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2011年 07月 31日
熊本~平戸 ~後篇~
やっと辿り着いたホテルで明日の船の出発時刻を確認。
「佐世保から、平戸のどちらまで?」
「え・・・?平戸・・・って、一つじゃないんですか?」
「何カ所か港があるんです。では行き先のご住所はわかりますか?」
「・・・・わかりません」
どうやって行こうと思っててん!!って話ですよね(笑)
住所知らないのは、その時初めて知りました。
行き先だけはさすがに知ってたので告げると、「調べておきます」と。
しばらくして部屋にフロントから電話が。
「船は出てますが、そこからだと着いてからが相当遠いかと・・・」
ちなみに今回、地図もほとんど見てきてないので、
平戸って吹田みたいなもんかと思ってたんです。
だから平戸に着きさえすりゃ、ま、どっからでも距離は知れてるやろ・・・・と。
で、バスやら電車やらいろいろ相談して考えた末、
一番効率的なのは佐世保からレンタカーだという結論に。
なので早くも佐世保に宿をとった意味はここで消滅。
加山雄三も杉山清貴もここで消滅。
ただ、レンタカーって、レンタル料が安いと思ってたら、
ガソリン料金は別で、結構な値段したりするじゃないですか。
だからねぇ・・・なんかしっくり来なかったんですよねぇ・・・・。
頼みの「ナビウォーク」からの情報だと、
電車で1時間半かけて平戸に向かい、
そっから3時間かけて歩けというとんでもない指示を出してくる。
レンタカーは8時から。
でも電車を使えば8時には既に平戸に着いてるし、
何より道中も読書や仮眠など有意義に使える。
なら平戸まで行って、平戸からレンタカー借りればいいやん。
こんなとこまで来て運転だけの2時間なんて御免だ!!と言うわけで、
「駅からバスがあるにはあると思いますが・・・」とのフロントの言葉を頼りに、
朝、6時半にホテルを出発。
この時点で僕の思う「駅」と既に相当な温度差があったことは、
翌朝すぐに思い知らされるわけですが・・・。
聞いたことない「松浦鉄道」というローカル線に乗るわけですが、
駅も駅でインパクト大。
まず、大きなアーケードの商店街の横道に入る。
10メートル無いくらいで横みたら、いきなり駅。

「近っ!商店街から近っ!」
しかも、なんだこの作りは・・・。仮設か?
階段を上がり切符を買おうとしたら、

「なんで!?」
有人でもないのに9時からしか買えない理由は何?
そして、この路線、実は「日本一」の称号も持ってるんです。

隣駅の中佐世保駅まで200mしかなく、「日本一駅間距離の短い区間」だそう。

早かった。確かに早かった。トラブルかと思うくらい発車してすぐ停まった。
さすが日本一。
そんな2両編成の電車に揺られること1時間半くらい。
着いたのは、またしても「日本一」。

今度は「日本最西端の駅」。
ここらへんでやっと、「平戸って、相当端っこなんじゃ・・・」と悟る。

そして駅に着いた瞬間、レンタカーを借りれる場所を聞く行為そのものを放棄しました。
あるわけない。こんなとこにレンタカーなんてあるわけないですもん・・・。
ただ、タクシーは停まってました。乗ろうかと思ったその時、
昨日のフロントからの電話が頭をよぎる。
「駅からタクシーだとすごい料金とられますよ。佐世保からレンタカーで・・・」
うん、あかんあかん。まだ時間に余裕もあるわけやし、そんな贅沢したらあかん。
「バスは出てますか?」と近くにいたオバチャンに聞いたところ、
「駅からはもう出ちゃったけど10分くらい歩けばバスは走ってる」、とのこと。
「下の方に歩けば」という曖昧さに一抹の不安を抱えながらも歩きはじめる。
10分歩けどもバスらしきものは通ってない。
嫌な予感がし始めた中、GSがあったので聞いてみる。
「あの、すいません。バスターミナルがあると聞いたんですが・・・」
「あ?バスターミナルなんてないとよ。あるなら対岸かばってん」
対岸・・・?と視界を上げると、そこには恐ろしい光景が。

「あかんあかん!ガチの大橋やん!」
いや、マジで、そんじょそこらの橋じゃないっすよ。
「なんとか大橋」とか言われるクラスの、壮大な大橋ですよ!
っていうか、ここで初めて平戸が離島だということを知りました。
電車とかバスが普通に走ってると思ってた自分が甘かった・・・。
あ~~~、なんというか、
近づくにつれて全貌が明らかになっていくわけです。
橋のたもとが見えてきました。

っていうか、ここまででも結構歩いてるんですよ。
でも「対岸にバスターミナルがある」ってことは、あとはこの橋を渡ればいいってこと。
入口まで頑張ってきたんですから、頑張って渡ります。

こわいこわいこわい!
何が怖いって風が怖い!
風、半端ないです!
そして下は下でやっぱり怖い!

