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2010年 10月 18日
初観劇。「イル テアトリーノ」
何度か通ってる横浜中華街にあるリストランテ「SALONE2007」。
そこのシェフだった樋口シェフを全面に押し立てた新展開。
南青山 「イル テアトリーノ ダ サローネ」

見ての通り、わかりやすい場所ではないです。
さらに地下に下りていきますし。

開店後、しばらくしての訪問だったんですが、
今ではもう、かなりの評判だそうで。さすがですね。
店内は、何て言ったら良いんですかね、
最近珍しいゴージャス系。オーナーの平氏の色がガンガンに出てる印象。
ギラギラし過ぎず、品があるアバンギャルド。わかりやすく言えばエロカッコイイ感じ。
もちろんそこには意味や想いに妥協せず挑んだ結果の形があるわけです。
そこに樋口シェフや、同じくSALONEから送り込まれたサービスの西島君の存在が、
この店の雰囲気や色を形成しています。

個室一室を除いて、店内はカウンターのみ。
でも一人一人の間隔はとても贅沢に取ってます。

この店で使っているオリーブオイルをダイレクトに味わって欲しいと考えられた、
表面に思いっきりオリーブオイルを纏わせたパンでスタートです。

鮪のタルターラ

塩で水分を抜きつつ熟成時間を取った鮪は、
適度に身もしまり旨味も強く、
多少粘度の生まれた食感がトリュフオイルと合間ってエロエロです。
赤茄子の荒いピューレとの相性も抜群。
本家「SALONE2007」もそうですが、
一皿目で「仕事」を見せつけて世界に引きずりこむ手法。
能力ある方に強引にあしらわれる感じ、嫌いじゃないです(笑)
白身魚のブレザオラ

カリッと揚げられた柑橘の皮の香りと食感。
素材感と組み合わせをシンプルに楽しむカルパッチョ。
シャンパンでのおもてなしから始まった、いつもの「おまかせ」ですが、
こちらテアトリーノもビオのみのセレクト。
毎回「イタリアワイン」の枠をぶち壊されます。

蛸とチェーチ

上から見ると、こんな感じ。

コースが終わって「何が一番印象に残ってます?」と聞かれて答えたのが、この料理。
明石のタコに絡められてるのはヒヨコ豆のピュレ。
そこに絶妙な塩梅で忍ばされてるのが豚の背脂。
こうくると、もちろん冷製ではなく温製ですよ。
タコの尋常じゃない柔らかさ、温度だけじゃなく温かみのあるヒヨコ豆。
で、頭で理解出来ないまま表情は恍惚の表情を浮かべてた背脂の存在。
本家「SALONE2007」の「鮮魚のヴァプール」に肉薄する完成度。
いや、シンプルなぶんだけ驚きは大きかったかも・・・。
だいたい一料理一ワインで持ってきてもらいますが、

気づいたらもう飲み終わりかけてました・・・。
若干もうワールドに引き込まれかかってますね。
おもむろに枠が置かれ、

その上に運ばれてきたのはガラスの皿に置かれた、
金目鯛のインパナータ

寄ってみるとこんな感じ。

パン粉をまぶして低温でしっとり揚げられた金目鯛。
ナイフを入れると身はホロリ、脂はジュワ・・・。
下に敷いてるパプリカやセロリが中和する、全く無駄が存在しない一皿。
パン


さ、ラグジュアリー感溢れるお皿に導かれるのは・・・

ルンゲッティ ウニと空豆

そんなに両者、派手な食材ではないものの、合間れば素晴らしい相性だと気づかされる。
空豆がウニの儚い香りを押し上げて、ウニが空豆の素っ気ない味を補って、
絡めれば味も香りも濃厚で奥行きのあるソースとして生まれ変わる。
両者共通の「淡さ」は、ニンニクがしっかり輪郭を形成。
飲むように食べました(笑)
さ、ワインの様相も変わってまいりました。

カルチョーフィのトルテッリ スティンコのラグー

厨房の自動扉が開いた瞬間から解き放たれるヤギのチーズ臭!!
お皿もアツアツで、その熱でも香らせる意図。
その香りを陰で支えるトリュフ臭が名脇役!エロさに強さをプラス!
お皿としての骨格はラグーが形成。いやはや、バランス感覚に長けた逸品でした。

