は、寝に帰るようなもの。
特にパン屋は、子供が寝てる時間に帰り、寝てる時間に出て行く。
ま、もちろん家族も日本人なので、
我慢してくれたり応援してくれたりしてくれるわけですが、
相手がフランス人やアメリカ人ならおそらく一発アウトですね(笑)
そこ、なんとかしなきゃって、うちも10年前から思ってます。
お客さんを満たすのはもちろん大事なこと。
でも、じゃあその為に作り手がスカスカになってしまうことを、
僕は良いとは思わないし、お客さんだって思わないと思う。
でも・・・、10年の間に、人も雇い、機械も入れてみたけど、
残念ながら、たいした改善は出来てないなあ・・・・。
どれだけ良い仕事しててもね、
やっぱりプライベートの時間も充実してないと、
どこかぽっかり埋まらない場所が出て来ちゃうんですよ。
それは、40を前にしてみると、昔より強く実感しますね。

さ、ちょいちょい画像を挟んでますが、
さっきも言ったように、朝はクロワッサンチームが厨房を使います。
あと店にはお菓子やキッシュなどを焼くチームが出て来てて、
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窯を一緒に使って、せっせとオープンに備えるのです。
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クロワッサンチームは、朝から各種を成形し、
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昼までに全部焼き切るためにガンガン焼いて行きます。
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フランスでは見たことなかったシナモンロールもありますよ。
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で、昼から窯も作業場もパンチームに渡さなきゃいけないので、
窯と同時に仕込みも始まります。
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ま、一応、自分の店じゃありませんので、
レシピの載った本も出してるとはいえ、
「こうしてこうして・・・」的な感じは書きませんので悪しからず。
ただ・・・・・クロワッサンの生地の量とか、
いちいち半端ないっすからね(笑)
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そうこうしてるうちに、出勤してくるスタッフも増え、
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お店も開店時間を迎え、サンフランシスコの1日が始まります。
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僕はと言いますと・・・
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なんかもう普通に鬼のような数のシナモンロール、
仕込んでたりするのです(笑)

アメリカの材料事情も全然知らなかったですが、
とりあえず細かいとこ抜きにすると、かなり美味しいです。
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ま、このお店がそうとう良い材料選んで使ってるのもありますが、
クロワッサンも美味しいし(めちゃデカいすけど)、
いわゆるアメリカンスイーツ的なものも甘過ぎない。
シェフのチャドのセンスは本当に良いんやろなと感心する・・・。

いやあ、楽しいっすよ!
違う環境に、違う製法、違う言語に、違う人種。
全部「同じ」な日本にいると麻痺してくる感覚が開いてきます。
そこで自分がどう在るのか、どう在れるのか。
いやあ、本当に楽しい!出来ないことや分からないことも含めてね。

でも、なんかパリで感じてたような、
鋭角なゾクゾク感とは違うんです。
ドクドク鼓動が高鳴る感じとは違うんです。
ま、その時の年齢とは違いますが、
ここサンフランシスコという街や人は、
とってもリラックスしてて、とっても気持ちがカジュアルなんです。
もちろん主張はあれども当たりも柔らかい。
なんか、空の青さや広さのような人たちだらけ。
ま、多分ここタルティーヌが、
そういったマインドの人たちを惹き付けてるんでしょうけどね。

さ、パンチームと交代の間に、ささっと賄いです。
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こんなのでも画になるんだよねえ・・・・。

ただ、想像以上にクロワッサンチームはハード。
基本、二人体制ですが、なんせ全部がデカくて重い。
それを女性が毎日やるのは相当な体力が要ります。
朝の4時半から12時までと、
日本で言ったら羨ましいくらいの労働時間に週休二日。
ですが、その時間でこなす仕事の量は半端ないっすよ。
細かい仕事が多く種類も多い日本の仕事とは、
単純比較出来ませんけどね。

そうこうしてるうちにパンチームの仕込みが始まります。
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って、彼ら、ここまでに小一時間ダラダラしてますけどね(笑)