この時、多分まだ朝8時半くらい。
8時半でこのテンションは、37歳には堪えます。
渡りきりかかると風も緩まり、バスターミナルも近いということもあって、
ちょっと海を眺める余裕もでてきます。

「きれ~~~」
噂通りの綺麗な海。
もう少しゆっくり眺めてたいけど、バスが行っちゃったら困るからね。
半ば小走りにバスターミナルへ向かう。
正確には、バスターミナルらしきものへ向かう・・・ですが。
入って行ったのは観光バスでした。
大きなスペースは、この橋を眺める観光スポット。
「小走りのテンションと体力を返せ・・・」と思いながらも、
さすがに「対岸」と言われたとはいえ、
渡ってすぐってわけにはいかないんじゃないかと自分を説得。
「そのカーブ曲がれば「対岸のバスターミナル」や」・・・と、
幾つのカーブを曲がり歩いたかわかりません。
この時、常に頭に描いてたのは、「いつヒッチハイクするか」でした。
いや、マジで。もう覚悟決めてました。あとはタイミングのみでした。
ただ、金沢で捨て身のヒッチハイクした時と決定的に違うのは、
目的地があとどのくらいで、自分が今どの辺にいるのかもわかってないところ。
躊躇してると、ちょっと視界が開けてきました。

なんとなく「平戸らしい」ような、海沿いの集落。
またしばらく歩くと、歩き始めた時に薄っすら見えたものの、
橋の画像のず~~と右手にあったためノーマークだったお城に近づく。

「街だ・・・」

やっと街らしき場所に着きました。
途中で訊いたおっちゃんによると、バスターミナルはこの辺らしい。
あのGSのおっちゃん・・・、「対岸」には違いないけど、
これ、徒歩で行く人間に勧める距離ちゃうやろ・・・・。
とりあえず、時間と体力は相当ロスしたわけで。
これ以上のロスは相手方に迷惑をかけてしまうと思い、
停まってたバスの運転手さんに躊躇なく聞いたのでした。
「すいません!この辺にバスターミナルがあるって聞いたんですけど!」
ここでした。
普通のバス停にバスが停まってるだけと思ってた場所が、
まさかの「バスターミナル」だったわけです。
そこで僕は確信しました。「このままでは着かない・・・」と。
念の為に確認した時刻表は、一時間に一本。
しかも目的地に行くには乗り継ぎをしなきゃいけないので、
そこでまた何時間かかるかわからない。
「こうなったら・・・」と取り出したリーサルウエポン「ナビウォーク」が示すのは、
相変わらず「2時間歩け」・・・おお!1時間減ってる!(笑)
そう、すでに小一時間歩いてきたからね・・・。
僕は「たびら平戸駅」で、あんなに躊躇したタクシーに何の躊躇も無く乗り込みました。
「これ逃したらもうタクシーとは巡り合わないんじゃないか」と、
必死で停めたタクシーに駆け寄る姿は、
若干スローモーション処理されてたくらい爽やかだったと思います。
おそらく平戸一颯爽と乗り込んだ自信はありますし、
上半期、最高の笑顔で言った言葉は、
「すいません!根獅子まで!」でした。
道中、外を眺めてると、バスじゃ無理でしたね。
ほぼ擦れ違わなかったですもん。
そして僕を乗せたタクシーは、
「次男坊が9月に結納でしてね」
「はぁ・・・」
という弾まない会話のまま目的地に向かったのでありました。
根獅子 「塩炊き屋」

やっと着いた!!
長かった!!
時間無いなか週末関係なく書いていたのは、ここを紹介したかったから!
道程も長かったけど、相変わらず前振りも長い!(笑)
いや今回ね、ここだけ先にサクサクッと紹介しようかともと思ったんですが、
どうしても流れの中じゃないと頭の整理が出来なくてですね、
結局最初の熊本に着くとこから書くことになったわけです。
で、やっとこさ、目的地に着いたというわけなんです。
なので、ここからが本番(笑)
見て下さい、このキレイな海。
この岸辺でご夫婦で塩を炊いてるのが今井さんなんです。