仔羊のストゥファート

主張の強い樋口シェフが「スペシャリテ」と主張する一品。
ただ、もちろんのことながらクオリティもさることながら、
この皿のもう一つ大事にしてるところは「想い」のような気がします。
実際、イメージは樋口シェフが修行してたシチリアの、
民家の暖炉の上でコトコトゆっくり煮込まれてるような優しい料理から。
さすがにこの為に暖炉は作れないので、
それに近い80℃の温度帯でゆっくりゆっくり調理します。
異なる部位の異なる食感も、想いと共に楽しめます。
更新されるメニューの中で、この料理は毎回趣を変え登場するようです。
その時々の季節、その時々の感性、
また違ったこの料理に出会える日を楽しみにしています。
ガルニの巨大ズッキーニも旨かったなぁ。
カンノーリのプロポスタ

中にはペコリーノだったかな?
その主張の弱いチーズに、キャラメルと栗のハチミツを合わせたソースが良い塩梅。
シャープでスタイリッシュなビジュアルは、ドルチェ専門のスタッフが担当。
どうりで「樋口臭」がしないわけだ(笑)
「ちゃんと、粉の味がするように」と、

一度タルトにしてから潰して混ぜられたファローネ。
少し熟成され一体感を得たその味は、さつまいものようにホッコリと優しい。
エスプレッソ

本家の「SALONE2007」もですが、ここも書くの大変です・・・。
写真の量も多いし、サラッと書ける内容じゃないし、
書く前に気持ちが負けて萎えてしまいますが、
「えいっ!」って書き始めるとやっぱりワクワク興奮しながら書いてます。
・・・と言っても本家は春先に行った一回分、あまりにしんどくて止めちゃいましたけど(笑)
だって、もう言うことないくらい毎回長々と書いてるんですもん。
決して満たされなかったわけじゃないので悪しからず。
次回訪問時にはちゃんと書きますので許してくださいね。
さて、ここ「イル テアトリーノ ダ サローネ」ですが、
「劇場」と称される本家に対し、名前の通り、目指すは「小劇場」。
それはもちろん規模やスケールを縮小したという意味合いではなく、
別の表現カテゴリーを模索した結果だと思います。
開店早々にお邪魔したので、その模索はまだ続いてる感は否めませんでしたが、
コンセプトは非常に明確。「小劇場」として成熟していく様を楽しみにまた伺います。
もう一つ大きく変わったのは、樋口シェフに料理の全権が任せられたこと。
以前の「SALONE2007」では、もう一人のシェフと考えたメニューを、
「お客さんに感動を届ける」というリストランテの使命のもと、
マネージャーの藤巻氏及び全スタッフで練り直し、決定していたと聞いてます。
それに対して今度は樋口シェフの色が全面に出ています。
その分、当然責任も重く、
横浜を知って来るお客さんに立ち向かわなきゃいけないプレッシャーもあったと思います。
でも何か、こっちはこっちで楽しそうでした。
トラディッショナルをベースにした驚きや裏切りの料理スタイルは、
「SALONE2007」のそれと同じといえば同じなんですが、
その軸足を自分のルーツである「シチリア」に突っ込んで作れる喜びと言いますか、
表現するものが「SALONE2007」から「自分自身」になった責任を楽しんでるようでした。
出るのが最後になったので、樋口シェフやソムリエの西嶋君、
支配人の平氏とも長々とお話させていただきました。
特に平氏とは今まで話す機会もなかったので、
かなり楽しい話を聞かせていただきました。
何店か展開されてるこのグループ自体のポテンシャルやバイタリティが落ちないのは、
この人の存在自体がかなり大きいということも再確認しました。
ま、トップが楽しそうに情熱燃やしてやってるとこは強いですよね。
あとは意識をどの高さで維持できるのか、
それが一番大事な「質」、つまりクオリティを決めることになりますからね。
やるだけでは意味がない。やるだけでは金持ちの道楽と同じです。
魂込めて、メッセージ込めて、精一杯のクオリティを提供していきたいものです。
それと、忘れてはいけないのが「出会い」ですよね。
出会いなくして、人材なくして、新しい世界の扉は開けません。
シュクレクール、モンテベロ、そして今後のホニャララとかホニャララ(笑)、
負けないような強く楽しく厳しく、・・・う~ん、何かいい感じの組織にしていかないと!!
それにはもっともっと提供する側の僕自身が、
見たり感じたり勉強したり感動したりしないといけません。
頑張らなくっちゃ!!
美味しい料理、楽しい空間、刺激も幸せもいただいた、南青山の「小劇場」でした。
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by monsieur-enfant
| 2010-10-18 01:07
| イル テアトリーノ
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