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2010年 04月 06日
逃避行。
考える余裕も無いところに、考えざるを得ないことが舞い込み、
考えることを止め様にも、早送りのような毎日の中で、身も心も休まる場所も無い有様。
・・・・で、逃げ出したのが2月の頭ごろ。
ホントに旅に出ました(笑)
家・・・というか、大阪に居れず、足はおもむろに北へと向かいます。
雷鳥で3時間弱、この時間がかなり重要ですね。
本を読んだり、流れる景色をボーっと眺めたり・・・。
頭と心を現実から切り離してくれる距離と時間、そして温かい人との触れ合い。
最近、「金沢依存症」になってます。
金沢駅から20分もないかな?
ローカル線に乗り換えて「いい日旅立ち」なんかを口ずさみ、
また若干ブルーになりながら着いたのは「野々市駅」

さすがというか、現地の学生の薄着っぷりには驚かされますね。
ヒートテックでも着てるんかな?ってくらい、制服に何も羽織ってない子も多いんです。
金沢駅からちょっと離れただけですが、一気にローカル色が濃くなりますね。
待合い所も、何だか懐かしい昭和の空気。

で、タクシーで目的地に移動・・・なんですが、
無線から流れる言葉が全く聞き取れない(笑)
同じことばかり繰り返し喋る運転手さんに運ばれて、着いたのは普通の住宅地。

「すし処 めくみ」

ここは七尾湾で獲れた地魚を食べさせてくれる鮨屋さん。
ご夫婦共に介護福祉士出身という店内は、もちろんバリアフリー。

カウンター7席のみ。
まな板に並べられた数種の包丁の鋭利な刃先と、
ご主人の尖がった印象(お話されるとそうでもないですよ)が作る緊張感を、
女将さんの真逆の「普通感」が上手く中和してくれています。
駅でなかなかタクシーが来ず(多分、数台が行っては帰りの繰り返し)、
身体が冷え切ってしまったので、燗からいただきます。加賀鳶・・・だったかな?

ヒラメ

最初のインパクトはヒラメから。シャリの存在感も未経験。
赤烏賊

細かい仕事が施され、ネットリしていながらスーッと溶けていきます。
甘エビ

さっと昆布締めにしてたような。
そのままだとシャリと合わないんだそう。
しかも下にも甘エビ。2段重ね。至福の時間。
白子

表皮が破れると同時にトローッと流れ出る、これ、飲み物です(笑)
雲丹

旨い・・・・。しみじみ旨い。
桜鱒

これには驚いた。桜鱒なんて食べたことない!
で、この厚み。お隣さんも最後に追加されてました。
トロ

美しい・・・・。艶めかしいこの色つや。
小鯛・・・だったっけ?

こはだ

こんなに身のある魚だったっけ?って思うくらい肉厚。
赤西貝

何枚乗ってたっけ・・・3枚かな?
贅沢です。
蝦蛄

蝦蛄と言えば、天秤棒担いで魚売りをしてた祖母を思い出します・・・。
子供のころ、労力の割に身の少ない蝦蛄を食べるのが面倒くさかったですが、
今はこの土臭さと言いますか、独特の香りが懐かしくてたまりません・・・。
立派な蝦蛄でした。
蒸し鮑

7時間以上蒸して使うマダカアワビ。
これ、圧巻です。口の中がアワビのジュでいっぱいになる幸せ。
そのあとに柔らかく蒸されたアワビを噛み締める幸せ。
その幸せが終わらないようにと、
途中で噛むことを放棄したくなるくらい旨いアワビでした。
煮穴子

穴子がね、飲み物なんですよ。わかります?
溶けます・・・というより口の中で流れます。
残るのは口いっぱいに溢れる穴子の残像。原形はもはや腹の中・・・。
海苔汁

ホッとしますね~。日本人ですね~。
玉子焼き

最後は玉子焼き。
甘くはないのですが、ふっくらした食感は出来たてのカステラのよう。
市場ではなく漁港を回って最高の食材を毎朝仕入れにいくご主人。
一貫一貫、「能登島の・・・」「七尾で獲れた・・・」と愛情に溢れたその握りは、
「7割」という県外からのお客さんを引き寄せる。
20数種あるネタの3種ほど以外は全て地魚というネタの全てが、
シャリのベッドに安心して身を委ねてもたれ掛かってるような印象。
「鮨」という完成された創作物というより、
良い意味で生々しい「生き物の命」をいただいてることを実感させてくれます。
赤酢を合わせた存在感ある寿司飯は、少し高めの温度のせいか香りが素晴らしく、
一粒一粒を感じながらも決して邪魔しないのは、ほどけるような握りの柔らかさからか。
ありそうでなさそうな一風変わった店名は、
女将さんの名前の漢字一文字から取った「恵」を捻ったものらしいです。
握り同様、拘りの中の愛情を感じられる素敵な由来ですね。
最初は全然お客さんが来なかった・・・というのも肯ける立地ながら、
またいつか足を延ばして訪れたいと思わせてくれる引力がありました。
ただし、他に周りには何~にもありませんので悪しからず(笑)
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by monsieur-enfant
| 2010-04-06 02:25
| すし処 めくみ
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