ここがその塩炊き小屋。
海だけでなく緑にも囲まれてる環境です。

「こんにちわ~」と声をかけると、
ホントに優しそうな顔をして出てきてくださいました。

この日はそれほど酷い暑さでもなく、
遮るもののない目の前の海からの潮風はとても心地よく、

立ち話に度々横やりをいれてくるカニさんを眺めながら、
緩やかな時間を過ごさせていただきました。

そもそも、「塩炊き屋」さんを知ったのは、
以前受けた取材のライターさんが、
「こんなところに取材に行って来たんです」と、
記事と塩を見せてくださったのがきっかけでした。
僕らの作るpainは、小麦粉と塩と水と酵母だけで作るシンプルなもの。
なので塩は良いものを使えるのに越したことはないんです。
ただ、シンプルなだけに結構ダイレクトに出てしまうことも多く、
あまり個性的過ぎても使えないし、
特徴がないのも、高いお金払って使うには費用対効果は低くなってしまいますよね。
そんな中、グッときました。
静かな始まりから旨味を増していく流れ、ミネラル分の長い余韻。
「これはもしかして」と試してみると、
やっぱり、バゲットとの相性は良かったです。
食べ比べると、全然違います。
ただ、うちの看板商品に使うとなると、
「今回は塩が手に入らなかった」みたいなことは許されません。
お二人でやってて、大量生産が出来ないのも重々承知のうえで、
どれくらいなら安定した供給が可能なのかの問い合わせをさせていただきました。
返答は、秋口くらいからなら何とかなりそうとのこと。
なぜなら今年の九州は梅雨が長く、外で行う作業が全く出来なかったのと、
東北で同じようにやってはるお仲間さんの塩が、
風評被害で全く買ってもらえなくなってしまい、
そのお客さんが塩炊き屋さんや他のお店に流れてきて、
在庫がほとんどなくなってしまったからだそうです。
それでも良ければ・・・と快諾していただきました。
そうなると、居ても立ってもいられなくなるんですよね。
僕自身、あんまりゆっくりしてられない状況に置かれてることもありまして、
韓国から帰って来た数日後、今度は九州に飛んだわけです。
ま、あんまり文章だけだと読み疲れるでしょうから、写真も交えていきましょうか。
小屋の一番端にある設備、これなんだと思いますか?

濾過する目的じゃないんです。
ポンプで汲み上げた海水を、ここで約1週間かけて7倍の濃度に濃縮するんです。
つまり、「かんすい」を作る設備なんです。
上からチロチロと流し、下まで流れた海水をまた上からチロチロと流すわけです。

海から汲み上げるのも、もちろんいつでも良いわけじゃなく、
海が凪いだ時を見計らってポンプで汲み上げるんだそう。
満月の時、大きく潮が引き、また満ちるタイミングが一番良いのだそう。
雨の日もダメ、風が強すぎてもダメ。
海の状態を見計らって、良い状態を見極める。
言葉で言えば簡単ですが、「そんな簡単なことじゃないよ」と、
目の前の海が笑って話しかけてきてるようでした。
小屋の中では常に「かんすい」が炊かれています。

この鉄製の塩炊き釜、火を止めるとすぐに錆びてしまうので、
熱を入れ続け、鉄を鍛えながら塩を炊く必要があるんだとか。
炊いては足し、炊いては足し、
もう足せないくらいまで足して煮詰める最中に、
鉄釜の鉄分は塩に移り、ここの塩の味の特徴の一つにもなってるようです。
もっと暑いと思ってた室内ですが、
この日が涼しかったというのもありますが、案外そうでもないので聞いてみると、
「夏は日中の仕事はあまりに暑過ぎて出来ないんで、
昼間はチョロチョロ火を入れて、夜に火力を上げて仕事するようにしてるんです」と。
そうなると話は別で、「これで・・・」と。
そう、十分に暑いのは暑いんです。

