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2009年 10月 30日
「向きあう」ということ。
この日は神奈川まで飛びます。
天麩羅 「美かさ」

ピントがボケボケだったので逆にほんわりさせて、誤魔化してみました。
今宵の夢のような時間を象徴するようなメルヘンチックな仕上がりです(笑)
「こんなとこにあるのかぁ・・・」とキョロキョロしながら歩いた駅からの道。
ふいに現れる店構えは静かな佇まい。
中に入ると穏やかな中にも凛とした空気が漂います。
すでに視界にはカウンターの奥で仕込みをされてる大将の姿が映ります。
靴を脱いで、その姿を左に見ながら、右手の待ちあいへと通される。

ほんのワンクッションですが、この時間と空間は大事です。
入ってすぐ大将の待つカウンターに通されていたら、緊張して味もわかりません(笑)
しばしのこの時間で、「美かさ」さんの空気を感じ、その空気に馴染むよう努める次第。
・・・・・あかん、馴染めないうちに呼ばれてしもた(笑)

ド平日で時間が早かったのもあり、完全に大将独占状態。
最初はビールをいただきます。エビスやったかな?
海老頭 銀杏 むかご 百合根

パリパリ香ばしい海老の頭。百合根もほっくりと。
銀杏の香りが特筆!日本人だということを実感させられます・・・・。
海老

盛りで来られると、絶対海老は最後に食べる貧乏性の僕には、
のっけから海老を食べる心構えは出来ておらず(笑)、
ドギマギしながらいただきました・・・。
もいっちょ海老

わ!そういえば海老の頭は2つありましたね!
海老、海老、と来るなんて、これだけでテンション上がります。
細胞が「ぷくっ」と熱で膨らんだ瞬間を狙ったかのような火入れ。
ミキュイですがしっかり身はあたたかく、熱によって増した甘みと、
はちきれんばかりのプリプリ感、今度はしっかり堪能しました。
アスパラ

噛みしめると溢れるアスパラのジュ。
加熱され立ち上る香りを嗅ぎながら、小気味よい食感とともにいただきます。
強い素材は、しっかり目に揚げて香ばしさ加えます。
ここでたまらず燗をいただきます。

きす

溶けます・・・・。
ふわっとしたあとスッと溶けます。
なんだか途中から飲み物になってる気がするくらい溶けます。
開いた後、また折って揚げているので、
身の厚みを感じ・・・・たと思ったら、すぐ溶けるんです。
椎茸

肉厚というか、弾力が凄い。
椎茸は苦手なんですが、嫌な感じの全然しない椎茸。
中には海老のすり身が忍ばせてあり、その食感も合わせて美味です。
鱧

目の前で骨切りを拝ませていただいた後にいただく鱧。
またもやですが、ふわっとした後、スッと溶けます。いや、ホントに溶けるんです。
天麩羅独特の火入れ効果なのかなぁ・・・。他の調理法ではこうはいきませんからね。
酢橘を絞ってサッパリと。
蓮根

鱧から一転、しっかりした歯ごたえ。
香ばしさを加えるために少し長めに揚げています。
蓮根とか茄子とか、歳とってからしみじみ「旨いなぁ・・・」って思います。
煽烏賊

うわ!いわゆる俗世間の「イカの天ぷら」とは別物です!
揚げられてというより、温められた身がとろけるという感じ。
茗荷

く~~・・・・日本人の血が騒ぎ立ちます。
しゃりしゃりした食感からのぞくエッジの効いた独特の香りが、
口いっぱいに豊かに広がります。
お次はこれです。

はぜ

ぐはっ!!ホントに飲み物になっちゃった!(笑)
ふくよかさを感じたと思ったら、すぐ溶けてしまいます。
はぜを飲んだの初めてです。
尾びれのサクサクっとした軽さが良いアクセント。
穴子

「曲がって窪んでるところに天つゆを溜めて食べてください」とのこと。
穴子でつゆを掬って食べる・・・これがまた旨い!
しっかり目に揚げていて衣が香ばしく強い印象、でも嫌な「揚げ過ぎ臭」は全く無し!
無花果

加熱された果物、僕は生より好きかもです。
天茶

お出汁じゃなくて、お茶なんですね。
あ~、ほっこりします。酢橘をギュッと効かせていただきます。
なんと言いますか・・・・幸せですね~。
栗

お茶請けに栗の天麩羅。
ここまで天麩羅なんですね(笑)
コーヒーかなんかで炊いてるのかな?良い香りがフワッと立ち上ります。
緑茶で終焉です・・・・。

僕、あんまり・・・というか、ほとんど、
天麩羅を目当てにお店に行くことがなかったんです。
なんか、どれも同じで素材感を感じないというか・・・・。
年齢的にちょっと重たいというイメージもありました。
全て覆されました。
各素材が生きています。
魚もそれぞれちゃんと、それぞれの香りを放ち味わいを生み、主張してるんです。
お茶請けまで全て天麩羅でしたが、
決して単調に感じることはなく、そしてちょっと疲れ気味の35歳の胃袋も、
全くもたれることもなく、重さを感じることもなく、
最後まで美味しくいただきました。
大将も、余分なことは話しませんが決して寡黙でもなく、
ちょこちょこ相槌を打ってくれたりするので緊張も解けます。
「写真とか、困るんだよね~」くらい言われるのかと思いきや、
伺うと、快く了承いただきホッとしました。
まだまだ僕くらいの若造が大将と相対して座るにはおこがましいような、
天麩羅と真摯に向き合って食す空間であることを感じるカウンターでした。
惜しまれつつ閉店した大阪の「津むら」さん。
そこに相通ずるような、本物と向き合う緊張感と充足感がここにはありました。
通うものを成長させてくださるようなこの空間に、
今度はいつ来れるだろう・・・・。
天茶に添えられたお漬物が盛られていた小皿です。

燗の心地よい酔いも手伝って、後半は、こんな顔で座ってたような(笑)
良いお酒に良いお料理に良いお話に良い空間。そして過ごした良い時間。
身体も心もあったかく満たされた「美かさ」さんでの夜のことでした。
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by monsieur-enfant
| 2009-10-30 03:10
| 美かさ
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