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なないろめがね

覚えてますかね。
以前、ソウルの東大門にて、
3ヶ月、らしくない「顧問」的なお仕事をさせてもらったことを。

そのときに入り浸ってた場所がありまして。
会社が大きかったもんで、「図書室」なるものがあったんです。
韓国の本はもちろん、日本やフランスなど、
世界中の食に関する本が集められていました。

そこで、一冊の本に出会いました。
普段パンの本なんか「ようこんなん本にするなぁ・・・」、
程度にしか思わない僕が、
一瞬で、「わ!旨そ!」と釘付けになりました。
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そのお店の名は「TARTINE BAKARY」
そこに映る、おおらかで表情豊かなパンに会いに行きたくなりました。
写真から香りが漂ってくるようなパン、なかなかないですから。

その時からですかね、薄っすら「アメリカ」という存在がチラつき始めたのは。

そんな時、当たり前のようパリに行ったのに感じてしまった違和感。
僕個人としては、今でも暮らしたい街であることに間違いはない一方、
だからこそ、組織として変革を迫られてる時に来る場所ではないなと。

昨年の9月、パリを発つときには決めてました。
「しばらく、お別れしよう」って。

それからしばらく考えてました。
毎年9月のバカンス、フランス以外となると・・・・って。
で、候補は3つあるんです。
やっぱり異文化の仕事ですから、僕はもっともっと掘り下げたい。
僕は技術で仕事をするタイプではないので、
「パンを焼く」という行為の本質や、
それを焼くことを生業にしてる人のナリに触れたい。
華やかでなくても、有名でなくてもいいから、
生々しい生活の中にあるパンや職人に触れたい。
そうなると僕の中では、トルコやモロッコなんですよね。
なんとなく、ですけど。

と、もう一つは、「アメリカ」。
なぜ、ざっくり「アメリカ」かと言いますと、
本当に興味なかったので、全く地理がわからない。
NYだったりLAだったりは聞いたことありますけど、
アメリカのスケール感に合わせた若干の拡大はあれども、
渋谷と品川くらいの距離感だと思ってましたもん。
合わせて「大都会」みたいなね。
カルフォルニアってとこと、サンフランシスコってとこと、
別々に存在してる街だと思ってましたし。

アメリカに興味を持ち始めた大きな理由の一つには、
先に書いたようにタルティーヌの影響は大きいと思いますが、
もう一つ潜在的な理由があったんです。
それは、僕の中の燻ぶりと、
勝手に背負い込んできた荷物による精神的疲労です。
僕は常々言ってることの一つに、
「パンは僕にとって表現媒体。
パン職人である以前に表現者であらねばならない。」
という、スタッフなんかは聞き飽きたであろうフレーズがあります。

じゃあ、僕のパンは自分の何を表現してるんだろう。
この店を始めた6年目7年目くらいから、
その自問自答にずっと苛まれてきました。

僕が「表現してる」と思ってたことなんて、
自分が美味しいと思う味や香り、食感。
そして経験に基づくその組み合わせの妙だったり、
想いだったり感じたことだったり。
所詮・・・・とまで卑下するつもりはないですが、
うん、結構表面的なものが多いんですよね。
いや、ちょっと違うかな。決して表面的なものでもないかな。
でも、いわゆる「表現」の根っこの部分って、
もっと深いところの、
もっと自分を解放させたところにあると思うんですよ。

僕は、そこは開けてなかったんですよね。
いや、開けれなかった、のほうが正しいかな。
なぜなら僕のパンの表現とは、
パンとは似て非なる、「pain」としての表現なのです。
原則として「フランス」があり、
歴史、文化、精神性という、
重く深い定義という名の縛りがあり、
縋り付く場所であると同時に、
囚われ抜け出せない場所でもあったんです。

その原因が過剰な敬意というのか、
はたまた敬意という名の依存というのか、
そこまでハッキリわかったわけではありませんが、
でも、そこからある意味解き放たれない限り、
シュクレクールに変化は生まれないのは明らかでした。
良い意味、「フランス」に固執し続け、
悪い意味、「フランス」に囚われ過ぎてきたことが、
僕という人間の内側から出てくるものを表現することへの、
源にもなり足枷にもなっていた気がするんです。
そこに息苦しさを感じてきてたところに、
拡声器でも使わない限り振り返ってももらえないような場所から、
毎日大声で「フランスはね!」「Painってね!」って、
頼まれもしないのに勝手に叫び続けた疲労が蓄積して、
心の上に重たく圧し掛かっちゃってたんでしょうね。
なんか、晴れない日が続いてたんです、数年。
そこからの抜け出し方が、全く分からなかったんですよね・・・。

そんな年の瀬迫るある日、
東京の尊敬するシェフからパンの打診がありました。
「2号店で出すパンを、岩永さんとこで何とかできないか」と。
店はもちろん東京です。
驚きましたが、どうやら本気のよう。
どんなパンをイメージしてるのか、そんなやり取りの中でした。
「こんなパンはどう?」と送られてきた写メが、
この文章だらけの記事の冒頭に、
一枚貼り付けられてる本と同じ本の写メだったんです。
思わず、「あ!そこ、今唯一行きたいと思ってるパン屋ですよ!」
と、一切そんな話もしたことないのに同じ本が出てきたことに、
興奮気味にメールを返すと、
「あ、そうなの?ちょっと待ってて」、と。
あ、仕事中で手が離せなくなったのかなぁ・・・と思って、
今度の夏のバカンスには行ってみようかと思ってる旨を、
ウキウキしながらメールで送ろうとしてたところ、
「ちょっと待っててね。今、研修の打診してるから」
・・・・・ん?え!?いや、ちょっと!!!
こっちの予定も一切聞かれてないし!!!
冗談かと思ったら数分後、
「あ、来て良いって」
・・・・って!、こっちは行くとも言ってなければ、
むしろ行きたいとすら言ってないんですけど!!
「大丈夫、英語ベラベラの、
日本№1ベーカーが行くって言っといたから」
いやいやいや!!ドSもええとこ!!!
英語力、中1の2学期でつまずいたまんまやし!!、
もうこの際、日本№1ベーカーのくだりは、
どうでも良くなるくらい英語が無理過ぎますから!!!
「・・・・いやぁ、うち、バカンスが夏なもんで、ですね。
ちょうど夏にサンフランシスコ行こっかなぁって思ってたんです」
「・・・・そう?ちょっと残念だねぇ」
・・・・・って!勝手に無許可で申し込んどいて、
断るこっちがヤボみたいな空気出されてるんですけど!!!
「もう行きます行きます!!ここまで運んでもらったんですから、
あとは伸るか反るかですからね!!行きますとも!!」
「そう?それは良かった。岩永さん、きっと引き寄せですよ。」
・・・・・・って、違ーーーう!!!引き寄せではなぁいっ!!!
むしろハメられた感が凄いんですけどーーー!!!
「そういうとこ、岩永さんスゴいですよね」
・・・・・・・って、いやいや本当、
マジで聞きますけど、逃げれなくしたの誰ですか(笑)


というわけで、ものの半月もない期間での出発という、
全く予定のなかったサンフランシスコ行きが急遽決まったのでした。
by monsieur-enfant | 2014-04-08 00:56 | サンフランシスコ 2014