塩炊き釜は、写真、向かって左側が一段深くなっていて、
そこに結晶化した塩を溜めていきます。
溜まっていく塩は一番塩、二番塩・・・と重なっていくので、
大きく混ぜ返し、均一になるよう手を加えます。
炊き始めは表面にアクが浮かびますが、
その後にはマグネシウムなどのミネラル分が表面に凝固してきます。
俗に「ミネラル分が多い」というのはイコール「美味しい」みたいになってますが、
それを全部塩に入れ込んでも苦くなってしまうんだそう。
特に硫黄などは、日本古来からの発酵食品(お漬物とかね)に対して、
発酵を阻害することもあるらしく、意識して取り除いてるんだそう。
一週間、薪をくべ続け炊きあがった塩を、
今度はひしゃくで樽に移します。

ここでも約一週間かけて、塩自体が一番居心地の良い状態に落ち着くのを待ちます。
写真は五日目だったかな?
にがりが表面に浮いてきて、塩はだいぶ落ち着いて来た状態。
この「にがり」も、塩が茶色になるくらい入れ込む職人さんもいれば、
あまり入れないで取ってしまう職人もいるとのこと。
「あ・・・、そっか。やっぱ味見するんだ」
僕らは塩を味を決める調味料として使います。
だからその塩が味見されて作られてることを何か不思議に思えてしまうんですが、
そりゃそうですよね。それをしなければ、どこで「ヨシッ!」って思うんだって話ですよね。
そして最後にこの「いだし場」と呼ばれるところに移され、
ここでまた一週間程かけて、ゆっくり塩とにがりが分けられていくんです。

右に溜まってるのは、もう完成間近の塩。
左側に向かって緩やかな傾斜になっていて、
そこに向かってにがりがゆっくり染み出る仕組み。

ちなみに、この小屋は家の廃材で作られ、
海水を循環させるモーターは、風力や太陽光の自家発電でまかなっています。
そんな塩炊き小屋で、袋詰めから発送まで全部行われているんです。
今井さんはちょっと照れながらこう話します。
「こうして説明してると、なんだかウンチク垂れてるように聞こえますが(笑)、
僕らにとって、これは『塩』でしかないんです。
なんか特別なものを作ってるように思われがちですが、
単に『塩』を作る為の作業をしてるだけなんです。
昔の人はみんなこうして作ってましたし、特別なやり方でも何でもないんですよ」
サラリと話すこの言葉、うん、確かに仕事自体は海水から塩を作るにあたって、
特別変わった工程はないのかも知れない。
でも、やはり今井さんの凄さはその背景にあるんです。
こんな誰でも出来るようなことじゃないことをやっときながら、
「塩作ってるだけ」と言えてしまう背景があるんです。
元々はネパールで感銘を受けた「自給自足」暮らし。
日本でもそれを実現するべく農業と林業を体験。
その林業を続ける決意をして高知に渡った時に、塩づくりに出会ったんだそう。
そして自分の理念に近い職人さんのもとで働くために天草に。
そこで修業された後、独立する場所として、ここ平戸を選んだんです。
今井さんは、この仕事について、
「自分たちが海岸沿いで塩を作るということは、
海が健康であるかどうかが大事になってきます。
つまりこういう仕事を選ぶ人が増えてきて、
昔のように海岸線に塩炊き小屋が増えて行けば、
自然保護にも繋がるし、『海』というものへの意識も変わるはずなんです。」
と話す。

