1
2009年 10月 13日
ここにある確かな「違和感」
ちょっと早めの時間にお昼御飯。その前にお隣のお店へ。
溜池山王「ツッカベッカライ カヤヌマ」

以前・・・と言っても3年くらい前かな?
夏場の猛暑の中、東京のお菓子屋さん巡りをしていたとき、
このお店が見つけられず散々探し回った歩きまわった挙句、
「夏休み」と書いた張り紙を見た時の衝撃は、今も忘れられません。
それ以来、東京に来ても「行かへんもん」と意地を張ってましたが(笑)、
やっとあの夏の悪夢を払拭できる日が来ました。
店名でわかるとおり、フランス菓子ではありません。
オーストリア国家公認コンディトールマイスターの作るウィーン菓子です。

・・・・・・これ、東京なら普通なの?
このサイズのザッハトルテ、840円(!!)
美味しかったですよ。よくあるザッハトルテとは明らかに別物。
それにオーストリア国家公認のマイスター、
日本じゃ、ここでしか食べれない味なのかもしれません。
でも他のお菓子も大体これくらいの価格。
ウィーン菓子って庶民じゃ食べれないものでしたっけ・・・。
その系列店。ま、系列店というのもおこがましいくらい、単独で名を馳せてるお店です。

オーストリア料理「レストラン カー・ウント・カー」

こちらはオーストリア国家公認キュッヘンマイスター。
入ってみると、なんとも言えない「ウィーンな感じ」。
いつもの「フランス」とは明らかに違う空気。
ちょこちょこ行ってるのでレストランにも一般の方よりは慣れてますが、
「わからない」世界観が、久しぶりに良い緊張感を生んでくれました。
メニューもさっぱりわかりません!説明受けても予測もつきません。
でも、この感じる違和感の全てが、
「異文化」であることの証なんじゃないのかなぁと思うんです。
中には「わかりにくい」と仰る方もおられるかと思います。
でも異文化ですからわからないのが大前提。
そのわからないことを楽しんだり興味を持つことが、
異文化を楽しむということやと思うんです。
せっかく異国の文化を紹介してくれてるんですから、
「わからない」と拒む前に、異国の地へと想いを馳せてみましょうよ!

まずは、えっと・・・ツィラタール・ビアー

えっと・・・なんだったっけ。
チロル地方の・・・、う~・・・知らん言葉が全然頭に入らんっ!
なんでも、ここでしか飲めないビールらしい。
今日は、よりオーストリア色の強いものに触れてみたいので即決。
塩味の薄いサブレみたいなのが出てきます。

パンは、カイザー・ゼンメル

これはコース外。
お店に入ってきた時から目に入ってたもので・・・

バインシンケン

幻の豚とされてる「梅山豚」(めいしゃんとん)から作ったハムです。
ふ~ん・・・くらいでしか聞いてなかった説明ですが、
「飼育してる農家さんは塚原牧場さんだけなんです」
「・・・ん?一件だけ?」
「日中友好の証としてパンダの次に贈られたのが梅山豚なんです」
「え!?パンダの次っすか!?」
惹き込まれる単純な僕(笑)
だって、パンダの次ですよ!
日中友好のジャイアントパンダの次って、すごくないですか!?
・・・・あれ?興味ないですか?(笑)
調べてみると、パンダの次に贈られてすぐ、輸入禁止品目に指定され、
現在100頭くらいしかいないそうです。
オーストリア前菜盛り合わせ

派手さはないですが、一つ一つ良い仕事。
創作性より普遍性、時代を今に繋ぐ料理に触れる一口一口。
フリタッテンズッペ

ウィーン風コンソメスープ。細かく刻まれた大量のシブレットが入ってます。
他にふやけたヌードルみたいなのも大量に入ってます。
そのせいか、どこか家庭的。どこか温もりを感じるスープ。
寒い冬のオーストリアで、スープを囲む家族の画が浮かぶような温かさ。
バッハサイブリング ミット シュベックマンテルン

チロルの生ハムを巻いた大岩魚のソテー。
しっかり火の入った、むっちりした白身。白ワインのソース。
フランスやスペインの「今」とは違うスタンス。ただ、確固たるスタイルを感じます。
下に敷いてるサワークラウトも、ドイツやアルザスのそれらとは違い、
フォン・ド・ヴォーなどの甘みを感じる独特の味わい。
アプフェルシュトゥルゥーデル

コンディトールマイスターのアプフェルシュトゥルゥーデルと、
キュッヘンマイスターのバニラアイスの共演。
このアプフェルシュトゥルゥーデル、
アプフェルシュトゥルゥーデルと入力するのに結構時間かかります(笑)
小さいカタカナとか、ようせんし・・・。
それはさておき、繊細なお菓子。
隣で売ってたのを見ましたが、その想像を絶する繊細な衣にリンゴが包まれてます。
でも確か、これも800円弱だったような。
あ~、出来たらもっと皆に食べてもらいたいのになぁ・・・。
ウィナー・メランジェ

うま~い、これ!
昔、「ウィンナーコーヒー」とか結構喫茶店で見てた時は、
少なからずウィンナーが入ってると思った人もいたはずですが、
それ、「ウィーン風」ってことね。
なので「ウィナー」とつくこのコーヒーを頼んでみましたが、
何がウィナーなのかはわかりませんが相当気に入りました。
スタバとかに無いですか?・・・無いですよね・・・。
なんか、泡がメチャクチャしっかりしてて、
限りなく泡に近いマシュマロくらいしっかりしてます。
あったか~い・・・・。
何ともあったか~い料理でした。
なんと言いますか・・・・東京とか、パリとかじゃなくて、
ちゃんと「ウィーンで」いただいてるような気持ちになるお皿でした。
見た目の洗練であるとか、食材の奇抜さだとか、全くの無縁な料理ですが、
「ウィーンでは、こういうのをお母さんが子供たちに振る舞ってるのかなぁ・・・」とか、
背景に風土の温もりを覚える料理でした。
シェフは「日本人初の料理マイスター」、
オーナーは隣も営んでる「お菓子マイスター」、
手を広げればクオリティを下げ、ただ「やった」という事実しか残らない店の多い中で、
ここまで頑なに貫き維持してるのは素晴らしいことやと思います。
それはオーナーである栢沼さんの意識の高さの賜物でしょうけど、
それだけで表現し、維持し続けるのは難しいこと。
神田シェフという良きパートナーに恵まれ、神田シェフもまた良きパトロンに恵まれて。
うちもブーランジュリとパティスリーという異業種を営んでいますが、
この2店のような信頼関係と高いクオリティで繋がってられる店でありたいなぁ・・・と、
そう再認識させてもらえるお店でした。
▲
by monsieur-enfant
| 2009-10-13 00:47
| K.u.K
1