で、お気づきだと思いますが、ここのスタッフ完全に私服です。
この恰好で来て、この恰好で働いて、この恰好で帰ります(笑)
上の仕込みやってる女性も、完全に販売の人と思ってましたもん。
それがおもむろにミキサーの前で仕事し出すから驚きました。
なんか・・・・、そんな空気なんです、サンフランシスコ(笑)
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いやあ、それに輪をかけてパンチームはユルい。
ま、彼らがユルいってより、やっぱりパンの仕事はユルいんです。
先にも言ったように、日本みたく細かい作業や多品種だと無理ですが、
シンプルなパンを大きなポーションで焼く仕事は、
量は多くても時間は知れてるのです。
だからフランスも、ここも、量は多くても半日ちょっとで終わるんです。
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あとは、パンに合わせて時間を過ごすだけ。
パンが心地よいように環境を整えてあげるだけ。
大事なのは技術じゃないんです。
見守り、育むための距離感と関係性なんです。
だから僕はずっと自分は「生産者」だと思っています。
キュイジニエやパティシエとは、ブーランジェは少し違うんです。
ブーランジェにはブーランジェの大きなマインドがあるんですよ。
なんか・・・・、ま、今話すと長くなるからいいや(笑)

そうこうしてる間に、窯の温度も上がり、焼く準備にかかります。
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さっきチラッと写ってたと思いますが、
ここのパンはほぼバヌトン(発酵かご)を使います。
なので、作業台の上に渇かすスペースを作ってるんです。
並んでるバヌトンは昨日使ったぶん。つまりこれが1日分。
正直、えげつない量です。
で、乾かしてる1日分のバヌトンが並んでるってことは、
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そうです、生地の入った本日分のバヌトンが同量くらいあるんです。
この数のバヌトンを一気に買おうと思ったら破産しますよ(笑)

ラックに積み上げたバヌトンに入ったパンたちを、
窯の前まで移動させます。結構、段差もあるので慎重に。
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到着!!
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バヌトンからひっくり返してパンを出して、
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チャッチャとクープ入れて、窯に放り込みます。
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さ、その間に、仕込んだ生地のほうに戻らなきゃね。
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本当にここの生地はタップタプ。
保形できる本当にギリギリのところ。
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ここまでの行程も大概ですが、
ここからの成形は目を疑うようなもの。
こういう生地を、しっかり保形するための特殊な成形を施します。

あ、そうこうしてる間に!!
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そうそう!!これこれ!!この子らに逢いに来たんだ!!
あの、本の表紙で見て以来、ずっと逢いたいと思ってた子らに、
今、こうして窯から出たての距離感で出逢わせてもらってる幸運。
いやあ、なんとも言えない。本当、なんとも言えない感情です。
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焼き上がったパンたちは、
すぐさまガッサガサと予約用の袋に詰められラックに並んでいきます。
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今日仕込んだ生地も、ちゃんとバヌトンのベッドに収めて、
ゆっくり寝てもらう涼しい部屋へと移動し明日を待ちます。

で、ここの感心するところは、
海外にしちゃ珍しく掃除を徹底してるところ。
夜だけじゃないんです。
昼の入れ替えの時でも、一度ちゃんと掃除します。
なまじフランス的な感覚でいると、
サボってるやつみたいになっちゃうくらい丁寧に掃除します。
ま、労働時間も短いし、余力もあるってのも分かるんですよね。
日本は、終わった頃には早く帰らなきゃ寝れないですからね・・・。
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さーてと、とりあえず初日はおしまい。
大体の製法の流れは朝も夜も把握出来たんで良かったです。
あと、やっぱり大事にしてるところは一緒だったこと。
「うんうん、やっぱりそうだよね」
そう思える仲間に出逢えたことに、心から感謝。
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思ってるだけじゃわからないこと、
世の中にはいっぱいあります。
動いてみなきゃわからないこと、
世の中にはいっぱいあるんです。
じゃ、思ってるままで後悔するのか、
動いてみて後悔するのか、
同じ後悔があったとしても、
動いてみたほうには必ず学びや気づきがあるはずです。
思ってるだけの人、足下を見てみてください。
立ち位置、1ミリも変わってませんから。

僕は、良かった。
もちろん何したって後悔などしませんけどね。

サンフランシスコに来てみて良かった。
タルティーヌに来れて本当に良かった。

そこに絡まる全ての必然、全ての出逢いに、
心から感謝します・・・・。
by monsieur-enfant | 2014-04-12 03:20 | サンフランシスコ 2014