こうして目の前の浜から海水を汲んでる小屋があるのに、
ゴミ、捨てれませんよね?海、汚せませんよね?
じゃあ皆さん、何故昔は海岸沿いに沢山あった塩炊き小屋が、
今はほとんど無くなってるんだと思いますか?
海外に行けばわかりますよ。
化学反応で塩の主成分である塩化ナトリウムを生み出し、
それを「塩」として販売してるのは日本くらいじゃないですか?
だから「塩」は自然の恵みという概念が生まれないんですよ。
もしくは当たり前のように日本の「塩」が食卓にありすぎて、
それが塩化ナトリウムだという事実に気付いてない方も、
まだまだ多いんじゃないですか?
そういう単純なことに気付いてもらうためにも、
自分で塩を作る場所の条件として、
ある程度、人が住んでるところでやるのが望ましかったんだそう。
自分がやってることが誰にも知られないとこでやるよりも、
そこにメッセージがあるのなら、人との接触があるところでやらないと、
メッセージの発信には成り得ませんからね。
場所の選定の為に、幾つかの条件を携えて、
日本中の海岸線をバイクで走ったんだそう。
そう、今井さんは長野県松本出身なんで、根獅子とは何の所縁もないんです。
ただ、より良い環境を探して走り回ったものの、
塩が沈滞しないように流れのある外海で、
自然の浄化装置である砂浜があり、
傾斜のある山が近くにあれば山のミネラルも流れ込むのでベターとか、
勿論、生活排水の無いところなど、
幾つかの条件をほぼ満たしてくれる場所は、
国立公園に指定されてしまってることが多いんですって。
そんなこんなを経て、一度宮崎で決めかけたそうなんです。
で、何故宮崎を止めたかと聞くと、
「太平洋は自分にはしんどかったんです」って。
太平洋は流れも速く、良い塩が取れるんだそう。
でも実際(太平洋と)働いてみて、すごい疲れたんだそう。
「これじゃ、自分が持たない」と思って宮崎を止めたんですって。
これ、多分、海と働いてる人じゃないとわかんない感覚なんでしょうね。
でも、日本海には日本海の、太平洋には太平洋の、瀬戸内のは瀬戸内の、
それぞれ異なった海の表情があるんですって。
「太平洋はしんどかった」という独特の言い回しが、
なんか海を相手に仕事してる人間の難しさや雄大さを表してるようで、
僕には一番印象に残ったフレーズとなりました。
そして今、彼は東シナ海と対峙し、東シナ海と共に仕事をしています。

なんかね、圧倒されますよね・・・。
だって、同じ「もの作り」をしてるのに、材料がどこにもないんですもん。
僕らなら厨房にたくさんの粉袋があったり、
香辛料があったり調味料があったり食材があったりするわけじゃないですか。
それが無いんですよ。
いや、あるっちゃあるんですけどね。
話をしてる最中、絶えず耳に入る波の音。
外に目を向ければ否応なしに視界に飛び込んでくる一面の海・・・そう、海。
原材料、海なんです。
目の前でザバザバ波打ってる東シナ海が原材料なんです。
海って言っても、海の中の魚とかじゃないですからね。
「海」を原材料にしちゃうんですから・・・・。
多分、この何とも言えない違和感と言うか凄みというかは、
現場に行かなきゃ絶対感じれなかったことやと思います。
そして何より、今井さんに逢って話せたこと、
またシュクレのパンに力強い背景を加えていただけそうです。
実際、うちのバゲットに使われるようになるのは秋口から。
海は季節によって表情も変われば成分も変わるとのこと。
皆さんに食べてもらえる最初の塩は、製造に一ヶ月かかることを考えると、
まだまだ真夏の塩を感じてもらえるのではないでしょうか。
その日を是非楽しみにしててください。
・・・・と、その前に、お知らせ通り、
本日10時~皆さんに配らせていただくパンに使わせていただきます。
あ~~~、この一言の為だけにどれくらいの時間を要したか(笑)
でもね、
わざわざクソ暑いなか、プティパン一個の為に足を運んでくださる皆さんに、
何か付加価値を付けれないかと考えたのが、
「今は在庫がない」と言われたこの塩を直接取りに行くこと。
行けば出来たてのものでも少し分けてもらえるかと思ったんですが、
案外数個は普通に売られてたのは拍子抜けでした(笑)
でも、それ以上に得れたものは大きかったですし、
こうして皆さんに背景を知っていただけたのは良かったかなぁと思います。
あ、ちなみにですが、
帰りは平戸から長崎空港に向かう予定でしたが、
結局、一度佐世保に戻った方が良いとのこと。
ならば・・・・

「席に着くなりちゃんぽん」達成!!(笑)
▲
by monsieur-enfant
| 2011-07-31 02:18
| 熊本~平戸(塩炊き屋)
2011年 07月 30日
熊本~平戸 ~前編~
せっかくなのでどうしてもアップしておきたい記事がありまして。
今回の目的地は九州は平戸。
先に熊本に向かってから平戸に向かい、長崎から帰ってくる旅程です。
やばいやばい・・・とは思っていたんですが、
何度乗っても「電車感覚」の抜けない僕・・・。
8時前の飛行機に乗り遅れることから旅は始まります(笑)
次の便まで4時間近く空くので一旦帰ろうとすると、
「帰ってきたらまた遅れるから、せめて千里中央で留まっててください」
と、店からの愛のメール(笑) 「ヤマダ電機で時間潰せ」とも・・・。
さすがに次は乗り遅れるわけにはいかないので早めに出発。
今度は上手に乗れました(笑)

まず降り立ったのは熊本空港。
親父が九州は諫早の出身なのですが、なかなか九州に来る機会もなく。
もし九州に行く機会があったら是非行ってみたいと思ってたのは、
うちのバゲットを支えてくれてる熊本の製粉会社の工場でした。

空港からバスで市内に向かい、タクシーで目的地に。
ここはフランスから原麦を輸入して、自社の石臼にて製粉してくれてるんです。
他にもフランス産の小麦粉は現在流通してるんですが、
どれも「悪くない」には至っても、「良い!」には届かないんですよ。
それは多分、僕が初めてパリで粉袋を開けた時の衝撃を忘れられないから。
正直、石臼で挽いたこちらのフランス産小麦は「過剰」です。
向こうで使っていたものは石臼挽きではなかったので、
比べると多分「過剰なフランス」なんですね。
だから100%では使いません。コストの面もありますけど。
でも、やはり他のフランス産小麦粉は船旅で疲れてしまってるんです。
悪くはないですが袋を開けた時のインパクトは無いんですよね。
それに同じく原麦で輸入しても、通常の生産ラインで挽いてしまうと、
日本の製粉技術はキレイすぎるんです。
細かくサラサラし、粒子が均一。よく言えば丁寧。ただ、静かで大人しい。
フランスは悪く言えば雑。ただ、粒子が不均一で粗い。
その分、表情があり、温もりがある。
表面積も広くなり、吸水性も高く、香りの膨らみも違います。
だから石臼挽きで挽いてくれてる、こちらの粉をメインに使ってます。
今は他にも2種、用途別にフランス産小麦粉を使ってますが、
無いものから引き出すには、やはり限界があります。
そして、知ってしまってる以上、求めず目を瞑るわけにはいきません。
そこに応えてくれたのが、ここの小麦粉だったんです。
8年目にして、やっと実現した工場訪問。
行かなきゃわからない現場の話や実際の生産工程、
なぜ地方の製粉会社が大きなリスクを背負ってまで生産へ踏み切ったのか、
作り手の僕らがどんな想いでその粉を使ってるかなど、
短い時間でしたが有意義な時間を過ごさせていただきました。
長くなるので、ここらで切りますね。
で、そこからJR熊本駅へ。

話題の九州新幹線で新鳥栖駅まで行き、

そこから特急で佐世保まで。

なぜ佐世保かというと、平戸まで船が出てるんです。
今回、観光などできないスケジュールの中、
「船に乗れる」というのが大きなモチベーションだったんです。
気分は加山雄三です。杉山清貴です。
とまぁ、佐世保に着いたんですが、チェックイン前に食事することに。
今回、ほぼ何のリサーチもせず来た九州ですが、
佐世保駅周辺で美味しい「ちゃんぽん」が食べれるという情報だけは確保。
「確か、駅から近かったと思うんやけど・・・」と悩む理由は、
東西南北がわからないので一歩目をどっちに歩けばいいのかわからないんです(笑)
そこで、おそらく近距離であるにも関わらず「ナビウォーク」を発動。
自分の方向音痴にはほとほと呆れてるので、念には念を、です。
「あれ・・・?」と最初に思ったのは、完全に駅から離れはじめた最初の10メートル。
でも、「小さなお店」とか「ガード下」とかいう断片的な情報が勝手なイメージを作り出し、
「やっぱ、こういうとこは隠れたとこにあるんや・・・」という高揚感を生み出し、
肝心な「駅から50メートルくらい」という情報を掻き消していくのであった・・・。
そんな僕の気持ちを知らず、ナビウォークは破滅へと躊躇なく僕を誘う。
「マジで・・・?」

そう思う階段も、「長崎は坂が多い」という、これまた断片的な情報が、
「佐世保もやっぱ坂が多いんやなぁ」と、
むしろ佐世保感を味あわせてくれるロケーションに感謝するという感覚の中、
躊躇なく歩を進めるのであった。
階段の更に上にはまた階段、

そして少し上ればまた階段、

この辺でさすがに「こんなとこに繁盛店があってたまるか・・・」という憎悪が湧いてくる。

上るだけ上ったので、今度は下り。

「目的地に近付きました。案内を終了します」
そういって打ち切られたナビの到着点はここ。

泣きながら夕暮れの坂道を駆け下りました。
そこから「ナビウォーク」は使わず、「すいません・・・駅どこですか?」と、
完全に自分がどこにいるのかもわからなくなった状態で道行く人に尋ねる。
佐世保駅の裏側にはすぐ海があるんです。
僕は目的だった夕飯を忘れて、
気が付けば一目散に駅の裏の波止場に向かっていました。

佐世保の夕陽は優しかったなぁ・・・。
みんな、元気でいるかなぁ・・・。
波止場で傷を癒した旅人は、
長く伸びるオレンジ色の西日に背中を押されるように佐世保駅に戻った。
「ちっくしょ~、また振り出しだ」と、おどけて見せたその瞬間、
ナビに促され前に歩き始めたとこと丁度同じくらいの場所から右を見ると、
そう、右を見ただけで・・・「ちゃんぽん」の文字が悪戯に見え隠れ。
「いや・・・まさか・・・、だってさっきはあんなに坂を上り下り・・・」
そのまさかだった。
佐世保 「香蘭」

「マジかよ~!!!」
洩れた、確実に心の声は身体の枠を超えて外部に漏れた。
それぐらい渾身の「マジかよ~!!!」だった。
ちょっと自暴自棄気味な半笑いで入店する関西人に、
容赦なく佐世保の洗礼が浴びせられる。
「なにしましょ!?」
早や!今、入って来たばっかりやし!いっぱい迷ったけど入ってきたのは今やし!
ま、基本、「皿うどん」と「ちゃんぽん」しかないからわかるんやけどね。
でも、こっちは佐世保駅から右に50メートルで着くにも関わらず、
あえて30分以上も坂を上り下りした挙句、
また佐世保駅に戻ってきてから50メートル歩き直したわけ。
「駅から50メートル」を、こんな無駄な楽しみ方するヤツいますか?
そこんとこ汲んで欲しかったなぁ・・・と思うわけ。
で、雰囲気で「ビールください」

知らない街に迷ってきた旅人が辿り着いた一件の小汚い(失礼・・・)料理屋。
そこで一人、瓶ビールをグラスに注ぐ・・・って雰囲気だけでビール注文。
となると餃子もいるわけで。ただ、誤算は、餃子が完食間際に出てきたこと。
なので先に「皿うどん」。

あ・・・、マジ「うどん」やと思ってた。
そういやそうやね・・・、こういうのやね「皿うどん」って。
「う・・・旨い・・・。おっちゃん、この皿うどん、めっちゃ旨いわ!おおきに!」
と、関西からの旅人が涙ながらに言ったかどうかは定かではないが、
美味しかったのは本当だったらしい。
具はたっぷりで牡蠣まで入ってる。
カリカリの部分とフニャンとなってる部分の食感のコントラスト。
終盤、カリカリがもう無いと思った頃にカリカリがあると、
「やるな・・・」と思ってしまうという「ちゃんぽんあるある」
餡は結構固めで、熱々の時は良いのですが冷めてくると固まってきます。
そこで「酢」を回しかけます。そうすると味に変化も出るし、餡もトロミが戻ります。
皿うどんに酢、これ、常識の「ちゃんぽんあるある」です。
え?「ちゃんぽんあるある推し」、いらないですか?

ってなタイミングで餃子登場。
もう若干お腹いっぱいな感じ。
しかも一人だと瓶ビール一杯も厳しい感じ。
後から来るお客さんの注文は圧倒的に「ちゃんぽん」が多い。
やっぱり市民権はちゃんぽんに軍配か。
でも皿うどんも美味しかったですよ。
ちゃんぽんも食べたかったですが、
明日は朝から平戸に向かい、
平戸からそのまま長崎空港に向かうので寄れません。
またいつか、いつの日か佐世保に来る日が来たら、
その際には僕も「席に着くなりちゃんぽん」、させていただきますね。
この「席に着くなりちゃんぽん」も、「ちゃんぽんあるある」です。
ま、「ちゃんぽんあるある」って言いたいだけなんですけどね。
駅の地図で初めて確認したホテルの場所が、
駅前にあるもんだと思ってたらびっくりするくらい遠かったので、
佐世保名物「31アイス」を食べながら、ゆっくりホテルに向かうのでした・・・が、

この後、マジでアイス20個くらい食べなあかんくらいホテルも迷うのでした・・・。
熊本~平戸(前編) 完
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by monsieur-enfant
| 2011-07-30 04:00
| 熊本~平戸(塩炊き屋)
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